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野宿野郎かとうちあきが、明日が最後の寝台「急行はまなす」に乗ってきた!?

2016.03.20 Sun

かとう ちあき 『野宿野郎』編集長

「人生をより低迷させる旅コミ誌」というかなりダメなコンセプトで、2010年の7号の刊行以来、ほとんどその話題さえ聞かなくなった野宿専門誌『野宿野郎』の編集長・かとうちあきさんの連載のようなものがスタートします。その第1回目は、なんと明日でラストランとなる「急行はまなす」の乗車レポ。鉄ちゃんVS野っちゃん……のマニアすぎる仁義なき戦いです。

 青森と札幌を結ぶ、夜行列車の「はまなす」。3月26日の「北海道新幹線」開通のため、明日3月21日が最後の運行となります。

 「はまなす」はJR最後の「急行列車」であり、機関車がけん引する「客車列車」、かつ車体色が青の寝台車を連結した「寝台列車」ということから「ブルートレイン」のようなもの。どうやら「はまなす」の引退で、「寝台列車」の歴史は完全に幕を閉じちゃう……らしいのです。

 って、ひじょうに説明があいまいなのは、もちろんわたしが鉄道事情に詳しくないから(ヘタな解説をすると、その筋の方たちからあまりあるご指摘が)。でも、でも……。詳しくなくても「これで終わり」「最後の寝台列車」と聞けば、誰でもミーハーに乗っておきたいと思うものであります!

 そんなわけで、2月下旬、奮発して買った「B寝台」券(6480円)を握りしめ、上野から青森行きの高速バスに乗って青森へ向かいました。10時に乗って21時に到着。それからまた「はまなす」に乗るんだから、移動ばっかりだなあ……。

 青森駅で「札幌フリー乗車券」というお得きっぷを買うつもりが、当日の購入はできないということで、正規料金(運賃8200円+急行券1300円)で乗るはめになり、「こんなはずじゃなかった」感が高まります。宿泊=野宿が基本の人間は、温泉宿なんかに泊まった日にゃあ、「あれもれこれも満喫せねば!」って寝る暇がなくなりがち。今回も「もう寝られなくなる寝台で眠ること」を目的にしていたつもりが、「もう、寝てなんかいられない!」ってなことになり、そわそわとしてまいりましたよ……。

 しかし、わたしだけではありませんでした。まだ廃止まで一カ月もあるというのに、出発駅でも停車駅でも、多くの人が車中を歩き回り、外に出て眺め、そわそわと「はまなす」との別れを惜しんでいました。


こんなに、大人気! はまなすフィーバー。鉄ちゃんの熱狂ぶりに完全負けています。

 車窓から見える夜の景色、寝ころびながら感じる揺れ、がたごとと耳に心地よい音。音がかわるので、青函トンネルに入ったことがわかります。そして気づけば、海を渡って北海道へ。ああ! という、夜行列車のすばらしさや旅情は、もっと好きな人に存分に語っていただきたい次第。「野宿野郎」としては、いきなりの方向転換ですが、長万部駅と函館駅のことを話したい、話させてくださいー。

「はまなす」で札幌へ到着。その日は、札幌駅からの最終列車に乗って、長万部駅へと向かいました。駅では数人が下車。これから「はまなす」に乗る人と、写真を撮りに来た「撮り鉄」の人たちです。長万部駅は「はまなす」の停車駅で、札幌発青森行きが1時03分、青森発札幌行きが3時8分に発車。そのため待合室は夜間も暖房がついており、2月でもぬくぬくと駅寝ができるステキ空間となっているのです。それもこれも「はまなす」を待つ人たちのため。ということは、廃止後は暖房の必要がなくなるわけで、ほかとかわらぬ「極寒の無人駅」になってしまうはずです……。ベンチに座って待つ人々の「なに、こいつ?」という視線を感じながら、失われてゆくステキ空間を惜しんで、一人さっさと就寝したのでありました。

ベンチとベンチにはさまって寝る


トイレに起きたら、「撮り鉄」の人たちも寝ていました!

 翌日は、函館駅へ。大きな駅がどんどん夜間施錠されてゆくなか、函館駅も「はまなす」の停車駅ということで、夜間も開放されている貴重な駅となっていました。ホームレスの方たちにとっても貴重な寝場所で、しかしそのためか2000年代(すみません、はっきり年を特定できず)に入り、札幌発青森行きの「はまなす」発車後、3時30分からの1時間は、悲しく施錠されている状況に(わたしが行った日に寝ている方はいらっしゃいませんでしたが、これからどうするんだろう……)。


みんなみんな、「はまなす」を待ってます。

補修工事をしているのか、あちこちで作業音が聞こえる構内は落ち着かないし、駅舎はおしゃれなつくりで天井が高くてちょっと寒い……。しかし外に出たら、とんでもなく寒いので、ここはオアシスであります! ここで寝ながら、青森行きの「はまなす」を待つんであります!

「はまなす」を待つ人、写真を撮りに来た人たちでつねにざわざわとしている函館駅で、「はまなす」と同時に、一時施錠されるとはいえ、明け方まで開かれていたこの空間だってなくなっちゃうんだろうなーって、悲しくなってきます。ひとつの夜行列車が廃止されるということは、各駅の風景を大きく変えること。夜間の豊かで雑多な空間が失われることでもあるのでした。うううう。

 さよなら、「はまなす」! さよなら、長万部駅の暖房! さよなら、函館駅の夜中の広々空間! 失われた寝場所を悲しみつつ、「さよなら、大金!」によって懐状態の厳しくなったわたしは、いま、つつましく暮らしています。うううううう。

かとう ちあき 『野宿野郎』編集長

面倒くさいを座右の銘に、人生をより低迷させる野宿専門誌『野宿野郎』を刊行する編集長のようなもの。著書に「野宿入門―ちょっと自由になる生き方 」(草思社文庫)、「あたらしい野宿(上)」(亜紀書房)など多数。最近は、横浜で、お店のようなものを絶賛営業中。

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