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【はみだしコフラン】仕事人、骨の髄まで必殺。「ワイアーソー704」は木じゃなくて魚に使え

(2019.07.04)

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 この3週間、コフランのことばかり考えていた。集中連載企画が終わってしまって、淋しい。

 少年時代、本を通じて憧れたコフラン。
 10代からお世話になっているコフラン。
「それ、誰が買うのよ!?」というコフラン。

 名品から迷品まで、振れ幅の大きいコフランに向き合ううちに気づいたことがある。日本国内ラインナップは、あれでも(失礼!)厳選されたものだった。

 本国のサイトを開いてみると、全アイテム数はおよそ400。そのうち、日本で流通しているのは約100アイテムだ。

 本国のサイトと日本総代理店のエイアンドエフのサイトを見比べてみると、「なんでこれは輸入してるのに、こっちは輸入しないんだろ!?」と思わされること多々。

 機能はクーラーの蓋を開けておくだけという「クーラードライ」。クーラー専用のライト「クーラーライト」。テーブルクロスを引っ張っておくための「テーブルクロスウェイト」……。

「これらを輸入するくらいなら、本国にはもっと使えるものがあるじゃないか」

 最初のうち、私はそう思っていた。
【毎日コフラン】それ、枝でよくね? とか言わないの! 森山伸也のコフラン第1位は……クーラードライ 機能は「クーラーの蓋をちょっと開けておくだけ」という驚きのアイデア商品。756円也。

 しかし、コフランのことばかり考えるうちに気が付いた。

「これは……めくるめくコフランワールドを伝えるために、わざと玉を散らしている!!……」と。

 もしも本国の商品群から実用品だけを選んだなら、コフランの魅力はまるで伝わらなかっただろう。クーラードライのないコフランなんて、あんこの入ってないどら焼きも同然。クーラードライがあるから、キャンプクッカーエッグホルダーが輝く。

 直球から変化球、加えて危険球もある本国の商品群から、その世界観を伝える道具を上手にチョイスしたものだと思う。改めて、エイアンドエフの選択の妙に感心している(でも、次回のオーダーをかけるときは「伸縮式ハエたたき」と「コンパクトモスキートヘッドネット」を入れてほしいぞ)。

 コフランの本国サイトは思いもよらないアイテムが売られており楽しい。商品紹介の写真も、シチュエーションとポーズと表情がいちいちおかしいので、ぜひ見にいってほしい。ますますコフランのことが好きになるはずだ。

 閑話休題。

 そして、今回の連載ではアイテムを分担したので紹介記事を書きたくても私が書けなかったものもある。そのうちのひとつが「ワイアーソー704」だ。【毎日コフラン】】繰り出すパンチで◯◯を切る! 森山伸也のコフラン第3位は……ワイアーソー704  森山伸也、いつだっておいしいところをもっていく男である。

 自重6gという軽さに帯びた切れ味の評価は、読者諸賢に委ねよう。そのかわり私は、正しい使い方よりも効果の大きい「間違った使い方」を紹介したい。ワイアーソー704は、木ではなく魚を相手にしたときに秘められた実力を発揮する。

 まずは金切り鋏で片側のハンドルすれすれの部分でバツンと切り落とす。鋸としては使えなくなるが臆することはない。これによって新しい力が704に付与される。

 続けて、どこのご家庭にもある金ヤスリで切り口のバリを丸めよう。先端は尖らせず、角をとるだけでOKだ。鈍いくらいがちょうどいい。

 これにて704改は完成。巻きグセがつかない程度の輪にくるりとまとめる。リングは好みで外してもかまわない。

 改造が済んだら704改をポケットにいれて海へ行く。海に行くと魚がいるのでそれを獲る。

 魚を獲ったら、魚の眉間をスパイクで一撃。魚種によって異なるが、両目の後端を結んだ線の中心部やや後方に脳がある。ここへスパイクを入れて脳殺する。苦しませないよう、手早く締める。

 脳殺できたら、スパイクを抜いた穴から704改をそっと挿入し、脳からのびる神経を探る。脳の奥をワイヤーの先端で小突いているうちにスッと入る場所が見つかるはずだ。

 神経に入ると脳殺されたはずの魚が身震いするので、それを合図にワイヤーを前後させつつ送り込む。進むほどにワイヤーの周囲に付いた鋭利な稜が神経を砕き、掻き出していく。神経の奥まで送り込めると、尾の付け根までワイヤーが到達する。ワイヤーを前後させても魚が動かなくなったら、神経締めが完了。
このサイズの魚でだいたい、これくらい入る。

 生物は死後、神経から筋肉に分解を進める信号が送られる。しかし、神経が破壊されると「オラは死んじまっただ信号」が遮られるので、身のもちが良くなる。冷蔵・熟成させたのちに刺身にすると、この処理の有無で味に大きな差が出る。

 なお、神経締めは放血と保冷の技術と組み合わせてはじめて効果が生まれるものだ。ここではすべてを解説できないので興味がある人は各自で調べてほしい。

 704改のワイヤー長は40cm程度なので、体長30〜50cm程度の魚を締められる。神経の太さに対するワイヤー径の点からも、40cm前後の魚にちょうどいい。大物が獲れたときには、尾を切り落として尾側からも神経にワイヤーを入れよう。これで80cm程度の魚まで神経締めできる。

 ワイアーソー704が締め具に転用できると知っていれば、うっかり締め具を忘れて海に出かけても大丈夫。海辺のエイアンドエフに駆け込めば、そこには改造を待つ704が並んでいる。

 そして、この記事を本国のコフラン社員が見たならお願いしたい。704の鋼材は鉄なので錆びやすい。洗ったあと乾かして油を塗るのがちと手間だ。締め具としてもっと活躍できるように、素材をステンレス系に変えてほしい。

 そのときには、説明用の写真を提供するのはやぶさかではない。ポーズと表情はもう、練習してある。

 
 
ライター
藤原祥弘

野生食材の採集と活用、生活技術につながる野外活動などを中心に執筆とワークショップを展開。twitterアカウントは@_fomalhaut

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