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ネイチャーフォトグラファー・柏倉陽介 「街の喧噪のなかにある人々に、自然がもつ静けさを伝えたい」

(2015.06.27)

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パタゴニアのトーレスデルパイネ国立公園への撮影行にて。「いい瞬間」が訪れたら、パックを放り投げてでも撮りに行く。トリコニは信用できるタフな相棒でしたね」

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「学生時代は激流と遠征にばかり取り組んでいました。匍匐前進で富士山に登る、なんて挑戦もしてました(笑)」

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西表島で撮ったマングローブの写真。この写真はその後、国際写真賞(IPA)に入選

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最近の受賞作。今年の国際モノクローム写真賞でLandscape Photographer of the Yearを受賞

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「いちばん気に入っているのが、フロントの大型ファスナー。この直下にケースを入れることで、山中でも素早くレンズ交換ができます」

アドベンチャーレースのカメラマンとして
キャリアをスタートさせて以来、
大自然のなかに身を置き続けている柏倉さん。
辺境への旅に魅入られた男の撮影哲学とは?
  

大学探検部で大自然と出会う

「私の場合、子供のころから自然が好きという感じではありませんでした。大学に入るまではまったく興味もなかった。それを変えたのがふとした拍子にのぞいた大学の探検部。そこで部員たちが世界中で撮ってきた写真を見せられたんです。スケールの大きな自然に衝撃を受け、その場で入部を決めました」

「私がはじめて連れ出された遠征先がタクラマカン砂漠でした。『今年の遠征先はタクラマカン。お前も行くよな?』『はい』というやりとりを先輩としただけで、あれよあれよといううちに、気づけば我が身はタクラマカンに。右も左もわからず、先輩について行くばかりの遠征でしたが、圧倒的な星空を見て、すっかり辺境の旅の虜になってしまいました」 
 

大学をドロップアウト。そして本の世界へ

「学生時代はずっとラフティングや各地への遠征に明け暮れていました。海や山、川に出かけるばかりで単位はちっとも取得できない。結局、大学は中退することになりました。途方に暮れていた私に声をかけてくれたのは、今はなくなってしまったアウトドア雑誌の編集部でした。編集者としての修行をするなかで『写真も撮れるようになったら、一人であちこちに取材に行けるようになる』と思いつき、なけなしのお金でカメラを手に入れたんです」

「はじめての取材先に選んだのは、学生時代から通っていた西表島でした。その取材で一枚だけ、とてもいい写真が撮れたんです。斜光にマングローブが照らし出され、背景は黒く影になっている。この写真を撮った時、撮影とは光を写し撮ることなのだと知りました。そこで俄然、写真が面白くなったんです。その後、4〜5年ほどはアドベンチャースポーツや登山雑誌のルポを中心に写真を撮るようになりました」 

 

「動」の世界から「静」の世界へ

「展開の早いアドベンチャースポーツの撮影には鍛えられましたね。選手の先回りをして背景を決め、ひたすら選手が来るのを待つ。選手が走り抜けるのはほんの数秒です。そのなかでも『いい瞬間』は本当にまたたくほどしかない。動きを予想しながら、いいタイミングでシャッターを切る。撮影したら、また次の撮影ポイントへと大急ぎで移動する。どんな天気のなかでも移動と待機、撮影を繰り返し続ける。また『いい瞬間』が突然訪れることもあります。そんなときはいちばんよい背景を瞬時に判断してシャッターを切る。レースの撮影では、雨に打たれ泥にまみれても待ち続ける忍耐力と瞬発力が培われましたね」

「アドベンチャースポーツの撮影が認められたことで、少しずつ、ずっと撮りたかった野生動物の撮影の仕事も舞い込みはじめました。被写体は人から動物に変わりましたが、動きの早いスポーツを撮っていたおかげで、苦労することなく、移行できましたね。合わせて取り組みはじめたのが、以前は背景だった『自然』そのものを写し撮ること。霧がかかった山や暗く沈んだ森、あるいは動物たちの生態など、都市生活とは違うスピードをもつ自然の姿を表現したいと思っています」

「また、写真を撮るときは、見た人を常に驚かせたいとも思っています。『これ、どこ?』『これ、なに?』と思わせたい。写真家には、自分の心象風景を写真に投影する写真家と、『そこにあるもの』を撮る写真家の2通りがあると思うのですが、私は後者のタイプです。たとえそれが良いものでも悪いものでも『これ以上はない』という瞬間や風景を切り取って記録していきたいですね」 
 

写真家に必用なスペック

「高山やジャングルなど大自然のなかで撮影してきましたが、私の場合、そこへ行くことが仕事の第一歩。生活道具と機材はバックパックに詰めて自分で担いで出かけていました。長く愛用していたのがグレゴリーのトリコニという大型パック。布地が丈夫で、正面のパネルから素早くレンズへアクセスできて、肩ではなく腰でしっかりと荷重を支えてくれる。カメラ機材メーカーのパックではこの3つの条件を満たすものが少ないんです。ラフに扱えて、いい瞬間を逃さずに済む操作性があり、楽に運ぶことができる。これは野外での撮影において、絶対に必要な性能です。先代のトリコニはこの3つの条件を満たしていたので、重宝しましたね。今はトリコニの流れを組むバルトロを使っていますが、バルトロはトップリッドのポケットが2つに分かれて内容物が整理しやすいことや、ウエストベルトのポケットのひとつが防水ポケットになっている点もいいですね。目当ての道具を素早く取り出せることは、撮影に使う上で重要です」

「これはバックパックだけの話ではないのですが、最近のアウトドアギアや撮影機材は以前のものより格段に軽く、コンパクトになり、また使いやすくもなっている。今の私には20代の頃に背負っていたような大きなパックを担ぐ体力はありませんが、道具の進化がそれを補ってくれています。最近、撮影機材をソニーへと一新したのですが、これによって、カメラ本体とレンズ、三脚の大きさと重さを約半分にすることができました。以前は機材を収めるために、シュラフやテントは軽量で簡易なもので我慢していましたが、今なら快適な道具と機材が新しいバルトロにすっぽり収まる。旅の虫を騒がせられています」 

 

荷物を携え、向かう先

「タクラマカンではじめて見た砂漠の星空。あの旅以来、世界各地へ赴きましたが、あれを超える星空を見たことがない。思い出のなかで美化されているからだ、と言われればそうかもしれませんが、いつか、その美化された分さえ飛び越えるような星空を写したいと思ってきました。実は最近、『あるいは今なら』と考える自分がいるんです。そろそろ、あの頃のようにバックパックに一切合切を詰め込んで、タクラマカンを訪れてもいいのかもしれません」 
 

Nature Photographer 柏倉陽介

雑誌や広告を中心に、自然に関わる分野を幅広く撮影。自然風景、自然と人々、動物の保護施設などをテーマに撮影している。モノクローム・フォトグラフィー・アワード風景部門年度賞受賞ほか、ナショナルジオグラフィック国際フォトコンテスト、レンズカルチャー「地球写真賞」、インターナショナル・フォトグラフィー・アワード、ネイチャーズ・ベスト・インターナショナル・アワードなど主要な国際写真賞に多数入賞。米国立スミソニアン自然史博物館にも写真が展示される。
URL http://www.yosukekashiwakura.com
URL http://www.naturephotoguidejapan.com


GREGORY/バルトロ75

¥38,000+税
■トルソーサイズ:S、M、L
■容量:S=71㍑、M=75㍑、L=79㍑
■重さ:S=2.32kg、M=2.42kg、L=2.52kg
■カラー:ニューブルー(写真)、スパークレッド、シャドーブラック

 
 
ライター
Akimama編集部
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