• 道具

【OutdoorResearch④ 使いこなす人たち】山岳ガイド・島田和昭さん/フェロッシー アノラック 〜備えよつねに、をかたちにしたジャケット

2021.03.16 Tue

PR

林 拓郎

林 拓郎 アウトドアライター、フォトグラファー、編集者

 OutdoorResearch(アウトドアリサーチ 以下OR)の製品に込められた、実践主義的機能性。その根っこは、ORが野外活動のなかで鍛えられ、磨き上げられてきたことにあります。

【OutdoorResearch①】アウトドアでの実践をもとに、ロジカルな思考で問題を解決していく“OR”
【OutdoorResearch②】フィールドに必要な機能を見極め、熱意とテクノロジーを全力で投入する

 そうした製品性能をオーバースペックと見ることもできます。使わないのならそれは要らない機能だろう、まったくムダなのではないかと。けれど災禍に見舞われたわれわれは学びました。ゆとりをつくることは、まさかに備えることと同義なのです。それは今、役に立たないからといって切り捨ててよい部分ではありません。来たるべき事態に対処する際には余裕となる重要な装備なのです。

熱意をかたちにするためには、装備と判断が欠かせない

 兵庫県でガイドとして活動する島田和昭(しまだかずあき)さんは、ガイド歴20年以上。じつはそのガイド人生のほとんどにわたって、ORの製品を愛用し続けてきました。

「もちろん、ほかにもいい製品がたくさんあることは、知識としては知っています。そっちのほうが高機能っていうこともあるかもしれません。けれど、僕の使い方で言ったらORがベストチョイスなんですよ」

 なぜならそこには信頼感があります。

「こいつなら大丈夫。これがあったらイケる。そう思えることが、僕にとってはいちばん大きな性能なんです」
2月の南アルプス。厳冬期に黒戸尾根から甲斐駒ヶ岳をめざしたツアーのひとコマ。こうしたきびしい状況のなかでも余裕を保っていられるのは実力や経験とともに、信頼できる装備を整えているから。島田さんが着用しているのはOutdoorResearchのフーリオジャケットとフーリオパンツ。
 島田さんが「20日間北アルプス一周」にチャレンジしたのはおよそ30年前の、19歳のときでした。自然のなかに分け入ることにとりつかれたガムシャラな若者は、将来ガイドになるとは思いもしないままに大学入学の夏から北アルプスの横尾山荘でアルバイトを始め、そこで始めて本格的な登山に触れたのです。

「なにしろ実家は新大阪の近く。隣がパチンコ屋で向かいがスナックで2階は居酒屋、っていう自然とは無縁なところで育ったんですよ」

 それでも兄の影響もあって、小学校3年生からはカブスカウトに、その後はボーイスカウトに入団して野外活動に親しみました。

「都会の街って面倒なことが多くて、自分が思った通りの行動がしにくいんですよね。だけど自然のなかって自分の責任は大きいけど、全部自分で判断して、自分の好きなように動ける。それが楽しくてね」

 こうしてボーイスカウトで独立心を養った島田さんは、高校に入るとさらに自由に野山を駆け回ることになります。

「道具なんてそもそも買えないし、持ってないですから。綿のシャツにジーパン、ザックはボーイスカウトのときに使ってたキスリング。登山道とか地図読みっていう概念もないままに飯盒と固形燃料を持って、関西の山を歩き回ってました」

 そうするうちに北アルプスのうつくしさに気づき、心を惹かれ、この山に登りたい! という想いで横尾山荘にもぐり込んだのです。やがてその情熱は「20日間北アルプス一周」という挑戦にまとまり始めます。19歳の島田さんは、居てもたっても居られない熱意に突き動かされて、20日分の食料を詰め込んだ45kgものザックを背負ったというわけです。

「いま思えばね、全然ダメです。意気込んで出かけたけれど、道具も経験もまったく足りてない。案の定、こてんぱんにやられて途中敗退しました」

 その敗退こそが、装備や行動様式を冷静に見極めるという、のちの島田さんの考え方につながっていくことになります。

「まず行動がダメでした。初日は横尾から槍ヶ岳を超えて双六小屋まで行ったんですけど、完全にオーバーペース。加えて靴もダメでした。いまじゃ絶対にしないですけど、キャンバス地のシューズで行ったんですよね。靴は2日目で破れて穴が空きました。それをテープで補修してごまかしながら歩くんですが、黒部五郎小舎までがやっと。3日目は歩くのも難儀するような大雨のなかを太郎平小屋まで行ったんですが、雨具が適当なものだったうえに、そもそも天気をまったく読めてない。道具も体力も限界だったですね。断念して、折立に下りました。でもまぁ、翌年も翌々年もチャレンジして、3回目ででなんとか成功するんですけどね」
じつはスキーのガイドがいちばん楽しいという島田さん。「関西に住んでいるとなかなかスキーでご案内という機会も多くないんです」 3月ながらいい雪に恵まれた白馬では、バックカントリースキーのガイドをこなしながら深雪の感触も楽しんだ。

糧となる失敗を、適度なもので終わらせる

 島田さんはこうした失敗を、ただの失敗としませんでした。なにが悪いのかを見極め、どうすれば改善できるかを考え抜きます。その思考方法はORの創業者、ロン・グレッグと同じです。アウトドアでの実践をもとに失敗の原因を追求し、そこを改善することで問題を解決していく。そうして、ボーイスカウトで学んだひとつの言葉を心に刻みます。"備えよつねに" 。

 島田さんは過去の失敗を振り返ってこう語ります。

「ある程度の失敗はしたほうがいいと思うんですよ。そういう失敗のなかで、自分のなにが悪かったのか、考えなのか道具なのか。道具ならどうしていけばいいのかがあぶり出されますから。備えるための具体策が分かるという意味では、上手に失敗することも、アウトドアでは大切だと思うんですよ」

 島田さんにとって、実地的な見識や経験、そしてみずからの肉体を通して学んだことが本物の知識です。大学を卒業して山小屋を離れてからは思索の期間をとりながら、自分がめざしたい職業像を描いていきました。そこで見出したのが「人と自然との仲介者」というポジションです。さまざまな職に向かい合いながら、最終的にはアウトドア用品の輸入代理店に入社。出向社員として登山専門店「好日山荘」の店長までつとめながら、人に合ったモノを選ぶ手伝いを重ねてきたのです。

「今度あの山に行くんですけど、どんなアイゼンがいいかしら〜? って聞かれて。これですよっておすすめしても、雪が少なかったら『こんな高いもん要らんかったわ!』って言われるんですよ。そうじゃなくて、山は用心してちょっと余裕のある道具を選んでおかないと、イザっていうときに痛い目に遭うんですよって。そうしたこともお店でお話しても、お客さんも具体的にイメージできないからか、納得しきってもらえないんですよね。だけど現場で状況に合わせて『例えば日当たりのよい面の雪はグサグサですけど、北斜面の日陰ではこんなふうに氷化してますよね』っていう話をしたら、なるほどな! って聞いてもらえるんですよね」

 こうした体験が積み重なって島田さんは、人と自然をダイレクトに介するガイドになったのです。

「だから僕にとって、道具っていうのは安全を確保してくれる命綱。ただその場でいい悪いっていうだけじゃなくてね、どのくらいに自分にゆとりをつくり出してくれるかっていうところが大事。言ってみれば、条件が極限まで悪くなったときに機能性が際立ってくる。そうした芯の部分の信頼性っていうのが肝心なんですよ」
この日は神戸消防局航空機動隊の氷ノ山冬山訓練を指導。山岳ガイドとしての知識は、人命救助に関わる人たちのスキルアップにも活かされていく。

 そんな島田さんに愛用のOR製品ベスト3を選んでいただきました。が、

「どうしても3つに絞れなかったんで、4つにさせてください」

 とのことでしたので、3+1でお届けしましょう。
  

■フェロッシーアノラック
「フェロッシーシリーズはストレッチの効いた生地が特徴です。この生地はクライミングでも身体のムーブをまったく損なわないうえに、岩に擦れてもへこたれないタフさを備えています。そういうジャケットならほかにもあるかもしれませんが、フェロッシーは衣擦れの音が小さいのでフードをかぶっていても周囲の音を聞き漏らすことがないんです。軽くて着心地がいいだけでなく、なにかをじゃますることがない。ふだんは存在そのものを打ち消していて、雨や風に遭ったときにスッと存在を主張してくる。春から秋までいろいろな使い方ができるソフトシェルとしても文句なしですね」
▶素材:ナイロン カラー:ロデン、ナバルブルー、ストーム サイズ:S-XL 価格:14,300円(税込)
 

■アウトドアリサーチ エクスペディション クロコゲイター
「脚部は70デニール、脚の内側には100デニールのコーデュラを使った超頑丈なゲイターです。雪のなかを歩くときには必需品ですね。乾燥した雪ならゲイターはなんでもいいかもしれないですけど、関西エリアに降る雪はホントにクセが悪くて、ゲイター自体にくっついてくるんですよね。それでゲイターを留めてる部分が外れてきたり、そもそも靴にフィットしないとか。クロコゲイターはしっかり装着できて、一回着けたら着け直しの手間がいらないほど。かたちも崩れないし、すき間がないから雪が入ってくることもない。結果的に保温力も保たれて、安心感は抜群ですね。ガイドはラッセルする機会も多いので、なにがあっても対処できるっていう意味では、これじゃないとむずかしいかなと思っています」
▶脚部素材:3レイヤー70デニール GORE-TEX® フットパネル素材:2レイヤーコーデュラ100デニール平織り サイズ:S、M、L カラー:ブラック、チリブラック 重量:343g(Lサイズ ペア) 価格:15,290円(税込)
 

■アウトドアリサーチ イルミネーターセンサーグローブ
「プレカーブといって、グローブ自体が軽く指を曲げた状態になるようにつくられているんですよ。それもあってこれだけしっかり厚みのあるグローブなのに、アイスクライミングでピッケルを握っても、スキーでポールを握っても、まったく違和感がないんですよね。それからカフの部分にループが着けられてるんですが、これがあることで手袋をするときにすごくラクなんですよね。しかもループは手袋をした指でも引ける余裕のサイズ。こういう細かい所のひとつひとつがORのクォリティだなと思います。あとはカフリーシュが標準装備なんで、手袋を落としたりなくしたりする心配がないっていうことも大きいです。しかもカフリーシュのゴム部分の幅が絶妙にいいんです。春先まで、手放せないですね」
▶シェル素材:ベンティアインサートストレッチツイルラミネーター 手のひら素材:WRゴートレザー 親指、人差し指素材:タッチスクリーンゴートレザー 断熱材:プリマロフトシルバーインシュレーション サイズ:S、M、L カラー:ブラック 重量:165g(Lサイズ ペア) 価格:15,400円(税込)
 

■アウトドアリサーチ ウィンドストッパー ゴリラバラクラバ
「ウインドストッパーを使っているので防風性は抜群。しっかり冷気を遮ってくれながら、通気性も備えています。あと、鼻と口のところに呼吸孔がつけてあるので、非常に呼吸しやすいんですよね。バラクラバをつけるようなときは状況が悪いんでサングラスかゴーグルをしてますけど、呼吸孔のおかげで呼気がこもらず、曇りにくいところも気に入ってます。曇ると見えにくくなってガイドできないですから、この機能はとても重要なんですよ。厳しい状況で頼りになるものを選んでしまうので、どうしても冬のものが目立ってしまうんですが、それもこれもイザというときに自分が追い詰められないことを考えるからなんですよね」
▶シェル素材:GOREインフォニウムウィズウィンドストッパー サイズ:S、M、L カラー:ブラック 重量:86g 価格:8,800円(税込)
 

島田和昭★しまだかずあき 1973年大阪府出身。ボーイスカウトを通して野外活動に触れ、生きるチカラを自然から学ぶことのおもしろさに目覚める。季節を問わないバリエーションルートガイドを得意としており、さまざまな山を体験しながら、リスクを知り安全構築のスキルを身につけるガイディングを展開。アウトドアテクニックを応用する防災キャンプや70歳以上の高齢登山、クライミングや読図など、テーマに沿った講習スタイルのガイドも好評。
島田ガイド事務所 https://www.naturalstyle-guide.com

 

(構成・文=林 拓郎 写真=島田ガイド事務所)

 

もうひとりの証言者:
【OutdoorResearch③ 使いこなす人たち】スノーボーダー・西田洋介さん/ヘリウムビビィ〜最高の一瞬を逃さないための装備



アウトドアリサーチのサイトで詳しく見る


【あなたの知らないORの世界】記事はこちら

Latest Posts

Pickup Writer

ホーボージュン 全天候型アウトドアライター

菊地 崇 a.k.a.フェスおじさん ライター、編集者、DJ

高橋庄太郎 山岳/アウトドアライター

森山伸也 アウトドアライター

Muraishi Taro アウトドアライター

森 勝 低山小道具研究家

A-suke BASE CAMP 店長

中島英摩 アウトドアライター

麻生弘毅 ライター

小雀陣二 アウトドアコーディネーター

滝沢守生(タキザー) よろず編集制作請負

宮川 哲 編集者

林 拓郎 アウトドアライター、フォトグラファー、編集者

藤原祥弘 アウトドアライター、編集者

ふくたきともこ アウトドアライター、編集者

北村 哲 アウトドアライター、プランナー

渡辺信吾 アウトドア系野良ライター

河津慶祐 アウトドアライター、編集者

Keyword

Ranking

Recommended Posts

# キーワードタグ一覧

Akimama公式ソーシャルアカウント