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<書評>アウトドアスキルがあなたを災害から救う。 野口健『震災が起きた後で死なないために』

(2017.05.05)

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 「引きの強い人」というのがいる。勝手に身のまわりでなにかが起こってしまう人だ。お笑い芸人だったら面白いハプニングが、フリーランスライターだったら記事にしたくなるようなトラブル。良し悪しを含めてさまざまなできごとが、向こうからやってくる。そんな人だ。

 野口健さんは、まさにその「引きの強い人」ではないだろうか。もう説明などいらない著名人だが、あらためて。

 25歳のときに7大陸最高峰登頂の世界最年少記録を樹立(当時)し、その後はエベレストや富士山の清掃登山を展開。シェルパ基金の設立、遺骨収集の活動、野口健環境学校の実施、センカクモグラを守る会の設立、ヒマラヤ大震災基金の設立。昨年発生した熊本地震では、テントプロジェクトを立ち上げ被災した人びとを受け入れるテント村を開設・運営していた。

 今回紹介する『震災が起きた後で死なないために 「避難所にテント村」という選択肢』(PHP新書)は、東日本大震災、ネパール地震、熊本地震において、野口さんがどのように関わっていたのかが詳細に綴られている。

 自ら知ったこと、意図せずとも引き寄せた出来事をそのままにしない。いや、できない「質」なのだろう。その積み重ねが、結果的に野口さんの活動になっているのかもしれない。そんな人柄も本書ではよくわかる。

東日本大震災では被災地にタバコを差し入れてバッシングを受け、ネパール地震ではルールすれすれの直接的支援を実行、熊本地震では自治体とぶつかりながらもテント村を開設。決して一筋縄ではいかなかった過程も書かれている。支援活動をするなかで野口さんが知った、「日本の避難所は、ソマリア難民キャンプにも劣る」という事実も衝撃だ。

さらにそれらの災害支援の現場を踏み、「生きるのびる」ことの大切さ、アウトドアスキルがいかに役立つかということを痛感し、最終章は具体的な指南ページになっている。経験を踏まえているだけにアドバイスはとても細かい。

 東日本大震災のときに都内を中心に、アウトドア商品が欠品・品薄になったことはよく知られている。しかしもっと大切なのは、自然体験などの経験。本書でも、ちょっとしたピンチに陥ったら、まったく体が動かなくなってしまった子どもの話が出てくる。

 備えもしかり、アウトドア体験はなにより生きる力になる。ぜひ、平時のうちに読んで読んでおきたい一冊だ。災害はいつやってくるのかわからないのだから。 

震災が起きた後で死なないために 「避難所にテント村」という選択肢
野口健著
PHP新書
¥880+税

(文・写真=須藤ナオミ)

 
 
ライター
Akimama編集部
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