中島英摩が行く! トラベルハウス『エマ号』基本仕様や内装カスタマイズなどアレコレ紹介

2022.06.02 Thu

中島英摩 アウトドアライター

 新たな相棒に出会って早4ヶ月。すっかり雪も解けて、ツルツル路面にびびることもなくなり、かなり仲良くなってきた今日この頃。

「わっ、女の子なの? びっくりした!」

 道の駅で買い物のあと、“部屋”の中で片付けをしていて扉を開けたら真正面に男性がいた。どうやらエマ号に興味を持って、これは何ぞやと見ていたらしい。女性でよくそんなの運転するね、とたびたび驚かれる。

 キャンピングカーと言えば、定年後の夫婦旅に購入する人が多いらしく、旅の途中で出会う人達の多くが自分の親世代だ。立派なアラフォーなんだけども、見た目が幼く見えるもんで「若くていいねぇ!」と言われては「こんな自由に生きてますけどそんなに若くないんですよ」と言って困らせてしまったりする。

 全国津々浦々、道の駅と呼ばれる場所に行けばたいていキャンピングカーが何台も駐まっている。大きなものから、軽自動車タイプまで。それからいわゆるバンライフってやつで、ハイエースなんかのでっかいバンを改造した車も多い。だけどわたしの相棒のようなタイプはほぼ見かけたことがない。親近感を覚えるのはパーキングエリアのキッチンカーくらいだ。


軽トラキャンピングカーという新しいジャンル

「それ、自分で作ったの?」

 と聞かれるけれど、まさかまさか。そういう人もいるらしいけど、わたしの愛車はトラベルハウスという既製品。ベースは軽トラ。住宅用のパネルや断熱材で作られたボックスを荷台に固定金具で取り付け、窓や換気扇、外部電源もついた居住空間なのだ。断熱材のおかげで夏は暑くなりにくく、冬は熱が奪われにくい。遮音性も高く、積載バッテリーで電気も点くからまさにそこは“部屋”そのもの。

トラベルハウスを制作している株式会社自遊空間の三田営業所を見学。

トラベルハウス引き取り時。社長さんと記念写真。

 キャンピングカーってめちゃくちゃ高価な乗り物で、いつかは自分も……と憧れても簡単に買える値段でもない。それに車高はもちろんのこと、車幅も車長もあるものが多くて置き場所にも困る。その点トラベルハウスは150万円~オプションの機能を選んで300万円くらいまでの価格。車幅や車長は軽トラックの本体と同じ。4ナンバーで維持費も安い。カスタマイズ性も高く、「憧れのキャンピングカーを低価格で」というコンセプトで作られたもの。

 ソーラーバッテリーも積むことができ、雨でない限り積載バッテリーに充電され続ける仕組み。

冷蔵庫やドライヤーなど消費電力が大きいものは使っていないのでこれで十分。夜電気を付けてパソコンやスマホ、カメラ、モバイルバッテリーを充電するくらいならひと晩もつ。翌朝日が昇ればまたソーラーから蓄電される。

エアコンは、キャンプ場やRVパークなど外部電源を繋いで使うのが基本。外部電源が無い時は、どうしても暑いor寒い時の最初の数分であれば問題ない。

電気のスイッチやコンセントは住宅用がそのまま使われているので家気分。


内装はカスタマイズ自由! 思い切って家具メーカーと共同開発中。

「これ、どこで寝るの?」

 これまたよく聞かれる質問。トラベルハウスの標準仕様はただの箱。自分でDIYするもよし、オプションで内装を付けるもよし。わたしは香川県にある株式会社モクラスの作るブランドTREETの協力を得て内装をカスタム。TREETからトラベルハウス内装キットを開発すべく、そのお手伝いなのである。

 アウトドアウーマンならどんな内装や機能が欲しいのか、あるいはアクティブ女子のワーケーションスタイルにはどんな空間が必要なのか。仕事もしたいし遊びもしたい。山にも登るし自転車にも乗る。スキーもするし、雪山登山もする。自分で20kg背負うくらいなんだから、とにかく持ち物が重くて嵩張りがち。仕事はPC、原稿を書くからそれなりに安定した環境だってほしい。家とはまったく違う限られた空間をどう調理するかはむずかしくもあり面白くもある。

空間デザインもプロダクトデザインもしたことのない超がつくド素人によるスケッチをお送った。

それを調整して図面に落としてもらう。DIYの勉強になるなぁ。

 東京と香川。そう簡単に行き来できるわけでもなく、オンラインミーティングをしながらできあがったのが1月。車の専門メーカーでもなく、ましてや軽トラの荷台の衝撃なんて乗ってみなけりゃわからない。1年かけてフィードバックと改善を繰り返しながら、より良いものをめざしていくことになった。

株式会社モクラスのみなさん。もちろん車内用家具なんて作ったことがないわけで……。

 で、話を戻すと、わたしが考えた就寝システムは2パターン。上部のとび出た部分から板を引き出すロフト型。これはトラベルハウスのオプションとしてもある形で、最初に提案された方法。

板だけ乗せてもらって納品、引き出しにくいので自分で取っ手を付けてみた。

 でもちょっと問題があり、なにせ高さがない。超絶低いロフトなのだ。小柄なわたしなら寝られるが、男性なら寝返りをうつのがギリギリで、体の向きを変えるのには柔軟性が必要だ(ストレッチに励もう)。それから、夜トイレに行きたくなったときも大変で、体の向きを変えてからヨイショと下りる。登るときもそこそこひと苦労。

座るとわたしでも頭が天井に付く高さ。

 そこで考えたのは、下の段にソファベッド型の就寝システムをもうひとつ作ること。使わないときはイスになり、寝るときにベッドになる。ソファベッドは狭い学生ワンルームなど限られた空間を有効活用したい家具の定番だ。全体をL字の固定式のベンチにして、その側面に跳ね上げ式の板を付けてもらった。これでベンチと連結すれば就寝スペースの完成。横幅はかなりスリムなシングルくらいだけど、山用のマットやコットよりずっと広い。じゃあ下だけでいいじゃんと言われそうだが、アウトドアをする者にとっては、下部に自転車など大きなものを積みたい時だってある。そういう時は上で寝ればいい。

サイドに付いている板を持ち上げるとカチャンと固定されるパーツが付いている。

イスは中が収納できるようにして荷物はそこへ収納。上段のベッドを使わない時はそこへ大きめの荷物を収納している。白い布は冬場に外部電源の供給があるところで電気毛布を使用した時。寝袋に電気毛布って(笑)。

 それから、キャンピングカーっぽくしたくて、テーブル&収納と吊り棚を付けてもらった。ただ、これは再考すべき点で、吊り棚に頭を打ちやすかったり、凸凹道を行くことが多いために扉が開いて中のものが飛び出し散乱するトラブルが勃発。家庭用の家具パーツは車体の揺れや衝撃なんてものは想定されていないわけで、しかもスムースに動く乗用車の車中泊快適化とは違って、軽トラの荷台はなかなか揺れることがわかった。きれいに整備された道だけを行くキャンピングカー乗りオーナーなら問題ないが、アウトドアユーザーにとって林道やらダートやらキャンプ場や登山口までの道はなかなか険しい。乗ってあちこち行ってみなけりゃわからない問題だった。そもそも、バックパックに収まるような荷物は良いとして、車だからこそ運べるクーラーボックスやオートキャンプ系の大きい道具を入れるとなると固定式はかなり不便だと気付く。う~んどう改善していくべきか。

家のキッチンの吊り棚の扉とかと同じでうっかり開けたままなのを忘れて頭を強打。

 さらに問題はもうひとつ。「ロッジや山小屋っぽくしたい!」「海外のオシャレバンライフっぽくしたい!」という強い要望で貼った木の板。これがとにかく重い。壁面の板張りはアウトドア系バンライフの超超超定番でもあり、みんなが最初にやりたいと調べるカスタムなんじゃなかろうか。一気に雰囲気が出て部屋っぽくなる。でも板ひとつひとつの重量がそれなりにあり、車と違って壁面の広いトラベルハウスを全面板張りにするのはあまりに負担が大きかった。

最もお気に入りのポイントが最も重要な課題。“木目調の壁紙”を提案されるも妥協できず……これからどうする!?

 車が重けりゃ当然燃費も悪い。長旅に出る時には荷物も多く、急な上り坂じゃ自転車に抜かれそうな時もある。でも家のような居住空間と違って、狭い空間における壁面は雰囲気を左右する大事な要素。とりあえず応急処置で床だけ剥がしたものの、これからの部屋作りは軽量化と空間の確保が課題になりそうだ。

壁が木だからビスも打てる。自分で壁板の一部を外してパンチングボードを設置。シューズと鍵置き場が完成。ホームセンターで見つけた真鍮のパーツが可愛くってお気に入り。

ベンチのクッションシートは防音材のウレタンシートをカットして、IKEAで安いカーテンを買ってカバーに縫い直した(生地って高いんだもん)。


運転はむずかしくないの?

 うん、たぶんむずかしいけど、どのくらいむずかしいかはわからない! なぜならこれがファーストカーだから!(笑)教習所の車はもちろん普通車だったし、免許取得後に軽自動車を運転する機会もあって“フツウの車”がどんだけ快適かはわかっているけれど、基本的にはこの車が常なので、慣れるしかない、と頑張って練習してきた。車がいない広い駐車場で車庫入れを何度かやってみたり、超ビビりながら高速にも乗り、田舎道もあちこち走り回っている。前回の記事のように雪道運転にもチャレンジした。安全第一はもちろんのことで、危険なことはしないけど、怖い怖いと言って乗らなければいつまでたっても慣れない。駐車も最初はこわごわ、いまでも苦手だけど何度か切り替えして都内の狭い駐車スペースにも入れられるようになった。

 ただ、土台はあくまで軽トラ。長距離走るためにも、どでかい箱を乗せるためにも作られていないから、バランスはそれなりに良いとは言えない。高速道路で隣を大型トラックが通ればハンドルが取られるし(外に押されてから引き戻される感じ)、強風のときなんてそもそも高速には乗らないようにしている。傾きにはものすごく慎重に運転するようにしていて、雨の日もノロノロ運転でスピードは出せない。

登山口の駐車場に行くにはほぼ100%峠道を登る。背が高いわりに土台は小さいので、振られて遠心力がかかりやすくカーブの連続はいつも超低速運転。後に車が来たらすかさず譲る。どんどん行ってください~! お先にどうぞ!

 でもそれはトラベルハウスに限らずキャンピングカーには総じて言えること。旅する車はあくまで「のんびり、ゆっくり、あせらず、走る」が基本なんだと思っている。だから急がなきゃいけないシーンはできるだけ避けて時間に余裕を持って行動する(結構苦手だけど)、そんな心にゆとりあるライフスタイル向きだと言える。特殊な車だもんね。

 あっ、それからもうひとつ、ルームミラーが使えない問題! これはもう仕方がなくって箱が乗っているから後が見えない。バックモニターを付けるにも位置と配線が難しく……(なんとかして付けたいけど悩み中)車体感覚とやらをつかむまではなかなか苦労した。いやはやトラックの運転手さんってなんてすごいんだ。平日夜間の高速道路で前後をトラックに挟まれてビビりながら運転している私にとっては、尊敬しきりである。

 部屋の中も改造したいし、外装も塗ったりしたい。夢が広がるトラベルハウスカスタム。でも乗らなきゃ意味がない! 使い勝手は、現場で考えるべし。

 さて、次の旅先はどこかな?

(文・写真=中島英摩)


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