• カルチャー

「お堅い、理系、小むずかしい」イメージのあの月刊誌、じつは探検・冒険記事の宝庫なのです。

2023.09.30 Sat

大村嘉正 アウトドアライター、フォトグラファー

 2023年7月号で創刊135周年を迎えたのが『ナショナルジオグラフィック』誌。1888年に「地理知識の向上と普及」を使命に設立された非営利団体「ナショナルジオグラフィック協会」の会報誌で、1995年4月号(その前に創刊準備号もある)からは日本版も発行されている。

 掲載される記事は自然科学、歴史や考古学、文化人類学、政治・宗教・国際紛争や戦争など。つまり、まじめで小むずかしい雑誌だが、アウトドア派が注目すべきは協会誕生時の理念。「地理知識の向上と普及、という協会の使命を果たすには、困難な探求を行い、未知の領域に挑む必要がある(※)」という考えは創刊以来受け継がれ、探検・冒険の記事はこの雑誌に欠かせないものになっている。洞窟探検、自転車旅行、川下りなど、登山以外の探検・冒険記を読める日本語の月刊誌はこれぐらいだろう。
(※ナショナルジオグラフィック日本版2013年6月号p38より)
アラスカ山脈で、自転車を漕いで押して担いだ記事。
 たとえば、このような記事。
・道なきアラスカ山脈の原野をマウンテンバイクで1250キロ走破(1997年5月号)
・北極単独横断2000キロ(2002年3月/ノルウェーの冒険家ボルゲ・オウスランド)
・世界最大の洞窟を踏破(2011年1月)
・南極の未踏峰に挑む(1998年2月号/『空へ』のジョン・クラカワ―が執筆)
 限られたページ数ゆえに、「もっと読めたら」という飢餓感は残るが、記事の多くは、自然相手にどんなことができるかのヒントにみちている。思考と想像力の天井を押し上げ、世界はもっと楽しめると、われらを焚きつけるのだ。
こんな山が南極に!
 日本版の記事の中から、冒険や探検、アウトドアスポーツに関する記事をリストアップしてみた。定期購読すれば2011年1月号以降のバックナンバーをWEB版で読むことができる。それ以前の号だと、記事の概要についてはナショナルジオグラフィックのサイトの雑誌欄から読める(定期購読不要)。全文と写真を欲するなら古本屋を巡ってみよう。
北極単独横断男、ボルゲ・オウスランドによる、南米パタゴニア氷床横断の記事も。

■ナショナルジオグラフィック日本版の
冒険・探検・アウトドアスポーツ記事リスト


●空
1995年5月 復元プロペラ機再び大空へ・英国から豪州へ1万8000キロの冒険
1997年9月 気球で挑む、無着陸世界一周
2000年5月 旧式複葉機でアフリカ冒険飛行

●島
2001年6月 南米パタゴニアの無人島探検
2021年11月 地球最南端の木を探し求めて(オルノス島)

●川
1996年11月 中国雲南省の激流に挑む
1996年12月 アメリカ紀行・シェナンドア川
1997年4月 米国紀行・イエローストーン川
1997年6月 アメリカ紀行・文豪の心を宿すフォックス川
1997年11月 決死の中央アジア激流下り
1998年1月 南部の心を映すアルタマホ川
1998年7月 北の大河ユーコンを下る
1999年6月 米国東部ニュー・リバー峡谷の旅
2000年12月 青ナイル探検・800キロの川下りに挑む
2003年8月 アマゾン奥地の謎の先住民
2006年5月 ミャンマーの希望の大河・イラワジ川紀行

●キャニオニング
2000年7月 米国西部・大峡谷地帯を行く
2011年10月 深き峡谷を下る(オーストラリア、ブルー・マウンテンズ国立公園)

●自転車
1997年5月 アラスカ山脈を自転車で走破
1997年12月 オーストラリア自転車旅行(第1部)
1998年2月 オーストラリア自転車旅行(第2部)
1998年4月 オーストラリア自転車旅行(第3部)

●砂漠
2002年12月 サハラ砂漠縦断・2400キロに及ぶ過酷な旅

●海洋
1998年5月 世界一周ヨットレース
1998年11月 マウイの怪物波ジョーズ
2004年5月 海洋探検家バラード・黒海と地中海に挑む
2013年6月 深海への挑戦(ジェームズ・キャメロン)

●極地
1995年4月 北極横断1万4000キロ・カヤックと犬ゾリで体力の限界に挑む
1996年1月 北極海横断116日
1996年10月 極北のバフィン島縦断
1997年8月 極北の放浪者カリブー(故星野道夫の作品の再録)
2002年3月 北極単独横断2000キロの大冒険
2009年1月 北極探検・二つの物語第2部/ナンセンの影を追って
2011年3月 アラスカぐるっと176日(アラスカの原野を自分の足とスキー、ゴムボートだけで一周、7530キロの旅)
2012年1月 北極圏の犬ぞり警備隊
2023年8月 北極探検隊失跡の謎を追う

●徒歩
2000年10月 アフリカ徒歩横断 第1回 2000キロ密林の生態を記録
2001年3月 アフリカ徒歩横断 第2回、緑の魔境
2001年8月 アフリカ徒歩横断 最終回 3200キロを踏破
2013年12月 人類の旅路を歩く第1回 全長3万3000キロ 人類の旅路を歩く
2014年7月 人類の旅路を歩く第2回 アラビア半島 失われた記憶の井戸
2014年12月 人類の旅路を歩く第3回 「約束の地」レバントを歩く
2015年3月 人類の旅路を歩く第4回 戦火を逃れ 国境を越えるシリア難民
2016年4月 人類の旅路を歩く第5回 アルメニア 虐殺の影
2018年1月 人類の旅路を歩く第6回 精霊が宿るシルクロードを行く
2018年9月 人類の旅路を歩く第7回 山を越え、時を超える ワハーン回廊を歩く
2021年11月 長い旅が教えてくれたこと(人類の旅路を歩く)
2023年7月 手作りの世界を歩く(人類の旅路を歩く)

●地下
1995年9月 地底1500メートルの大洞窟に挑む
1998年9月 ボルネオの地下洞窟
2003年4月 女性科学者が挑んだオマーンの巨大洞窟
2005年5月 最深記録に挑む洞窟探検隊
2006年9月 パプアニューギニアの地下河川
2008年11月 潜入!巨大結晶の洞窟
2010年8月 水中洞窟・隠された「過去」
2011年1月 世界最大の洞窟を踏破した!
2011年2月 ようこそパリの地下世界へ
2017年3月 ウズベキスタン・底知れない洞窟へ
2019年5月 ボルネオ島・前人未到の洞窟を探る
2021年6月 クリジナ洞窟・美しき地下世界
2023年7月 謎の人類を探して洞窟の奥底へ

●歴史的探検(家)・冒険(家)
1995年創刊前準備号 グランド・キャニオンに挑んだ男(ジョン・ウェズリー・パウエル)
1996年5月 カナダを“測った”冒険家
1998年11月 南極探検家シャクルトン、奇蹟の生還
2005年7月 中国・明代の大艦隊、アフリカへ大遠征
2006年11月 不可能への挑戦・登山家メスナー
2009年1月 北極探検・二つの物語第1部/氷の世界の1000日(フリチョフ・ナンセン)
2011年9月 南極点に初めて立った男(アムンセン)
2013年1月 100年前の南極探査・未踏の極地へ 
2015年4月 植村直己・北極点へ、ともに
2015年4月 関野吉晴・探求する人生

●山
1996年2月 氷河の底に挑む冒険家たち
1996年4月 標高6200mのヒマラヤの岩塔に挑む
1996年12月 氷壁に挑む冒険者たち
1997年8月 ヒマラヤの氷壁に挑む  
1997年9月 エベレストの危険な魅力
1997年12月 ベトナム・ハロン湾の岩島に挑む
1998年2月 南極の未踏峰に挑む
1999年1月 極北の島バフィンの岩峰
1999年10月 エベレスト初登頂の謎
2000年3月 パタゴニアの冬の氷壁に挑む
2000年12月 中国西部・奇岩のアーチ(シップトンズアーチ)に初登頂
2003年4月 チベットの崑崙山脈を踏破(リヤカーで踏破)
2003年5月 エベレスト初登頂50周年記念号 
2003年7月 英国の山岳レース
2004年8月 南パタゴニアの大氷原・525キロを縦断する
2008年1月 氷の戦士たち ポーランド冬季登山隊
2008年11月 米国のトレイルを歩く
2011年5月 ヨセミテ巨岩の絶壁に挑む
2012年4月 K2、頂をめざして
2013年6月 満員のエベレスト
2013年9月 南極の未踏峰に挑む
2014年1月 誰も知らないクライミングの楽園へ
2014年11月 悲しみのエベレスト
2015年9月 ミャンマー・伝説の最高峰カカボラジ
2019年3月 体一つで巨岩に挑む(アレックス・ホノルド)
2020年7月 エベレスト・幻の初登頂
2020年10月 米国の国立トレイル・雄大な自然を足の裏に感じて
2022年2月 冬のk2に挑む
2022年4月 南米ギアナ高地・最後の秘境へ

●その他
1996年4月 清流に心躍る、マス釣りの楽しみ
1998年1月 オランダの風物詩スケート
1998年10月 新生アメリカの自然観察誌(ルイスとクラーク)
2000年1月 ヒッチハイクでアメリカ再発見
2013年9月 失敗に学ぶ・成功に欠かせない苦い体験
2013年12月 スキーの起源を訪ねて
2020年6月 米西海岸・スケボー天国
2023年1月 変化の風はボードに乗って(ボリビアの女性スケボー集団)

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