• 山と雪

【やってみた】南魚沼市で再確認した、ワーケーションを良き旅に仕上げる4つの要素

2022.07.07 Thu

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林 拓郎 アウトドアライター、フォトグラファー、編集者

 冬にやってみたワーケーション体験が、手応えじゅうぶんすぎた。

 新潟県南魚沼市に滞在し、旅先でこなせる仕事は旅先でこなす。その姿勢で臨んだ日々は、スノーボード三昧ながらも細々した仕事の用事を何一つ後回しにすることなく、休みが終わったらアレもコレもしなければならない、というプレッシャーの芽を小さいうちに摘み取ることができた。そのおかげで滞在中も滑ることに集中し、自分の時間を自由な気持で目一杯楽しむことができたのだ。

https://www.a-kimama.com/culture/2022/02/119940/
【やってみた】南魚沼市で実感した「ワーケーション」の理想形

 ワーケーションは「仕事しながら休暇なのか、休暇中に仕事なのか、どっちにしたって混ぜちゃったらスッキリしねーなー」と思っていた。けれど、やってみるとそれは大きな誤解であり、自分の時間を効率的に調整しながら仕事と遊びとを両立させるという、なんだか賢い時間の使い方を形にしたものだったのだ。

 

夏のワーケーション。六日町再訪

 あれから半年。今年の関東はとりわけ暑い。対して、新潟はさぞ涼しかろう。たとえ気温が高くとも、その暑さの質は別物のはず。そして高原の涼風も、小川のせせらぎも、温泉上がりの冷たい水道水も、すべてが滞在の喜びに直結するだろう。

 というわけでワーケーション+避暑という魅力的なテーマを念頭に、冬にお世話になった宿『六日町ヒュッテ(https://www.muikamachihutte.com)』に連絡。
「来週、空いてますか?」
「だいじょうぶ、空いてますよ〜」
「夏って、何が楽しいかなぁ。釣り? 温泉めぐり?」
「うちで新しく『ウオヌマダウンヒルサイクリングツアーズ』ってのを始めたんですよ。車で山の上まで行って、自転車で下り坂だけ楽しむ形なんですけど、行きます?」
「行く行く〜〜」
というわけでプラン決定となったのだ。

 東京から新幹線で70分。乗り換えのために降りた越後湯沢で、すでに鬱陶しい暑さはなかった。空気に湿り気はあるものの、都内のそれとは大違い。ああ、これだけでも避暑だなぁと嬉しくなるほどだ。

 そこから上越線に乗り換えて六日町まで。車窓には田んぼが広がり、時に目の前に、そして谷の向こうの山に草原が広がる。夏のスキー場だ。頭の中の地図に照らし合わせながら、石打、上国、舞子と確認していく。そのたびにあそこの沢を滑ったな、こっちの斜面は気持ちよかったなと、冬の思い出が蘇る。季節を飛び越えて同じ場所に来ることには、こうした立体的とも言える楽しさがある。

 

イイトコどりの自転車ツアー

『ウオヌマダウンヒルサイクリングツアーズ』は宿泊していた六日町ヒュッテが主催する自転車のツアーだ。車に自転車を積んで、標高900mを超える魚沼展望台や清水峠などにアクセス。そこからガイドさんのリードの元、約15kmほどをクルージングしていく。途中にじゃっかんの上りはあるものの、99%が下り坂。標高差700mあまりを軽快に、爽快に、ひたすらのんびりと流していく。

軽い力でしっかりかかるディスクブレーキのおかげで、のんびり流すのも自由自在。誰もが不安なくクルージングを楽しむことができる。

 参加して感じたのは、いわゆる自転車ツアーとは楽しみ方の方向性が全く違う。どちらかといえばゲレンデスキーに非常によく似ているということだ。登りは動力で楽をして、下りのいいところだけいただく。この形は夏のスキー場を利用したダウンヒルなどには見られるが、一般道を使えば誰でも参加可能になる。

人と自転車をまるっと積んで、車で峠の展望台へ。そこから颯爽と走り下るツアーは、自転車とヘルメットのレンタル、保険料込みで平日5,000円、土日5,500円(各税込み)。申込みは六日町ヒュッテまで。

リフト降り場のデッキから、魚沼の水田地帯を望む。「あの雲がなければ、真正面に割引山と前巻機山が見えるんですけどね〜」

 途中、ルートは上越国際スキー場のゲレンデの中を通る。その場所からは魚野川流域に広がる一面の水田を望み、谷を挟んだ向こう側には万太郎山や谷川岳、巻機山や八海山といった峰々が連なる絶景を堪能することもできる。景色、風、スピード、坂を下る感覚といったすべてが気持ちをワクワクさせてくれる。

 そうして下界にたどり着くと、そこには車がスタンバイ。そして
「もう一本行きますか〜」
 という段取りなのだ。真夏でも、下りばっかりだから汗もかかない。ひたすら自転車の気持ち良さを追求した、贅沢なツアーなのだ。

2本目に行く前に、ちょっとだけおやつ。松月は昭和レトロな雰囲気のケーキ屋さん。こうした佇まいのお店を訪ねることも、旅の楽しみのひとつだ。食べているのはリッチバニラソフト(300円)。その他に雪室アイスコーヒー(300円)やサンデー(3種類 380円)、ケーキ屋さんのかき氷(400円〜)なども。

 

どこへでも自分の好きなところへ

 今回痛感したのは、遊びには2つの種類があるということだ。予定しておくべき遊びと、自分の気分のままで楽しめる遊びだ。

 予定が決まっている遊びはきちんと計画を作って、この日の何時からはこれで遊ぶ、としておく。こうしておけば仕事にも支障は出ない。というわけで『ウオヌマダウンヒルサイクリングツアーズ』は、オンラインミーティングが入っていない日に予約しておいた。

 一方、仕事には流動的な部分もある。思っていた以上にサクッと片付いたり、予想以上に手間取ったり、突然の連絡が入ってフォローが必要になったりと予定が読めないこともしばしばだ。こうしたケースにも、自分なりのペースで遊べるものがあるといい。図らずも今回、こうした予定の遊びと自分なりの遊びの、どちらもが自転車だった。

 南魚沼市まちづくり推進機構(https://mmdo-machi.org)では、JR六日町駅の中で「里山ミニクル」というレンタサイクル事業を展開している。冬ならどこに行くにもレンタカーが必要になるが、夏なら自転車で出かけ、買い物をし、ぷらぷらと気ままな散歩を楽しむことができるのだ。

六日町駅東口の観光案内所に隣接して「里山ミニクル」の貸し出しオフィスが設けられている。自転車はすべて電動アシストタイプ。料金は2時間700円、4時間1,200円、1泊2日2,000円と非常にリーズナブル。予約はhttps://mmdo-machi.orgから。

ちなみに、里山ミニクルの貸し出し窓口に隣接して、コワーキングスペースも設けられている。

六日町駅からは20分ほど。電動アシスト自転車を駆って、三国街道塩沢宿の「牧之通り(ぼくしどおり)」へ。

牧之通りは雪国の歴史と文化を活かすまちづくりとして取り組まれており、統一感のある町並みの中に造り酒屋やカフェ、飲食店、本屋さんなどが並んでいる。

牧之通りにある青木酒造では、酒造りに使う仕込み水でサイダーを作っている。柔らかな甘味は、真夏にもピッタリ。290円。

 この、自転車をとり入れたことで行動範囲が一気に広がるという開放感は、子供の頃に体験したアレとまったく同じ。そしてそれは寄り道が増え、訪ねる距離が伸び、目にするものが多くるという意味で、冬に比べると街を眺める解像度がグッと上がることにもつながっていく。そのぶん、ワーケーションの場所として選んだ地域への親しみやすさや愛着も増してくるのだ。

旅に出たらスーパーに寄るのが鉄則。というわけで各種調味料やお菓子の他、地場産のポップに引かれて野菜を購入。

ほうれん草、しめじ、山竹の子を買ってから考えた。オレはコレをどうしようとしているのか? まぁお土産に持って帰るか、くらいの軽い気持ち、ではある。

メールで原稿の修正指示が入ってしまった。そこで宿に戻ったら、なんと! 六日町ヒュッテではピザランチを計画しており、その試作品を作ってみるところだという。「オレ、竹の子あるよ」「それも焼きましょう」ということになって、急遽地場産の野菜たちはピザの仲間入り。

で、こんなピザが焼き上がってしまったのだ。野菜を買った時には想像もしていなかったスバラシイ展開。山竹の子のシャクシャクした食感を堪能しながら、旅先の動きはまさに予測不可能だなぁと実感。

 

ワーケーション充実の4項目

 改めて感じたのは、ワーケーションの充実度はメリハリにあるということだ。オンとオフの切り替えを明確にする。そのためにはビーチチェアや木陰のベンチといったリラックスできる場所も魅力的だが、仕事をする時には本気で集中できる環境があることが不可欠なのだ。

仕事は仕事でメッチャ集中する。その環境を作っておくことはワーケーション成功の必須条件だ。

そして夕暮れの心地よい風の中、山を見ながら仕事する。この体制もまたワーケーションには欠かせない。

 そしていちばん大事なのは、その場所に行く意義だ。興味のあるアクティビティと仕事の都合だけで決めるなら、ワーケーションの目的地は数限りなくあるだろう。だからこそ、こんな項目をおさえておくことで、その充実度はグンと上がるのだ。

1)宿/主に仕事の成果に大きく影響する。そして家族連れの場合は家族の満足感にも直結する。決して高級な宿が良いというわけではなく、仕事と遊びを軽快に切り替える、その自由さを理解してくれる宿がオススメ。

清潔で行き届いている。そのことが滞在の質をグッと上げてくれる。

静かなリビングで本を読んだり話をしたり。気ままな時間を過ごせることも、宿選びの大事な要素。

2)食べ物/日常生活から離れて出かけるからには、そこでこそ!というものを味わいたい。この時期なら何が美味しいのか、食べたいものの旬はいつなのか。そうしたことを考え合わせながらプランを練れば、充実度は爆上がりだ。

六日町ヒュッテのある日の朝食。さすが米どころ。お米は土鍋で炊いて提供される。白米だけでペロリといける美味しさなのだ。

その美味しいお米を直接買うこともできる。実際に食べて、味を確かめているので、自信を持ってお土産にできる。

3)温泉/アクティビティ後だけでなく、仕事の合間の空き時間を優雅に心地よく過ごすためにも必須。宿のお風呂や外湯、そして湯巡りできる町など、お湯が近くにあることは重要だ。

六日町ヒュッテの場合、館内にかけ流しの温泉がある。これはワーケーションの宿としては非常に魅力的だ。

お湯は屋外の半露天のお湯から引き込まれる。外気を楽しみながらの入浴は、また格別。

4)景色/忙しく遊び、仕事をしたとしても、その合間に目にする山の姿、川の様子に心が癒やされることは多い。景観は必須ではないが、良いことが滞在の価値を高める。それは、旅を大きく包み込む包装紙なのだ。

六日町ヒュッテのウッドデッキからは、八海山を望むことができる。山の左隅に見えるのは八海山スキー場だ。

ウオヌマダウンヒルサイクリングツアーズの出発点・魚沼展望台から六日町を望む。広く平らで、豊か。

 

 遊びにとり入れたいアクティビティがあることはもちろん、気に入った宿がある、美味い食べ物がある、入りたい温泉があるなど。なぜそこに行きたいのか、なぜその地域で休日を過ごしたいと思っているのかという気持に彩りを添える部分。そこに答えがあれば、ワーケーションとアウトドアクティビティは、いっそう大きな親和性を示すだろう。
 


■オンラインセミナーのお知らせ
 テレワークの機会が増え、仕事と予価の考え方も変わりつつある。そこで南魚沼市では、首都圏からクルマでも2時間半でアクセスできる利便性をいかしながら、テレワークとアクティビティとの両立を提案。今回は夏だけでなく冬の楽しみ方も知る3名の移住経験者が「遊・食・住」をテーマに、南魚沼市でのテレワークについて紹介する。

日時:2022年7月20日(水) 19:00〜20:30
申し込みフォームはこちら
https://www.city.minamiuonuma.niigata.jp/form/inquiry290/

主催:一般社団法人南魚沼市まちづくり推進機構
運営:自然体験村
問い合わせ:自然体験村/武宮(kigurumi41244124@gmail.com)

 

■南魚沼市テレワーク/ワーケーション 現地交流会
 オンラインセミナー参加者優先で、現地交流会にも参加可能。南魚沼市内のテレワーク環境や現地での余暇と仕事の時間配分、無料のアクティビティなどを実際に体験することができる。

日程: 2022年8月27日(土) 8:00~16:00※新型コロナの影響によって予定が変更となる場合があります。

定員:20名(オンラインセミナー参加者優先・応募人数が多い場合は抽選となります)
参加費:無料(アクティビティ参加)
※現地までの往復交通費、昼食等飲食代、現地駐車場代については各自ご負担ください。
集合:8:00 南魚沼市民会館(南魚沼市六日町865)
解散:16:00 南魚沼市民会館
申込方法:オンラインセミナー時にお知らせ致します。

主催:一般社団法人南魚沼市まちづくり推進機構
運営:自然体験村
アクティビティーの種類:自転車ダウンヒルツアー/八海山トレッキング/ルアーフィッシング/アウトドア料理体験/SUP

8月27日のタイムスケジュール:
    8:00 集合(南魚沼市民会館)
    8:30 各アクティビティへ参加
   12:00 各アクティビティ終了
   13:00 昼食(六日町ヒュッテでピザなどのアウトドアランチ)
   14:00 意見交換会
   15:00 市内テレワーク施設体験等
   16:00 解散(南魚沼市民会館)

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