• 山と雪

2016年は山関連の事柄多し。昨今の出来事を振り返りつつ、来年の山の世界を占ってみたい

2015.12.31 Thu

宮川 哲 編集者

相変わらず、山の事故、遭難件数が増加 
 警察庁が今年9月10日に発表した「夏期(7〜8月)における山岳遭難の発生状況」の公表によれば、全国の山岳遭難発生件数は647件、遭難者数は782人、うち死者・行方不明者は65人となっている。14年の同期間と比べ、発生件数で64件、遭難者数で83人、死者・行方不明者数で13人の増加となり、発生件数・遭難者数ではともに統計の残っている1968年以降でもっとも高い数値に。地域別に見れば、北アルプスを有する長野、富山、岐阜でそれぞれ、108件、69件、32件、南アルプスや富士山を有する静岡、山梨で62件、34件■また、一年単位での状況を見ても、14年の山岳事故の発生件数、遭難者、死者・行方不明者数は過去最悪を更新(「平成26年中における山岳遭難の概況」警察庁生活安全局地域課)。夏期の遭難件数を鑑みて、15年も厳しい状況が予測されている■14年のデータのうち、全遭難者数の50.1%が60歳以上、死者・行方不明者数では全体の92.0%が40歳以上を占める。中高年の事故は後を絶たない。

今月21日、悲報が伝わってきた 
 世界で初めてピオレ・ドールの女性受賞者となった登山家の谷口けいさん(43)が、大雪山の黒岳にて滑落。事故からはいちばん遠いところにいると思っていた、あのけいさんが……と驚きと悲しみでつらい年末となった■山を続けていれば遭難は、どんな人にも隣り合わせに。

噴火相次ぐ 
 昨年9月の御嶽山噴火では戦後最悪の火山災害に。東日本大震災以降、列島の火山は活動きに入り、各地から噴火のニュースが伝わってくる。新島誕生で沸く、西ノ島も当然ながら噴火活動がなす事象のひとつ。その他、口永良部、桜島、阿蘇山など、多くの山が火を噴いた。箱根や蔵王、浅間山など噴火警戒レベルの変動が激しいエリアも多い。登山実施の判断、心得等が登山者たちの必須の条件に■登山届、義務化の方向へ。御嶽山噴火災害で、登山届の提出が少なく捜索が難航したことを受け、長野県が登山届の提出を義務づける登山安全条例を県議会で可決。登山届を出さなかった場合の罰則はないが、山域を限定せず「小広範囲な山岳」での提出を求めている。全県域が山に囲まれている長野県らしい条例となった■14年7月にすでに北アルプス地区における登山届義務化の条例を制定していた岐阜県は、同9月の御嶽山噴火にともない、御嶽山及び焼岳の一部を届出義務化の対象エリアに設定。また、本年に噴火警戒レベルの導入が決まった白山に対しても、届出を義務づける方針が決定している。年明け早々に県にて検討会議が開かれ、施行は16年度中となる見込み。

山岳保険が登山者たちの常識に 
 少し前まではあまり注目されていなかった山岳保険であるが、ここ数年で保険の数もかなり多くなっている。モンベル山岳保険やJMA山岳保険、JROもあれば、レスキュー費用保険もある。その他、大手保険会社でも同様のパッケージが生まれ、今や登山者のマナーと言われるまでに■ただし、捜索・救助されたときの補償と山岳事故でのケガや死亡時の補償は別ものなのでご注意を。また、大噴火による災害などでは場合によっては保険が適用されないこともある。保険会社によっては、別途、天災保険などの条件を付加していることも。契約する側も、保険の種類と補償範囲をよくよく調べておく必要がある■この保険者数の増加という現象も、山での災害や遭難事故の多様化、また第3次山ブームともいわれる今の時代背景を反映する。

5月9日は、日本の山岳界が記念すべき日 
 1956年5月9日に槇 有恒率いる日本山岳会マナスル登頂第3次隊が、世界で初めてマナスル(8,163m)の初登頂を果たす。来年、2016年はちょうど60周年。マナスル登頂成功は戦後の日本社会に熱狂的に向えられ、空前絶後の登山ブームを巻き起こすなどの社会現象が起きており、言うなれば、日本にレジャーとしての登山が根付くきっかけとなった事象。昨今の山人気のベースは、ここにある■そして8月11日には、いよいよ「山の日」が施行される。国内で16日目の国民の休日となり、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する日」とされている。当日は、日本登山のベース基地でもある長野の上高地で、山の日の記念式典が予定されているとか■山ガールに象徴されるような登山熱が、来年も続くことを願いつつ、そして2016年の山の安全を切望しつつ、大晦日の今日を越えたいと思う。来年もAkimamaをよろしくお願いします!

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