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「電力は自由化よりも独立化!」本当の電気の話をしよう

2016.04.22 Fri

藤原祥弘

藤原祥弘 アウトドアライター、編集者


 4月1日から一般家庭へも拡大された「電力自由化」。新電力と呼ばれる、電力を小売する事業者が新たに参入したことで、電気の購入先を選べるようになりました。

 電力自由化において、切り替えの指針となるのは2つの視点。電気料金と発電方法です。環境保護団体や一部のアウトドアメーカーは、既存の電力会社から再生可能エネルギーに力を入れる新電力への切り替えを促していますが、その論調には勢いがありません。

 なぜなら、新電力が担当するのは電気の小売で、売り物となる電気の大半を作っているのは、これまでどおり各地域の大手電力会社だからです。

 再生可能エネルギーについても、問題がないわけではありません。2011年から進められた再生可能エネルギーの固定価格買取制度により、大規模な太陽光発電所が各地に作られました。そしてそのことにより休耕地や山林は無機質なパネルへと変わり、その発電コストは「再生エネルギー賦課金」として、市民が支払う電気代に上乗せされています。

 そしてこの再生エネルギー賦課金には「自宅にソーラーパネルを導入した人から電力会社が電気を購入した代金」も加えられています。

 つまり、こういう構造です。①ある人が高い設備投資で太陽光発電を導入→②電力会社への売電で設備投資を回収→③電力会社は太陽光発電をしていない人の電気代に上乗せ!

 加えて言えば、個人宅で太陽光発電をしてそれを自分のために蓄電すると、蓄電設備をもたない場合よりも電力会社が電気を買うときの価格が引き下げられます。つまり、電力会社は蓄電設備とソーラーパネルの併設を避けさせようとしているのです。

 それでは、設備投資を早く回収するために蓄電設備をもたなかった場合どうなるか? 災害などで停電になったとき、自宅にパネルがあるのに電気は使えないまま!という状況になりえます。

こんなふうに「再生可能エネルギー」という柔らかな言葉の影には、送電網からユーザーを離さない、巧妙な仕組みも隠されています。

 結局のところ、電力自由化といっても窓口が変わるだけで、今まで通りの電力会社から買い続けるほかないのだ−−−−と思いきや、第2の道がありました。それは、自分で発電し自分で使うこと!

「本当に電気の問題に取り組むなら、自由化よりも独立化がおすすめです!」

 そう話すのは、鹿児島の山村で暮らすテンダーさん。電気は太陽光発電、水は裏山からの沢水、火はひろった薪でまかなっています。つまり、生活に必要なエネルギーと資源のほとんどをテンダーさんは自宅の周囲の自然から得ているのです。
テンダーさんの住む「てー庵」。鹿児島の山中にあり、年間の家賃は1万円。水は裏山から出る沢水、電気は屋根の太陽光パネルからまかなう。トイレはおがくずを入れたお手製バイオトイレ。「トイレは数ヶ月使ってかさが増えたら畑に埋めます。臭いはまったくありません。尿と便を分ければ、不快な臭いは全然しないものなんです」

 テンダーさんは自分で小さな太陽光発電システムを構築し、自宅の電気を独立化(既存の送電網に接続しないこと)。そしてこれを「わがや電力」と命名しました。自力で独立化したときの経験に基づき、太陽光発電システムの解説書『わがや電力』も発表し、半年で4000部近くが売れる人気作となっています。

『わがや電力 12歳からとりかかる太陽光発電の入門書(やわらかめ)』1800円。電気の基礎的な知識と太陽光発電のシステムの作り方をわかりやすく解説。テンダーさんはわがや電力の執筆を機に「出版者」として登録。これからも自身が深めたいテーマを書籍にしていくという

「電力会社、国、地域がガッチリと肩を組んでいる状況を批判する人も多いですが、私は批判しようとは思いません。なぜならそれは、みんなが便利な世の中を際限なく求めたからだと思うのです」

「たとえば、脱原発のデモをするときに、先月よりも使用料を半分にした利用明細を1万人、10万人が掲げるデモならば意味があるかもしれません。しかし、多くの場合『原発やめろ』と相手のせいにするばかりです。自分の欲求は据え置きながら電気はほしい、というのは理屈が通りません。なぜなら、電気を使うことは、それを別の大切な何かと引き換えることだからです」

 長い年月をかけて生成された資源を電気に変える火力発電、電気を作るためには、川の生態系を断ち切らなくてはいけない水力発電、緑の地面を覆い隠すメガソーラー、地域と子供たちの未来を電気に変える原子力発電……。現代の科学では、価値の高い何かと引き換えることでしか、電気を作り出すことはできません。

「私は自分の人生を誰かのせいにしないで、自分でうけとめたいと思っています。だから私は、自分で小さな太陽光発電システムを組みました。小さなパネルで小さく作り、小さく使う。電気を使うことが、大切な何かと自分の欲求を引き換えることなら、小さく使えば使うほど、大切な何かを損なう量も小さくできます」

「もちろん、太陽光発電にも問題がないわけではありません。老朽化したパネルやバッテリーの処理には、それなりの環境負荷が伴います。しかしそれでも、既存の送電網に接続して際限なく電気を使い続けるよりも環境への負荷が小さいと私は考えています」

 そして、自分で発電をしてみたことで大きな発見があったとテンダーさん。

「じつは、自分で小さな太陽光発電を組むのはそんなに難しいことではないんです。必要な理科知識は小学6年生程度。V×A=Wの公式を思い出して、幾つかの工具を買うだけで太陽光発電を組むことができます。パネル、バッテリーそのほかの初期投資は5万円程度です」

「あとは自分の必要に応じてシステムを大きくしていけばいい。わがやは100Wのパネルを4枚使い、総額15万円程度の投資で一家4人分の電気をまかなっています」

「テレビとエアコンはないけれど、パソコンも携帯電話も洗濯機も灯りも使えています。原発をやめたら生活が江戸時代のレベルに戻る、なんていう人がいますが、そんなことはありません」

 もうひとつ、小さな太陽光発電システムには大きな効果があるといいます。

「災害への強さです。昨年、大きな台風に見舞われた私の住む集落は、長い間停電になったのですが、わがやはそれに気づきませんでした。自分で発電しているため、灯りが消えなかったのです。また、今回の熊本地震では、私のワークショップに参加して太陽光発電を導入した人の家が停電を免れました。その電気は、住む人はもちろん近所の人にとっても心強かったということです」

 テンダーさんが「わがや電力」を書いた理由とその内容は、テンダーさんの個人サイト「ヨホホ研究所」に詳しくまとめられています。自由化を機に電気について考えている方は新しい視点を得られるかもしれません。

わがや電力コンテンツ

・この本を手にしたきみへ
・わがやスピリッツ

1章「わがや電力」
・これがわがや電力だ!
・わがや電力ってなあに?
・どうしたらわがや電力を作れるの?
・わがや電力のしくみ

2章「電気のしくみ」
・電気じゃないとできないことと、電気じゃなくてもできること
・電圧について
・電流について
・どれだけ電気を使うか? ワットという単位
・ワットが大きいということ
・交流と直流
・送電について
・ショートとは

3章「わがや電力で使う部品」

4章「わがや電力の作り方・実践編」

5章「いつか大人になるきみへ」

付録「地球に暮らす」

刊行に寄せて・非電化工房 藤村靖之

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