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四国三郎、早春の吉野川下流域をカヤックで旅する

2016.04.06 Wed

Ushio Takeshi

Ushio Takeshi Trip 四国の川の案内人主催

吉野川をメインフィールドに、ツアーカンパニー「Trip 四国の川の案内人」を主催するアウトフィッター・牛尾 健さんがAkimama執筆陣に参加。四季を通した四国のフィールドのいまを紹介!!


 高知から徳島県へと流れる全長194kmの吉野川。深い森とその雨量から最大洪水流量は日本一。暴れ川ゆえに四国三郎の異名を持つこの川の下流域は、その流量がもたらす膨大な堆積物により広大な河原が形成されている。今回は吉野川のうち、つるぎ町半田~穴吹川合流地点までを1dayツーリングしてみた。

 旅の足は「ツーリングカヤック」。短いリバーカヤックでもなく、長距離航海をするシーカヤックでもない。1泊ぐらいの荷物も載せられて、そこそこスピードが出る。けれども小回りもある程度きく、全長は450cmぐらい。

 全体的に水量の少ない日本の川では、底を擦っても気にならないポリ艇がいい。そして重さも25kg以下だとカートップにも載せやすい。もちろん海で近場の島や沿岸のツーリングも楽しめる。貴重な休日に1日や1泊で出掛けたい! というような場合に最適である。ツーリングカヤックは、日本の自然に、そして社会にもフィットしたフネとも言えるかもしれない。

 この日は暖かく、桜が咲き始めていた。

四国の川を楽しむならツーリングカヤックがいちばん

 岸を蹴ってフネに乗り込み川の中央へと漕ぎだしていく。この時期、川の透明度はよく、5mは十分に見える。本流の川なのに、である。支流の流れ込みには小魚がたくさん、川底にはコイやナマズの姿が見える。この身近さでこの自然の濃さは、四国ならではの風景ともいえる。

 途中、上流を見るともっさりと木が茂った島のようなものが見える。ちゃんとした名前もある川の中の島「中鳥島」である(下写真の中程にあるこんもりとした林が中鳥島)。河原でなにやら作業をしているおっちゃんに話しかけてみると、島のことに詳しい。曰く、昭和60年代までは人が住んでいたと言うから驚き。島には学校もあり、そのむかしは城もあったと言う。いまはその面影もなく、林に埋もれてしまっているけれど。

 
 やがて、きれいな支流が流れている場所に出た。ここでしばし休憩。半田川である。

 浅瀬をジャブジャブと歩き、岸へと上陸するとむかしの舟着き場跡がある。川が物流の拠点だったころ、この場所にはたくさんの川舟が停まっていたそうな。そして町への玄関口がこの場所だったようだ。残念ながら鉄道と道路が整備されたいま、その面影はほとんどなくなっている。

半田素麺は徳島の名産

 ここから少し歩くと、小さな素麺工場があったので見学をさせてもらった。

 こちらが地域の名産品、半田素麺。伸ばして干した状態の素麺。よく知られているふつうの素麺よりも、やや太めなのが半田素麺の特徴のひとつ。この地域の素麺づくりは江戸のむかしから続いているとか。この産業も吉野川の流れがあったればこそ、生まれたもの。豊かな川だなぁとしみじみ。

 素麺工場の見学を早々に切り上げ、またフネに乗る。川面を少し進み、貞光の町を通過。ここは唯一平地から剣山が見える場所だ。この時期、その山は雪で白いのが肉眼でも分かる。

 さらに進むと、ようやく難所が出てきた。やはりたまにはこんな刺激も必要だ。ただし、アユ釣りの時期になると川幅は広いものの両岸から釣り竿が伸びるので注意が必要である。釣る側も漕ぐ側もともに吉野の魅力に取り憑かれたもの同士。仲よく、仲よく。

 やがて瀬が終わりひと休み。広い河原はどこでも好きなところで休憩ができる。愛用のケリーケトルを使って湯を沸かして休憩する。短時間でお湯も沸くし、燃料はそこらへんの小枝で十分。これは便利なアイテムだと、いつも感心。

 再び、フネに乗り込む。フネに乗ってはフネを下り、また、下りては乗るを繰り返す。これも、のんびりと川を下るときの醍醐味のひとつ。そうしてしばらく行くと、沈下橋が見えてくる。「脇町の潜水橋」である。徳島ではこの手の橋は「沈下橋」ではなく「潜水橋」と呼ぶ。フネを係留して河川敷の土手を上がると見えるのが脇町だ。道の駅があり、コンビニからスーパーやチェーン店までなんでもそろう。

「うだつの上がる」町並みを歩く

 フネを降りて徒歩5分で、ふつうに町だ。「うだつの町並み」があり、かつての港町の痕跡が色濃く残る。この歴史的な町並みは、吉野川流域では貞光、さらに上流の阿波池田の町に残っている。むかしながらの町を散策し、友だちの店に寄り、コーヒーをもらう。

「うだつの町並み」の「うだつ」とは、民家と民家の境目に取り付けられた土造りの防火壁のこと。この脇町のうだつの町並みは江戸の中頃に誕生したものだ。うだつ造りには費用が掛かるため、金持ちの家しか設けることができなかったとか。つまり、「うだつ」は富の象徴であり、逆に「うだつが上がらない」の語源にもなっている。

「産直と道具と喫茶 フナトト」にて。うまいコーヒーを飲ませてくる友人の店なので、ぜひお立ち寄りを! 

「フナトト」にてのんびりと過ごし、また出発。ゴール地点まではあと1時間ほど。町から近い河川敷には、ランニングやサイクリングの人も多い。でも、その傍らをカワセミも飛んでいく。人と自然が共存していることがよくわかる。そんななかを並走して、フネは進む。小さな瀬をふたつほど越えてしばらく進むと、その先には穴吹川が流れ込んでくる。この合流地点が、今回の旅のゴールとなる。

 帰り道、橋の上から下ってきた瀬を確認する。吉野川が東西に流れるこのエリアは、夕日や朝日を眺めることもできる特別な場所。河口付近以外でこのような光景が見られるところはは数少ない。とくに春や秋は、陽がいい場所に落ちていく。

 水がきれいで標高も低いので水温も高め。自然と町のバランスを楽しみながら川下りを楽しめる吉野川下流部。ニッポンの原風景がここにある。

 春の日長にのんびりと川を下る楽しみ。吉野であれば、いつでも好きなときに水と戯れることができる……いいところですよ、吉野川。

      

■Trip 四国の川の案内人
吉野川を漕ぎたくなったら、いつでもこちらへ↓
www.trip-yoshinogawa.com

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