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「自然な暮らし」の実用書が豊富。農林業者御用達の出版社から、 田舎移住についての注目本が登場
2024.07.16 Tue
大村嘉正 アウトドアライター、フォトグラファー
「農文協」をご存じだろうか? 正式名は「農山漁村文化協会」で、農林業や農山村関係のネタを得意とするメディアであります。月刊『現代農業』の版元といえば、「あれか~」という人も多いはず。
自然な暮らしを望む人には絶好の実用書がずらり。
この、第一次産業にガチな出版社ですが、アウトドアピープルに福音をもたらす出版社でもある。野山の幸や自給自足など、田舎で継承されてきた自然と共生する知恵の本が目白押しです。この半年の出版物から、アウトドアフィールドのそばで暮らすことを夢見る人向けの2冊を紹介しましょう。
『 田舎の空き家活用読本 』
『田舎の空き家活用読本』は111ページ、定価1800円+税。
田舎移住での障壁の一つが家探し。自然豊かなほどその地域に不動産屋はないし、空き家があっても入居できるか、すぐに住み始められるかは別の話。町の常識は通用しません。
この本は、田舎で住居を見つけるまでの過程や、家の改修・活用などを紹介しています。なかでも役に立つのが、田舎移住希望者の後押しとなる、または移住を断念させる情報。田舎の家探しや定住ではこんな目に遭う、こんなことする羽目になる、こんな行政制度や手立てやテクニックがあるなどを網羅していて、田舎移住の入門書として必要充分な内容になっています。
『田舎の空き家活用読本』の目次。
そして、もう一冊は、田舎への移住後に役立つ本です。
『 自分で地域で手づくり防災術 』
『自分で地域で手づくり防災術』は127ページ、定価2000円+税。
自然豊かな地域で暮らすとは、自然災害が身近だということ。この本は、個人や隣近所という小さな単位で取り組める自然災害への備えや対処方を解説しています。
土砂災害や水害から住民を守るのは行政の仕事、という認識の人も多いですが、巨大ダムや砂防ダムがあるのに災害発生という事例は後を絶ちません。この本で着目しているのは、巨大公共事業頼みではない防災。ダムのかわりに森や田んぼの保水力を利用したり、昔ながらの水害防備林を見直すなどです。これって自然環境にも優しいんですよね。
また、災害時に外部からの助けが届くまでの切り抜け方も掲載しています。カーバッテリーを緊急電源化、身近なもので石鹸を作る、野山の「防災植物」のおいしい食べ方など、普段の暮らしでも試してみたい内容です。
『自分で地域で手づくり防災術』の目次。
農林水産関係者じゃなくても注目したい農文協の実用書。「石積みの入門」など田舎暮らし必携の技術書や、「どぶろくをつくろう」「手づくりビール読本」という攻めた本(自家醸造は日本の法律に反する)、「消えた山人 昭和の伝統マタギ」など、探せばアウトドア派向けの一冊に出合うことでしょう。