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【藤原祥弘のALL TIME BEST】Chacoは実用品として使え。「Z2のちょっと大きめ」がいいぞ

(2019.09.19)

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海、山、川、原野……。
それぞれのフィールドを遊ぶ達人たちに
長年連れ添った相棒を聞く新連載 【ALL TIME BEST】
第一弾は、水辺で活動するアウトドアライター
藤原祥弘さんのお気に入りです!

 もう15年以上ChacoのZ2を履き続けている。どれほどの頻度で履いているかというと、5月から10月までの足元は9割がたChacoである。仕事も、買い物も、旅もこれ一足ですませる私の足の甲は、15年間ずっとZ型に日焼けしている。

 開放感、機動力、履き心地、見た目……あらゆる点でZ2はすばらしい。シューズ並みの走破性を持ちながら湿気がこもることがなく、何より躊躇せずにそのまま水に入れる。ゲリラ豪雨に降られても、道端の川に獲物を見つけてもためらいなく水の中に入っていける。水に入る機会の多い人にとって、これ以上便利な道具もない。

 今となっては、Chacoはスポーツサンダルのなかでもとくにお洒落なアイテムとして認知されているが、上陸当初はカヤックショップの片隅で売られる実用サンダルだった。

 いち早くその価値を認めたのはリバーガイドたちだった。いちど締め上げれば簡単には緩まないウェビングに加え、濡れた岩やボートの上でも滑らないグリップ力が高く評価された。

 当時のZ2には、ファイブテンが開発した「アクアステルス」というソールを搭載したモデルがあり、こいつがそりゃもう抜群に滑らなかった。どれくらい滑らないかというと、濡れた岩場を躊躇せずに全力疾走できるほど滑らなかった。このモデルのグリップ力は今も語り草になっている。

 リバーガイドだった私はこのグリップ力に感激してユーザーになったが、当時のChacoには重大な問題があった。着用すると数時間もしないうちに足裏が爆臭になったのである。くさいのは私が小汚い青年だったからではない。どんな美女が履いてもこのにおいは抑えられなかった。

 登場から数シーズンで爆臭フットベッドは臭わない素材へと変更され、それとともにChacoは大人気を博した。それ以降のChacoの躍進はみなさん知っての通りである。

 今ではすっかり、短パンちょび髭メガネあんちゃんたちのお洒落アイテムとなったが、Chacoは実用してこそ価値がある。全国に0.02万人くらいはいるであろう実用派に向けて、どんなにZ2が素晴らしいか力説したい(なお、おじさんの足元写真が続くので、気になる人は写真が出てくるたびに目の解像度を下げよう!)。

もう誰がなんてったってZ2!
 Chacoにもモデルは数あれど、実用品として買うならZ2一択。親指、甲、かかとがホールドされるZ2は、ほかのモデルと比べて足との一体感が段違いだ。ほぼ同じ形で、足の親指をホールドしないZ1というモデルもあるが、これでは足先がパカパカしてしまううえ、傾斜のきつい法面を横切るような場面では足がフットベッドの上で下方向へとズルッと滑ってしまう。悪いことは言わない。ため池や防波堤の傾斜面をよく歩く人はZ2を買え。写真は2シーズンほど前のZ2。Z2は種子骨(親指の下の出っ張ってる骨)の下側からスタートしたウェビングが親指の根元をくるりと巻いてから甲へと伸びていく。Z1ではこの親指くるりんがないので足先の遊びが大きい。

野原を歩くならちょっと大きめを履け
「サンダルはジャストサイズがおしゃれ」。多くの人がそう思っているだろう。しかし、水虫菌のつけ入る隙もないほどサンダルを履き続けている私は断言する。「サンダルはワンサイズ大きめを履け」。

 野山をサンダルで歩いたとき、問題となるのは刈り株だ。地面から数cm上で切られたススキなどの茎は、ガラス質の繊維も相まって鋭い。ビーサンで昆虫採集に勤しんだ元少年なら、ソールからはみ出した足肉を刈り株でざっくり切ったことがあるだろう。

 このブービートラップを避けるコツが、ワンサイズ大きめを履くことである。ジャストサイズではフットベッドから外に出たハミ肉を切ることがあるが、ワンサイズ大きければ足がフットベッドに収まり、肉を切りづらい。

 悪いことは言わない。刈り株で足を切りたくなければ、Z2のちょっと大きめを履け。ハミ肉、危うし! 足の幅が広い私は、ワンサイズ大きめを履いてもサイドの肉がハミ出し寸前。ジャストサイズではフットベッドから溢れ出たハミ肉を刈り株で切ってしまう。足の幅が広い人は前後だけでなく左右の余裕もチェックしよう。

浜を歩くならちょっと大きめを履け
 Akimamaの読者ともなれば、釣りや投網や恋人とのキャッキャウフフやらで、砂浜を数km歩くことが頻繁にあるだろう。こんなシーンでも、ちょっと大き目のソールが役に立つ。ソールが大きいと砂への沈み込みが抑えられ、断然歩きやすい。

 足裏の面積が小さいと、全体重が小さなソール面に集中して踏み込むたびに砂へと足がめり込む。その反対に、ソールの面積が大きいと荷重が分散されるので沈みづらい。大きいソールで歩くのは、砂の上に板を敷いてその上を歩くようなものだ。歩くのが数kmともなれば、ソールの大きさで疲労度はまるで違ってくる。

 悪いことは言わない。恋人と全力でキャッキャウフフしたければ、Z2のちょっと大きめを履け。波打ち際を何kmだって追いかけっこできる。恋人とビーチを歩いていると、回遊魚に追われたイワシの群れが慌てふためいている! なんてことよくありますよね。そんなとき、投網を片手に全力疾走で駆けつけられます。Z2ならね。

川で使うならちょっと大きめを履け
 グリップ力以外にもリバーガイドたちがZ2を重宝した理由がある。Z2は泳ぐ時に水の抵抗が少なく、またキャッチする水の量が大きいのだ。Z2は突起物がないので水中での水切りがいい。水切りの良さに相反して、ちょっと大きめのソールだとバタ足でもカエル足でも水をよく掴む。ソールが足ひれのような役割を果たすからだ。泳ぎ方次第では、素足よりも強く水を蹴り出せる。

 そして、ちょっと大き目だと足先を岩に打ち付けづらくなる。ソールが指先よりも前に出ているので、足をぶつける前にソールの先端がヒットするのである。

 悪いことは言わない。岩がらみの川で力泳するなら、Z2のちょっと大きめを履け。足先に余裕があると、川を歩いたりガサガサで魚を追うときにつま先をぶつけにくい。平泳ぎをするときも水をぐいぐい押し出せる。

水虫はChacoで治せ
 つい数十行上で「水虫菌の付け入る隙もないほどサンダル生活」って書いたけど、ごめんなさい。嘘つきました。私、一度だけ、水虫になりました。

 しかし罹ったのはサンダルを履けない冬。Chacoは悪くない。暗く冷たく、靴に覆われる季節が水虫を誘い込んでしまった。そして、病院で処方された薬では冬の間に水虫を克服することはできなかった。

 春を待ち、私はZ2で水虫を治した。Z2を履いて足裏を徹底的に酷使したのである。来る日も来る日も海や川を泳ぎ、Z2で山に登った。フットベッドで足裏をこすりあげ、指の間を砂つぶで痛めつけ、ときにはアスファルト足裏を切りつけて暗闇を走ったりした。写真はZ2で登った開聞岳。登山道がしっかりした低山ならZ2で問題なく登れる。とはいえ、皮膚を露出しているので丁寧に歩き、生爪をはがさないように爪を切っておきたい。

 人間の体はよくできている。酷使すればするだけ、足裏の皮の代謝が活発になって肥厚する。生み出された皮は、肥厚するたびにフットベットとの摩擦で削り落としてやった。野山に出られない日は、風呂上がりにサンドペーパーでやすりがけした。そのうちに「水虫菌が皮の奥へと食い進むスピード」よりも「皮が生産されかつ削り落とされるスピード」のほうが勝り、ついに水虫菌は私の足裏から排除された。

 ここまで読んで「別にZ2じゃなくてもサンダルならいいんじゃないの?」と思った人もいるだろう。確かにサンダルなら足の乾燥は保てる。しかし、靴と変わらないほどの機動力がなければ、継続して足裏を酷使できない。「どこにでもいけるサンダル」だからこそ常に足の皮を鍛えられる。悪いことは言わない。水虫をサンダルで治すなら、Z2を履け。

<まとめ>
 Z2に限らないけれど、サンダルで歩くことには大きな学びがある。ふだん靴で野山を歩いている人は、いちどサンダルで歩いてみるといい。いかに自分が雑に足を運んでいるか気がつくはずだ。現代人の歩行は、靴に相当の部分を補われている。サンダルで雑に歩くと、痛い。サンダルで長く歩くと足運びが正確かつ繊細になる。

 そして、足の指が器用になるのもサンダルの効能のひとつ。落ちているものを拾ったり、物を保持したりするときに、自然と足を使えるようになる。自分の足先が手のように使えるのだ。これはかなり便利である。Z2を15年履き続けるなかで起きたいちばんの変化はこの点かもしれない。

 何度も書いた通り「Z2のちょっと大きめ」は、砂浜、水中、法面および水虫にも有効な実用品である。今年はもう裸足の季節も終盤だが、実用サンダルを買う機会のある人にはちょっと大き目をおすすめしたい。

 なお、現行モデルでは「Z2クラシック」と「Zクラウド2」があるが、基本の構造、構成は同じでフットベッドの柔らかさに違いがある。好みのほうを選べばいいだろう。
Chaco/
メンズZ2クラシック 

¥9,500

メンズ Zクラウド2
¥9,500

<9.20追記>
 SNSを通じて、「野外では足先を覆うフットウェアを身に付けるべきだ」と指摘を受けた。それに対する私の返信は以下の通り。私にとってサンダルで歩くことは、自分の身体の使い方を学ぶトレーニングである。

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こんにちは、藤原です。
自分なりに外遊びを続ける中で
「野外活動とは自由を身に帯びるレッスン」
だと考えるに至りました。

技術と体の使い方を身に付けることで、
自分の精神と肉体を今よりも少しでも自由にする。
より少ない道具で快適に野で過ごせることを目指す。
そんなつもりで野に出ています。

野に持ち出す道具の選定については、
個々人のルールに則って行えばよいと思います。
便利で安全性を高める道具の存在は知っていますが、
その上で簡素なものを選んでいます。

もちろん、3級の瀬を泳ぐならウォーターシューズを履くし、
岩稜を歩くときは登山靴を履きますが、
開聞岳やふだんの川遊びならZ2で十分、という判断です。

怪我をしないことを重要視するなら、
防護性が高い道具を使えばよいし、
気持ち良さや自分の身体性を重要視するなら、
簡素なものを使えばいい。

その点において、私は道具で守るよりも
体をうまく使うことで怪我を防ぎたいと思います。

また、怪我をすることを悪いことだとも思ってもいません。
野外活動の醍醐味は、自分の判断の結果を我が身で負うことにあると思っているからです。

爪を割ったり、毒虫に刺されたり、刃物で怪我をするたびに
「くっそー!迂闊だったー!」
「いつも原稿では長袖長ズボンって書いてるのにー!」
と自分に腹を立てていますが
失敗のたびにちょっとずつ賢くなるのを嬉しく思っています。

 
 
ライター
藤原祥弘

野生食材の採集と活用、生活技術につながる野外活動などを中心に執筆とワークショップを展開。twitterアカウントは@_fomalhaut

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