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探検に防災に。MSRの浄水器「オートフロー グラビティーフィルター」

(2016.04.25)

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 仲間と楽しんでいる「南の島無人地帯踏破行」で、2年ほど前に導入されたのがMSR「オートフロー グラビティーフィルター」。

 日本の山野は総じて、ある程度きれいな水がとりやすいものですが、その島の沢は細かい砂泥が混じっていることが多く、ときにはマングローブ帯の泥混じりの溜り水を調理に使うこともあり、浄水器が導入されました。

 もちろん無人地帯ですから、少々水が濁っていても人間由来の汚れは皆無(イノシシ由来の汚れはあるけれど……)。安全面だけでいえば煮沸してしまえばよいのですが、毎度の白飯に何か混じっているよりは、白いほうが気持ちいいのも事実です。
その島の典型的な川。海水の影響を受けないところで水を汲んでも、白く泥で濁っている

 果たして、私たちは浄水器の導入によってきれいな飲料水を手に入れることになったのですが、アイテムの紹介の前に、ここで安全な水の作り方について簡単に整理しておきましょう。

 水に含まれている汚れを大別すると、およそ3種類に分けられます。

①砂泥や落ち葉の屑などの比較的大きな不純物
②人体に悪影響を及ぼし得る原生動物や微生物
③化学物質、有害な鉱物

①は水を汲んでおいて沈殿させるか、細かいフィルター状のものを通して濾過することで除去できます。②は細かいフィルターで濾すこともできますが、煮沸するのが確実です。そして難しいのは③。鉱物が流れ込む沢や、人間由来の汚れが含まれている場合は、これらを吸着するような機構が装備された浄水器でないと取り除くのは困難です。

 人間活動のない地域の沢は化学物質に汚染されている可能性が低いこと、また化学物質に対応する浄水器は水の濾過にちょっと手間がかかるとの理由から、①と②を除去できて、大人数での行動時に使い勝手のよいオートフローグラビティーフィルターを使っています。
システム一式。赤いソフトタンクに水を入れ、水圧によってフィルターに水を通す。地面に置かれた水筒(ドロメダリーバッグ)は別売

 グラビティーフィルターの核心部は、中空糸膜を取り入れたフィルター。生水をこのフィルターに通すことで不純物を濾し、浄水を作ります。

 上部側にくるのは、ドライバッグ型のソフトタンク。ここに水を貯めて吊り下げることで、水圧によってフィルターへと水を送り込みます。

 フィルターを透過した水は、チューブを通して任意の容器へと送り込めば作業完了!
赤いソフトタンクの容量は6ℓ程度(目盛りは4ℓまでだがもっと入る)。同社のドロメダリーバッグ6ℓと合わせると使いやすい。定期的に浄水側から水を逆流させることで、フィルターの目詰まりはある程度解消できる

浄水側の接続部は、さまざまな容器に対応する形状。ナルゲンボトルやプラティパスのソフトボトル、ペットボトルにも対応する

 オートフローはその名のとおり、従来の浄水器のようなポンピング作業が必要ありません。キャンプ地に着いたら水を汲み、ほかの作業をしているうちに4〜5ℓの水が作れることが大きな特徴です。

 また、ほかのメーカーの重力流下型の浄水器と比べて処理速度が速いのも魅力。1分間で約1.75ℓの水を濾過することができるので、行動中に見つけた沢で小休止中に浄水を作ることもできます。

 生水を汲みながら歩く旅で大活躍するオートフローですが、わがやでは普段、これを防災用品と一緒に保管しています。
家の裏手にある湧水。「飲用不適」との断り書きがあるものの、水は透明で水量も豊富。3.11の震災後「いざというときに避難できる緑地があり、水がとれる場所」という条件で家を探し、この湧水を決め手にして引っ越しました

 断水が長期に渡った場合、問題となるのが飲料水の確保。ペットボトルでの非常用の備蓄には、スペースや重量の面で限界があります。その点、オートフローのフィルターは約1500ℓの浄水ができるので、家の近くにそこそこの水源を持つ人は、オートフローがあれば1.5トン分の水を備蓄したのと同等、と考えることもできます。

(ただし、注意したいのは「生水」の汚濁度。コップに汲んで濁りがわかるほどの水だと不純物ですぐにフィルターが詰まってしまうので、できるだけ透明な水を選ぶことが重要です。また、溜り水などを濾過した場合、元の水のにおいはそれなりに残ります)

 大型の地震などで断水した場合、水道が復旧するまでに1週間から1ヶ月ほどの時間がかかり、これまでは防災用品としてストロー型やボトル型の浄水器の紹介がよくされてきました。しかし、復旧までの時間を考えると「被災直後に生命をつなぐ」ための水はペットボトルで確保し、その後「被災した状況下での生活」になった段階から、飲料水を手軽かつ大量に作れるシステムへ移行するほうが合理的です。

 また、水環境のよかった日本では、沢水を煮沸する、濾過するという文化がありませんでしたが、ここ数年で東北地方や本州中部でもエキノコックスの拡大が報告されています。生水を頻繁に使う人は、防災グッズと兼用する意味でも手に入れておいてよいアイテムだと思います。

MSR/オートフロー グラビティフィルター
¥20,000+税
重量:315g
原生動物 :◯
バクテリア:◯
ウィルス :×
微粒子:◯
化学薬品/毒素(味/臭い):×
流量:1.7ℓ/分
フィルターカートリッジの寿命:1500ℓ
http://www.e-mot.co.jp/msr/product.asp?id=123

 
 
ライター
藤原祥弘

野生食材の採集と活用、生活技術につながる野外活動などを中心に執筆とワークショップを展開。twitterアカウントは@_fomalhaut

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