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アメリカの雰囲気を感じないか?狭山の公園で17年ぶりに開催されるハイドパーク・ミュージックフェス。

2023.04.18 Tue

菊地 崇 a.k.a.フェスおじさん ライター、編集者、DJ

 70年代の前半の埼玉県狭山市。アメリカ・ジョンソン基地の隊員や家族が住んでいた米軍ハウスと呼ばれていた住宅に、多くのアーティストやミュージシャンが移り住んだ。細野晴臣さんの『HOSONO HOUSE』は、細野さんが住まいとしていたその米軍ハウスで録音されたものだ。他にも、ソウルシンガーの小坂忠さん、ムーンライダーズの岡田徹さん、サディスティックミカバンドやはっぴいえんどなどのジャケットデザインを手がけたデザイン集団WORK SHOP MU!!のメンバーたち…。そして、のちにトムズ・キャビンという「小さなプロモーター」を立ち上げた麻田浩さん。70年代の狭山には、どこかアメリカのいい時代の雰囲気が漂っていたのだろう。トムズ・キャビンは、トム・ウェイツや、ザ・バンドのメンバーだったレボン・ヘルムなどを70年代後半に招聘するなど、アメリカのミュージシャンをいち早く日本に紹介した。フジロックを主催するSMASHが1983年に設立ということを考えると、時代の先端を進んでいたのかがわかるだろう。

 ジョンソン基地内にあり、アメリカ人が主導して造成された広大な公園がハイドパーク。基地が日本に返還され、その公園は「狭山稲荷山公園」として、今では市民の憩いの場所として愛されている。

 この狭山稲荷山公園で2005年に初開催されたのが、「ハイドパーク・ミュージック・フェスティバル」だ。2年連続で開催されたものの、その後はしばらくの間にわたって開催は見送られてきた。そして今年、17年ぶりに復活する。開催初年から中心となってオーガナイズしているのが、今も狭山に暮らしている麻田浩さんだ。

「音楽関係ではない狭山の仲間たちと一緒に動き出したのがハイドパーク・ミュージック・フェスです。みんな狭山という町に愛着があって、『稲荷山公園でライブをやれないか』っていう話がきっかけでした。そして(小坂)忠と細野(晴臣)くんに話したら、『やりましょう』って前向きに答えてくれて」と麻田さん。

 2回目で赤字が出てしまったことで、その次にはなかなか進めなかった。けれど麻田さんの心には、1回目の開催時にライブを終えた後の小坂忠さんの言葉がずっと残っていたという。

「『ここは最高だから、どんどん続けていこうよ。僕はいつでも喜んで出るからさ』と忠が言ってくれて。ずっと次が開催される時には、忠と細野くんには出てもらいたいと思っていた。残念なことに、去年の4月に忠が亡くなってしまって、そのこともあって、命日に近い4月に復活開催することにしたんです」

 麻田さんが何度も体験してきたアメリカのフェスの雰囲気が、「ハイドパーク」の底流には流れているのかもしれない。老若男女、みんながゆったりと音楽を楽しむ。ライブが主役ではあるのだけど、自由な空気にも包まれている。

「日本のフェスは、若い人向けになっちゃっている感じがしています。そうじゃないフェスがあってもいいんじゃないかなって僕は思ってたんですよね。ベテランが若い人の音楽を聞いて、若い人がベテランの音楽を聞く。若い人と年齢を重ねた人、みんなが楽しめるフェス。そういう場所ががそんなにないですから。立って踊るのもいいけど、ゆったり聞くのもいいし寝転がっててもいい。前の開催の時もそんな雰囲気になりましたけど、リラックスして楽しめる場になればと思っています」

 今年のラインナップを見ると、加藤和彦トリビュートバンドや、小坂忠トロビュートバンドなど、「ハイドパーク」でしか実現しないライブも組まれている。音楽を伝えてくれた先達に対してのリスペクトが込められたフェス。細野さんとイエローマジックオーケストラのメンバーだった高橋幸宏さん、坂本龍一さん、ムーンライダーズの岡田徹さん。日本に海外の音楽を伝え、日本のポップミュージックの礎を築いた多くのミュージシャンたちが、今年になって旅立ってしまった。だからこそ、世代を超えてみんなが野外で楽しめる空間が必要なんだろうし、それが「ハイドパーク」には展開されるのだろう。

Hyde Park Music Festival 2023
開催日:4月29日(土)30日(日)
会場:狭山稲荷山公園内特設会場(埼玉県狭山市)
出演:
4月29日(土)
ムーンライダーズ、田島貴男(Original Love)、EGO-WRAPPIN’、在日ファンク、サニーデイ・サービス、パスカルズ、トクマルシューゴ、笹倉慎介、加藤和彦トリビュートバンド、ほか
4月30日(日)
SION with Kazuhiko Fujii、佐野史郎バンド、民謡クルセイダーズ、踊ってばかりの国、関口スグヤ、いーはとーゔ、イーノマヤコ、ハイドパーク・キャバレー・バンド、小坂忠トリビュートバンド、ほか

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