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変わりゆく八重山の海を撮る。西野嘉憲 写真展「海人三郎」と写真集『海人』

(2019.06.24)

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「今回の写真展では、海人三郎が海で生きる姿から、人間が持つ根源的な生命力や英知を再確認し、また同時に、人と自然の共存のあり方を考えるきっかけとしていただければ幸いです」

 そう話すのは、沖縄県の石垣島をベースとして、人と自然の関わりをテーマに撮影を続ける西野嘉憲さん。「海人三郎」の愛称で知られる石垣島の伝説的な素潜り漁師・下地清栄さんをはじめとする海人の漁に同行し、この度『海人』(平凡社 ¥5,900)という写真集をまとめ上げた。これを記念して7月に東京、9月に大阪で「写真展 海人三郎」が開催される。

西野嘉憲(にしのよしのり)
1969年大阪府生まれ。広告制作会社勤務後、2005年より沖縄県石垣島在住。漁業、狩猟など、人と自然の関わりを主なテーマとする。日本写真家協会会員。
著書に『石垣島 海人のしごと』(岩波書店)、『海を歩く─海人オジィとシンカの海』(ポプラ社)、写真集に『鯨と生きる』(平凡社)など。
日経ナショナル ジオグラフィック写真賞2018 ピープル部門最優秀賞受賞。
今年6月20日に石垣島の海人をテーマにした写真集『海人』を平凡社より刊行予定。

「写真を始めたのは大学生のころ。最初は主に昆虫の写真を撮っていました。固有種が多い琉球列島に魅力を感じ、年に3、4回通っていました。長く通ううちに石垣島の地元の方の知り合いが増え、自然と密接な関係をもって暮らす島の生活にも関心が広がっていきました」

 とくにお世話になったのは地元の農家。被写体にしていた昆虫の生態は農家の方に教えてもらうことが多かったという。そして、西野さんの興味が海にも広がっていき、島で「海人」と呼ばれる漁師に同行するようになる。

「最初は断られましたが、頼み込むうちに何とか漁に同行させてもらえることに。そして漁を手伝っていると、潜水の仕方、潮の流れや干満の読み方、魚の習性を教えてくれるようになりました。それはレジャーのダイビングでは知り得ない、私にとって目から鱗のことばかり。私はすぐにこの世界にのめり込み、海人の家に泊まり込みながら漁に同行し、撮影させてもらうようになりました」

「海人は、四六時中、海のことを考えています。陸の生活のことなんて二の次です。『この季節風が吹けば、そろそろあの魚が、あっちの海にやってくる』『明日は、あのイノー(サンゴ礁)に、何時ごろ行けば、大漁のはずだ』とか。海に出れば、大自然と魚を相手にした知恵比べが待っている。それぞれの海人は、魚や漁場の特性に合わせた漁法をもって漁を行うので、海人は海の生態系のなかで生きていると感じました」

 石垣島の海人の漁に同行させてもらううちに、西野さんは「海人三郎」と呼ばれる下地清栄さんと出会う。

「海人三郎は、その『生態系に生きる』能力が抜きん出ていると感じました。5メートルを超す長い銛を使って素潜りで漁を行うのですが、強靱な肉体と抜きん出た観察力で、他の海人を圧倒する獲物を水揚げします。また、潮流の激しい仲の御神島や尖閣諸島の漁場などでは、水中銃とスキューバ潜水で数十キロもある大物と格闘します。その姿は野生動物の狩りを見ているようでした」海人三郎こと下地清栄さん。還暦を超えた今も、素潜り漁師として別格の漁獲量を誇る。
「長イーグン」を呼ばれる手銛を使い、素潜り漁を行う。
水中銃を使った漁。突いた魚は「ジンナー」と呼ばれるロープに通す。
海中の岩穴で大物を仕留める。魚はコクハンアラ。

 7月、9月の写真展では、撮りためた写真の中から海人三郎を軸にして八重山の海を描き出す。また、写真集『海人』では海人三郎の漁を中心に、追い込み漁を行う老海人の行き様や、他の漁法を行う海人の姿も豊富に収めている。

「海人を追いかけて20年になりますが、石垣島の海は自然環境の悪化、政治情勢などで大きく変わりつつあります。また伝統的な漁法は残念ながら廃れつつあり、尖閣諸島での素潜り漁などは、もう二度と見ることができないかもしれない。写真の記録は、貴重なものであると自負しています」

西野嘉憲 写真展:海人三郎
https://cweb.canon.jp/gallery/archive/nishino-mariner/index.html

●キヤノンギャラリー銀座
■開催期間 7月11日(木)〜7月17日(水)
■開催時間 10時30分~18時30分(最終日は15時00分まで)
■所在地 東京都中央区銀座3-9-7 トレランス銀座ビルディング1階
■休廊 日曜日・祝日
■ギャラリートーク 7月13日(土)16時00分〜
※ゲストにアートディレクターの三村 漢氏をお迎えします。

●キヤノンギャラリー大阪
■開催期間 9月5日(木)〜9月11日(水)
■開催時間 10時00分~18時00分(最終日は15時00分まで)
■所在地 大阪市北区中之島3-2-4 中之島フェスティバルタワー・ウエスト1F
■休廊 日曜日・祝日
■ギャラリートーク 9月7日(土)16時00分〜
※ゲストにアートディレクターの三村 漢氏をお迎えします。

 
 
ライター
Akimama編集部
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