• 山と雪

私たちの未来を守る! 正義の味方が一堂に会したPOWアンバサダーサミットが開催

2022.10.22 Sat

滝沢守生(タキザー) よろず編集制作請負

日本各地からチラホラと雪の便りが聞こえる季節となりました。今シーズンはどんな冬になるのか・・・期待と不安のスノーシーズン到来を控える2022年10月11日から13日までの3日間、長野県大町市、青木湖畔にあるライジングフィールド白馬で「POWアンバサダーサミット」が開催されました。
日本を代表する滑り手たちが全国から白馬山麓の青木湖畔に集まった。(PHOTO:Ayako Niki @247nikiimages)
私たちの冬を守ろう(Protect Our Winter)というメッセージを掲げ、スノーコミュニティから気候変動に対する警鐘を鳴らし、脱炭素社会の実現に向けた選択と行動を促すPOW JAPANが発足してから3年。POWの存在はスノーコミュニティだけでなくアウトドアコミュニティ全体にも広く認知され、フィールドを越えたさまざまなアクションや、アウトドアユーザーひとりひとりの意識やライフスタイルの変化につながっています。またその広がりは、地域やスノー産業界にも影響を与え、POWのベースでもあるHAKUBA VALLEYでは脱炭素型のスノーリゾートとしての先進的な気候変動対策が行なわれるようになりました。

そこで、POWのアンバサダーを務める日本を代表するスキー・スノーボーダーたちが一堂に会し、よりインパクトの強い効果的な活動を展開するためのミーティングが白馬山麓で行なわれました。このアンバサダーサミットは、非常に内容の濃いプログラムがデザインされた2泊3日にわたるワークショップで、アンバサダーだけでなく、協力パートナー企業の担当者やサミットの運営に携わるボランティア、次世代のアンバサダー候補なども参加。それぞれ想いをひとつにする仲間たちとのコミュニケーションを積極的にはかることで、行動することや発言していくことの大切さを再確認し、それぞれがエンパワーメントを高めていました。
野沢温泉をベースに活動するプロスキーヤーの河野健児さんも真剣な眼差しでワークショップに集中する。(PHOTO:Ayako Niki @247nikiimages)
2日目は気候変動問題の現状を理解するというテーマで4人の講師をむかえ、知識や情報のアップデートと危機感の共有が行なわれた。まず登壇したのは、写真家であり映像作家の山田博行さん。「アラスカの気候危機の現状」と題されたアラスカの氷河後退の劇的な変化がわかる資料映像は美しくもショッキングで、誰もが息を止めて見入っている。まさに、百聞は一見に如かず。そこにはフィールドの最前線に行ったものにしか見ることのできないリアルが映し出されていた。
アラスカで最も大きなコロンビア氷河は、ほぼ関東平野と同じくらいの広さの氷床がこの数十年で失われたと解説する山田さん
休憩を挟んで2人目の講演は、「気候危機対策の現状と私達に求められていること」と題し、環境分野のノーベル賞ともいわれるゴールドマン環境賞を受賞したClimate Integrate代表理事の平田仁子さん。2050年までのカーボンニュートラルに向け、日本のCO2排出のいちばん大きな要因は、石炭火力発電によるものにもかかわらず、さらに新規増設をすすめる日本のエネルギー政策を批判。それは国際的にも問題で、日本は石炭火力発電施設の「全廃」を求められていることなどを発表し、市民がどうすれば国の政策や企業の方針を転換させることができるかなど、自分自身がこれまで20年にもわたって活動してきた戦略と具体的戦術を教示。数々の失敗や批判を乗り越えて実際に戦ってきた戦士の1人称の言葉は、会場にいた全員の心に力強く響きわたっていた。以上で午前の部が終了。それぞれの講演のあとには活発な質疑応答が交わされ、ランチタイムになってもその余韻は冷めやることはなかった。
スライドに映し出された平田さんの言葉のひとつひとつに勇気をもらう 北海道からは国際山岳ガイドでビックマウンテンスキーヤーの佐々木大輔さんも参戦。板をSUPに代え、ポールをパドルに代えた水の上のオフショット
ランチの後、長めの休憩時間には湖畔でのアクティビティも用意され、SUPやマウンテンバイクなどを楽しんでリフレッシュした後、午後からは、「実際の気候変動の取り組みや活動の事例を学び、自身の活動のアイデアを得ること」をゴールとした2つの講演が続いた。まず地域の気候変動対策の事例として、地元白馬から八方尾根スキー場の松澤瑞木さんによる「気候変動によるスキー場への影響とその対策」という講演が行なわれ、その後に、モデルでSNSなどを巧みに使って、若い人たちにメッセージとアクションを呼びかける環境活動家の小野りりあんさんによる「市民ムーブメントの重要性・社会のシステムチェンジを実現するためには」という講演とワークが行なわれた。
りりあんの軽やかなトークと並外れた行動力に、おじさんたちは脱帽! 我が身を振り返るいいワークショップが展開
いずれの講演も、実際に取り組んでみなければわからなかったこと、そこで得られた学びや改善点が次へのモチベーションやアイデアにつながることなど、チャレンジをしていくことの大切さをあらためて会場にいる仲間たちと共有した。そうして濃密な2日目のプログラムが終了してみると、自分はPOWのアンバサダーではないが、ここにいる全員と同志のような、心強い仲間と勇気をもらえた気がした。

私たちの冬を守ることは、未来を守ること! 未来を守ることは正義に他ならない。気候正義! 誰にでも平等で平和な未来が訪れるように。

滝沢守生(タキザー) よろず編集制作請負

本サイト『Akimama』の配信をはじめ、野外イベントの運営制作を行なう「キャンプよろず相談所」を主宰する株式会社ヨンロクニ代表。学生時代より長年にわたり、国内外で登山活動を展開し、その後、専門出版社である山と溪谷社に入社。『山と溪谷』『Outdoor』『Rock & Snow』などの雑誌や書籍編集に携わった後、独立し、現在に至る。日本山岳会会員。コンサベーション・アライアンス・ジャパン事務局長。

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