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見どころは富士山! あのダイアナ妃も愛した山岳画家・吉田博の大回顧展27日まで

(2017.08.02)

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「けれども私は自然を崇拝する側に立ちたい」。

 自然を崇拝し、国内・海外の自然を取材する作品のスケッチ旅行を行い、油絵や木版画で名作を残した画家 吉田博 。故ダイアナ妃が執務室に飾っていたのは有名な話だ。
ケンジントン宮殿の中にある執務室のダイアナ妃(英国皇室専門誌「Majesty」1987年」より、写真提供:吉田司)(出典=吉田博展 | 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館より)

 彼のことは昨年の夏にスタートした生誕140周年の大回顧展をアキママでも取り上げたので、覚えている方も多いだろう。その大回顧展は、千葉、郡山、久留米、上田と美術館を巡回し、現在は新宿のあいおい生命ビルの42階にある東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で巡回展としてフィナーレをむかえている。関東近県で見逃していた方には、大変アクセスしやすい場所で開催されており非常に喜ばしいことだろう。私もその1人であり、さっそく会場に行ってきた。
フライヤーは吉田博の代表作買っ『日本アルプス十二題 劔山の朝』『瀬戸内海集 光る海』をそれぞれ半分ずつ掲載している。どちらも実物が見たくてウズウズしていた作品だ。(出典=吉田博展 | 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館より)

 吉田博の人柄や功績を知るには、まずエントランスで観ることができる人物紹介の映像が必見だ。「絵の鬼」と呼ばれた画家の水彩、油絵、日本画、スケッチブックなど、その類まれなる才能の詳細を目の当たりにできるのも見どころのひとつだろう。

 前回のアキママでも紹介させていただいたが、高山を愛した山岳画家としての吉田博を知るのに、ふさわしい本がある。昭和6(1931年)に『高山の美を語る』は、本人が寄稿した書籍だ。現在は、国会図書館のアーカイブとして、誰でもネットで閲覧できる。

  吉田博 著『高山の美を語る』 昭和6(1931年) / 冨士雑記:73~86頁(コマ番 59〜66)(出典=国会図書館のデジタルコレクションより)

 その中に『冨士雑記』という項目がある。この記述によると、どうやら大正3年の8月に富士山八合目の岩室(おそらく現在の吉田口の富士山ホテル)に1ヶ月滞在して、山頂に毎日のように通いスケッチをしていたらしい!? 江戸時代の富士講ブームの後、まだまだ白装束の富士講の人が多い中スケッチに勤しむ吉田さんの姿は、周りから見れば不思議な存在だっただろう。おそらくその時のスケッチから木版画にしたであろう作品が、昭和3年に発表した『御来光』『山頂剣ヶ峰』『馬返し』という題名の作品が存在している。
『富士拾景 御来光』1928 年(昭和3年)(FY MAG 2017より)

 様々な場所から眺めた富士山の作品も多く残している。

『富士十景』と記されたシリーズは、吉田村、船津、河口湖...と馴染みの地名の山梨県側からの作品も多い。その中でも精神医学者のフロイトが所蔵していた『山中湖』は、湖畔に映る逆さ富士が美しい作品だ。そして吉田博作品の中でも大判(80cm近くある大きな版木の作品)で有名な「興津」は、今回の展示会で実物が観れるので、ぜひオススメしたい!

 この木版画の大判作品はもちろん、スケッチ、油絵など、富士山を描いた作品をたくさん残している吉田博は、やはり富士山を愛して描いた作家と言って良いだろう。今回の展示会でも、美術館が所有する油絵の作品を始めてみたが、これもまた素晴らしいかった。

 今回の展示会は、初期から晩年の作品200点を厳選して展示している。後期(8/1~27)がスタートし66点の作品の入れ替えがあったばかりだ。展示リストに後期のみの展示で『富士登山図』なるものがあって、非常に気になっている。
後期のみの展示では「ユングフラウ」など、前期では見れなかった作品も展示される。来館2回目以降は、有料拝観券の提出で割引あり。

 日本よりも海外での評価が高い吉田 博だが、この貴重な機会にぜひ明治~昭和の山岳風景を見に足を運んでいただきたい。

「生誕140年 吉田博展」
◾️場所:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館(東京都新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン日本興亜本社ビル42階)
◾️観覧料:一般1,200円、大学生800円、65歳以上1,000円、中学生以下は無料
 ※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳を提示のご本人とその付添人1名は無料。被爆者健康手帳を提示の方はご本人のみ無料。
 ※2回目以降は使用済みの有料観覧券の提出で、一般800円、大学・高校生500円、65歳以上800円。
◾️開催期間:2017年7月8日(土)〜8月27日(日)
◾️開館時間:午前10時〜午後6時(入館は午後5時30分まで)
◾️休館日:月曜日

 
 
ライター
北村 哲

登山、スノーボード、キャンプ、フェス、旅好きのフリーライター。プランナー/ディレクターとして、アウトドアやスポーツ関連のカタログ、映像、イベント、アーティストコラボ商品などの企画制作も行う。富士山好きで、吉田口の歴史や登山道に詳しい。

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