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新米を食べるとヤマネコが喜ぶ!? 「生き物と人に優しいお米」できました。

2015.10.23 Fri

藤原祥弘 アウトドアライター、編集者

 ときは食欲の秋。みなさんもそろそろ今年の新米が気になっているのではないでしょうか。ブランドや生産地など、美味しいお米を選ぶ指針はいくつかありますが、今年はそれらに「自然に優しい農法で作られているか」を加えてみてはどうでしょう?

 日本に稲作が伝来して、はや3000年(諸説あり)。湿地が水田へと変わるなかで、水田は、浅い水辺を好む生き物たちを育んできました。
 たとえば、メダカ。メダカの属名は「olyzias」といいますが、これはイネの属名の「oryza」に由来するもの。名前が表すとおり、かつてメダカはどこの田んぼにもいる身近な生き物でした。ところが、農薬の使用が増えたり圃場整備が進んだことにより、メダカをはじめとする田んぼで暮らしていた生き物は激減してしまいます。

 これに困ったのが、田んぼの生き物を食べていたもっと大きな野生動物たち。トキやコウノトリなどの浅い水場で魚を獲っていた鳥は餌をとることができず、絶滅が心配されるほどに数を減らしてしまいました。

 これらの希少な生き物を救うべく、日本各地で進んでいるのが希少生物を応援する米作り。生産団体ごとに取り組みの内容は異なりますが、慣行農法に比べて農薬の使用量を大幅に減らしたり、田んぼと用水路を生き物が行き来できるようにする、冬場も生き物の逃げ場となる水たまりを残す、といった試みがなされています。

 これらの農法で作られたお米は若干高値ですが、消費者は安全性が高いお米を食べることができ、生産者は収益が上がり、野生動物は生息地が豊かになる、という言わば、「三方一両得」の取り組みでもあります。

 現在の有名な生産団体は、長崎県対馬市の「佐護ツシマヤマネコ米」、新潟県佐渡島の「朱鷺と暮らす郷づくり認証米」、兵庫県北部の「コウノトリ育むお米」など。それぞれの地域に合った方法で、生き物に配慮した米作りが行われています。

 生き物がたくさんいる田んぼと、生き物の少ない田んぼ。どちらで作られたお米が人の体によいかは、考えみるまでもありません。また、消費者が環境負荷の低い米を選んでいけば、そういった米作りをする生産者も増え、日本の田んぼが生き物の暮らしやすい環境へと変化していくはずです。

 今年の新米は、各地の希少生物に優しいお米を食べ比べて、その地の自然に思いを馳せてみてはどうでしょう?

佐護ツシマヤマネコ米
5Kg 3000円〜(ふるさと割対象)
視界の良い日には韓国が見える国境の島・対馬。固有の自然をもち、日本でもここにしか生息しない動物、昆虫も数多い。佐護地区は対馬の北西部に位置し、世界でもここにしかいないツシマヤマネコが高密度で生息する。慣行農法と比べて農薬と化学肥料を5割以上削減。生き物に住処を提供する早期湛水、冬季湛水を実施するほか、恒常的に水をたたえたビオトープを田んぼの近くに設置し、水生生物の逃げ場所を設けている。

朱鷺と暮らす郷づくり認証米
5Kg 3500円程度〜
日本海に浮かび、豊かな自然と文化を持つ佐渡島。日本において野生のトキの個体群が最後まで残った土地であり、現在は中国から譲り受けた系統の約140羽が生息する。慣行農法と比べて農薬と化学肥料を5割以上削減。生き物に住処を提供する冬季湛水を実施するほか、恒常的に水をたたえたビオトープや、用水路と水田を生物が行き来できるように魚道なども設けている。


コウノトリ育むお米
5Kg 3300円程度〜
兵庫県の北部、豊岡市周辺は日本で最後までコウノトリが生き残った地域。現在、JAたじまの管轄区域ではコウノトリをアイコンにして、お米をはじめとする農産物で減農薬・無農薬のものを数多く作っている。慣行農法に比べて大幅に農薬を減らした減農薬栽培のほか、栽培期間中に化学肥料と農薬を不使用にした無農薬栽培にも挑戦。早期湛水・冬季湛水、素掘り水路の設置など生き物にも配慮した栽培を行なっている。2015年開催の「ミラノ国際博覧会」では、日本館で提供されるお米にも採用された。

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