よっ、現場主義道具考 其の壱 ~ハンマーの巻~
2013.04.08 Mon
ハンマーは
よろず現場のキーアイテム
玄翁(げんのう)、両口、カケヤ、石頭、ボンゴシと、ハンマーにはたくさんの名称があります。さまざまな呼び名のある“鎚”ですが、よろず現場ではだいたいハンマーと呼んでいます。なので、ここでも総称としてハンマーで統一したいと思います。と言いますのも、まぁ普段ハンマーを使う場面で「ちょっと~そこのツチとって~」とは、職人さんでもない限り、なかなか言いませんもんね。
名称の数があるだけ、形は似ていても種類が違うのです。種類が違えば使い方も少し変わってきます。ではでは、どんな種類があるのかといいますと~。
たとえば玄翁。まず、なぜにハンマーを玄翁と呼ぶのか? と疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか? この名称は、南北朝時代の玄翁和尚さんが由来とされています。あるところに殺生石という呪われた石がありました。その石でみんなが困っていたところに、
「ワシにまかせいんかい!」
と、玄翁和尚さんがハンマーを片手に登場。その石をみごとに叩き割り、呪いを退治しちゃったのです。困っていたみんなは当然のように「玄翁和尚さま、ありがたや~」と拍手喝采! いまで言うところの「和尚マジリスペクト状態!!」になったそうです。それからみんなは玄翁和尚を讃えて、石を退治したアイテム、つまりハンマーのことを”玄翁”と呼ぶようになったと伝えられています。
さて、この玄翁の基本形と使い方ですが、玄翁は大小あるものの、たいていが20~30cmの長さで、先端の鉄塊部分は200~500g前後、左右両面で対象物を叩けるかたちをしています。まずこの左右で叩けるかたちを両口といいます。ちなみに、鉄塊の片方が釘抜きになっているハンマーもよく見かけますね。これは箱屋鎚(はこやづち)といいます。
では、玄翁の場合、左右のどちらでも対象物を叩いてもよいか、と言えばそうではないのが玄翁のおもしろいところ。もともと釘打ち専用につくられたもので、断面の片方は平面、もう片面は若干の曲面になっています。この違いの意味は、柱などの材木に釘を打つ場合、最初は平面部分で打ち始め、打ち終わる最後のところでクルリと持ち替えて曲面部分で打つようにします。すると、曲面部分が釘の頭だけと接するので材木に傷をつけることなく、釘の頭がしっかりと打ち込めるという効果があるのです。この釘の頭をしっかり材木に食い込むまで打つ行為を”打ち締め”といいます。
打ち締めが得意な玄翁のなかにも数種類の派生が存在しており、“丸玄翁”や“四角玄翁”はたまた“片八角玄翁”なんて中華料理のような名称のものもあります。玄翁だけでもそれぞれに細かい得意分野があり、とても奥が深いものです。この玄翁はおもに大工さんなどの職人が使用するハンマーですね。

