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プリムス、待望のシングルバーナー新モデル。おにぎりフェイスのエッセンシャル・トレイルストーブとは?

(2020.03.18)

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日本国内で販売されるプリムスの直結型シングルバーナーとしては、ひさしぶりの新製品。エッセンシャル・トレイルストーブとはさて、どんなモデル!?
待望のニューフェイス

 日本国内向けの直結型のシングルバーナーで、じつに7年ぶりの展開となるプリムスの新商品は、ずんぐりむっくりとしたおにぎり形のモデルで、名称は「エッセンシャル・トレイルストーブ」である。型番は「P-TRS」。その見た目からもわかるように、バリバリの山行で山の頂をめざすようなシーンではなく、ベースキャンプでの使用やもしくはキャンプ、フェスを目的としたアクティビティに向いている。

 国内での発売開始はこの4月以降となるが、Akimamaでは事前に製品を借り受け、その使い勝手をとことん試してみた。まずはスペックから見てみよう。重さは本体のみで113gとある。軽量コンパクト・高出力が売りの「P-153」が116gなので、それよりも若干は軽いものの、最軽量の「P-115」は57gと差は広い。とはいえ153も115もともに山向きであり、このエッセンシャル・トレイルストーブがベース向きであることを考えれば、113gは悪い数字とはいえないだろう。
左から、P-153/ウルトラバーナー、P-115/フェムストーブ、IP-2243PA/2243バーナー、P-TRS/エッセンシャル・トレイルストーブ。

 続いて出力。ともにT型ガスの使用をもとにしたデータであるが、前出の153は3,600、115は2,100kcal/hである。そして、こちらは2,200kcal/h。115よりも少しだけ高め。ちなみに堅牢設計でプリムスの伝統モデルとされるベース向きの「IP-2243PA」は、重さが253gで出力が3,600kcal/h。こうやって数字を並べてみると、エッセンシャル・トレイルストーブはプリムスの現行商品の中で、ちょうど中間くらいの位置付けのモデルといえる。
 ただし特筆すべきは、その価格。なんと税込で5,280円である。153の9,900円、2243の8,250円、115の7,700円に比して、驚くほどのコストパフォーマンスのよさだ。なぜにここまで価格を抑えられるのかは気になるところだが、商品の打ち出しが山ヤ向けではなく、キャンパーや野外料理好きなど、より一般向けとなっていることがその答えのひとつにはなろう。

 では、その使い勝手のほどはどうだろうか?

シンプル構造から生まれる安定感

 まさに、シンプル・イズ・ザ・ベストとでも言うべきか。エッセンシャル・トレイルストーブを一度手にすれば、その使い方は一目瞭然。可動部が、バルブを開け閉めするワイヤー式のつまみひとつしかない。ヘッドもゴトクも固定式なのでガスカートリッジに本体をネジ込んでつまみを回せば、それでOKとなる。点火装置の装備はないのでライターでの着火動作は必要となるが、それはどんなバーナーでも同じこと。おにぎり形のがっしりとしたフォームはカートリッジ装着時のバランスもよく、見た目にも安定感がある。
(左)グローブをしたままでも難なく扱える大きめのワイヤー式のつまみ。(右)真上から俯瞰するとこんな具合。まさに、見た目は三角おにぎり。

 ところで、そもそもなんでこのかたちを選んだものかと、これまでのプリムスの商品展開を考えると不思議にも思える。この点、スウェーデン本国の開発担当者にもコメントを寄せてもらった。回答を送ってくれたのは、プリムス社の技術開発を手掛けるEric Svartström(以下、エリック)さんだ。

 エリックさんによれば、なにも日本のおにぎりをイメージしたわけではなく、技術開発の行き着いた先にあったのが、この丸い形状のヘッドだったようだ。

ラミナーフロー構造のしくみ
ラミナーフローはさほど複雑な機構ではない。下からガスを取り入れ、ヘッド下部の丸穴から酸素を取り入れるまでは、従来モデルと変わらない。その先、ヘッドの内部でも酸素とガスの混ぜ合わせが行なわれ、気体を安定供給する。図解にすると、非常にわかりやすい。

 エッセンシャル・トレイルストーブのいちばんのポイントは「ラミナーフロー構造」にある。簡単にいえば、バーナーヘッド本体の「中で」空気とガスをミックスさせるというもの。燃焼には酸素が不可欠なのはご承知の通りで、安定した燃焼のためには、空気とガスを混合させることによって燃えやすい状態の気体をつくりださなくてはならない。このため、従来のモデルでは空気とガスを混じり合わせる部分、つまり、混合管にある程度の長さが必要となっていたのだ。となれば、どうしてもバーナーの全長は高くなりがちで、鍋を乗せたときの使用時の安定性に課題が残ることとなる。
(左)技術開発責任者のエリックさん。大学で機械工学を学び、エンジニアとして活躍。「PRIMUS」に在籍して14年の経験を持つ。(右)エッセンシャル・トレイルストーブの試作のために、プリムス本社のラボで手掛けた数々のパーツ。

 そこでエリックさんが思いついたのが、このラミナーフロー構造だった。ラミナーフローを英語で表記すれば「laminar flow」。直訳すれば「薄い板状の流れ」ということになる。縦型の混合管を横型に。ヘッド全体を薄くして、その内部にて空気とガスが混じり合うような構造にすれば、高さを低く抑えられるのでは……。このアイデアは、エアホッケーの平たいパックが空気の薄い層によって空中に浮かんでいる様子を見て閃いたのだとか。パッと見はなんともないようにも思えるものの、技術的にこのバーナー構造を見れば、じつは常識を逸脱した革新的なものだった。

短い混合管で低い重心
P-121マイクロバーナーとエッセンシャル・トレイルストーブの混合管の背比べ。やはり、エッセンシャル・トレイルストーブのほうが短め。

 写真は旧モデルのP-121マイクロバーナーとエッセンシャル・トレイルストーブの長さを比べたものであるが、なるほど、ヘッドを支える軸となる混合管の長さがちがう。たしかにエッシェンシャル・トレイルストーブのほうが短く見える。それでいてバーナーヘッドの内部でも空気とガスの混合が行なわれるので、結果的には管が長くなるのと同じ役割を果たす。つまり、混合気体をより安定的に送り出すことに繋がったというわけだ。

 エッセンシャル・トレイルストーブの初期モデルは、混合部分の面積をより広く取るために丸形構造となっていた。この段階でもラミナーフロー構造としてはまったく問題がなかったのだが、次の段階では軽量化やゴトク形状の設計が必要となってくる。そうして試行錯誤を繰り返すうちに、バーナーヘッドは丸形から三角形、つまり、おにぎり形へと変わっていったのだ。

風にも負けず

 プリムスのX字ゴトクといえば、定番中の定番。効率よく風を防ぎ、燃焼効率を高めるということでこれまでも多くのモデルに使われてきた。ただ、今回はXではなくYを選ぶ。これは、軽量化に伴うヘッド形状の変更と密接に繋がっている。Y字であれば、三角ヘッドにピタリと寄り添う。それもズドンと太く大きめにすることで、結果的に耐風性能の向上にもひと役買うこととなったのだ。
バーナーに火を点じ、いっぽうから強い風を吹きつけてみた。Y字形の太めのゴトクがしっかりと風防の役目をはたしていた。ぴったりサイズのコッヘルを載せれば、相乗効果でさらに効率的な燃焼が可能となる。

 バーナーヘッドのサイズもプリムスのコッヘルサイズにピタリと合っているので、鍋を乗せることでY字の仕切りが明確に分けられ、風に対しての影響を部分的に抑えられるようにもなる。全体の背の高さも低くなるので、鍋をひっくり返してしまうような心配もなくなっている。 

炎の強弱も思いのまま
大きめのワイヤー式のつまみは、炎の強弱をたやすく調整できる。また弱火にも強いのは、バーナーヘッド全体が混合管の役割を果たし、気体の安定供給をしているため。

 また、大きめにつくられたワイヤー式のバルブつまみによって、炎の強弱も細かくできるのも特徴といえよう。バーナーヘッドから送り出される気体も炎となる直前まで本体内でミックスされているので、けっして途絶えることもなく弱火でも安定性が高いのだ。キャンプ向きのモデルといえるのも、炎の強弱を操るような繊細かな調理にも向いているという意味もある。

もしものときの一台にも

 これだけ手軽に簡単、かつ安定性の高いバーナーヘッドであれば、防災ギアとしても十分に役立つことと思う。シンプルでいてだれでもが安定して扱えるのは、性能の高い証でもあろう。そもそも、エッセンシャル(essential)とは「なくてはならない」という言葉である。どんなときも必要不可欠なストーブでありたい。プリムスの新作ストーブには、そんなメッセージが込められている。

▪︎P-TRS/エッセンシャル・トレイルストーブ

 

■P-TRS
プリムス/エッセンシャル・トレイルストーブ

重さ:113g
出力:2,200kcal/h(Tガス使用時)
連続使用時間:約1時間15分(250ガス使用時)
サイズ:収納時/9.5×7.1×9.0cm、使用時/φ11.0×7.1cm
価格:5,280円(税込)

プリムスのHPで詳しく見る


*2020年3月の情報に基付いています。

 
 
ライター
宮川 哲

山岳•アウトドア関連の出版社勤務を経て、フリーランスの編集者に。著書に『テントで山に登ってみよう』『ヤマケイ入門&ガイド テント山行』(ともに山と溪谷社)がある。

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