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<外遊び放談>その① 旅人よ、もう一度パックロッドを手に入れろ!の巻

2017.04.02 Sun

藤原祥弘

藤原祥弘 アウトドアライター、編集者

 
 
 20年ほど前のアウトドアは、今のように細分化されておらず「なんでもあり」の世界だった。

 今では登山用品しか扱っていない山専にも、当時は折りたたみ式のカヌーが当たり前に並んでおり、登山用品店というより冒険用品店のような趣きがあった。

 東京の竹芝桟橋や鹿児島港や石垣島の離島桟橋には大きなバックパックを背負った若者がたむろしており、そのバックパックには足ヒレやら、釣り竿やら、真鍮の鍋やらがくくりつけられていた。

 外遊び好きの少年は、小遣いを貯めるとまずMTBを手に入れた。裏山を走りまわり、長い休みには荷物を積んでツーリングに出た。あのころのリジットのMTBには、キャリアをつけるためのダボが付いていた。

 少年が青年になる頃にはMTBからオフロードバイクへ乗り換え、給料をもらうようになったらフォールディングカヌーを手に入れ、人によってはそのカヌーに犬を乗せた。

 あの頃は、バックパックも自転車もバイクもカヌーも旅の道具だった。

 多くの人がジャンルの垣根を越えて、縦横無尽にいろんな遊びを楽しんでおり、道具は旅の楽しみ方の幅を広げるツールだった。

 当時に比べると今は遊び方のスケールが小さくなったと思う。登山、ハイキング、シーカヤック、自転車、釣り、キャンプ、バードウォッチング……。それぞれのジャンルのなかで遊びが完結し、他の遊びと組み合わせる人は少ない。

 最近のアウトドア業界を覆う「同好の士で小さくまとまる」雰囲気については、反省もしている。情報の発信をしている僕らが、それぞれの楽しみ方を単体でしか紹介してこなかったことにも、きっと一因がある。

 僕らが先の世代から教えられた「アウトドア」とは、無人島にカヌーで出かけてそこで大きな焚き火を燃やし、ガスカートリッジを火中に投じてそれをふっ飛ばしたり(いま記事にしたら別の意味でも大炎上だ)、アマゾン川を筏で下ったり、大陸を自転車やバイクで走破することだった。

 先の世代は楽しむことに貪欲で、よい面でも悪い面でもスケールが大きかった。そして、そんなカルチャーに触れて成長しながら、僕らの世代が今やっているのは外遊びの記事の隅っこに、せっせと注意書きをつけることである。

「※焚き火は燃えるものが近くにない場所で行ないましょう」とか、「※水辺で遊ぶときはライフジャケットを着用しましょう」とか、「※食草とよく似た毒草もあるので採集は知識のある人と行ないましょう」なんてことばっかり書いている。自分でも「そんなの書くまでもないことじゃん」と思いながら。

 読者が興味を抱いたとたんに先回りして注意を与え、考える機会や挑戦する機会を奪う。やる気になった人にちょっと水をさす。

 最近は、想像もつかない失敗をする人(そして、その失敗を人のせいにしたりする)が増えたとはいえ、僕らの世代が萎縮しながら情報を発信し、広い世界を狭くしたのは否めない。

 野外活動なんて、汚くて危なくて事故が起きて当たり前。最初から最後まで、自分の行為に我が身で責任を持つことに醍醐味がある。事故が起きるリスクや不快な状況は決して「悪」ではない。ケガや事故が起きる可能性まで孕んでいることが、アウトドアを魅力的にしている。

「絶対に安全なアウトドア」はスパイスの入っていないカレーのようなものだ。もはやそれは、存在する意味を失っている。

 そして、注意書きだらけの記事を量産した末に思うのだ。読者が事故を出さないように、小さな紙幅でもわかりやすいようにと記事を小さくまとめることで、野外活動の世界をつまらなくしてしまったのではないか、と。

 外遊びの目的は自然を目いっぱい感応することにある。野外活動の本領は、技術を深めて自由を身に帯びることにある。出かけた先でひとつの遊び方しかしないのはもったいない。それぞれのジャンルに蔓延する「お作法」にとらわれたり、遊び方を自分で規定したり、便利な道具に目くらましされることで、もっと楽しめたはずのフィールドを遊び損ねているんじゃないだろうか。

 ……ということで、本連載(いま、連載にすることを勝手に決意)では、掛け合わせることで旅を楽しくする道具やアイデアを、私の気が済むまで紹介しようと思う。

 栄えある第一回のアイテムは「パックロッド」! さあ、2ページ目をクリックだ!

 その昔、南西諸島を旅するバックパッカーやライダー、チャリダーの荷物には、パックロッド(折りたたみ式の釣り竿)がくくりつけられていた。

 もちろん、その目的は食料調達。ゲームフィッシングを楽しむという色はまったく無く、誰もが晩のおかずに1品添えるべく、実利一点張りの釣りを楽しんでいた。

 そんなニーズを反映してか、当時は真面目に作られたパックロッドが多くあった。安竿以上・高級モデル未満の中級クラスに、そこそこ遊べる竿がいくつもあったのだ。

 しかし、いつの間にか旅人はパックロッドを持ち歩かなくなった。するとパックロッドは安竿と高級竿の二極化をたどってしまう。素人が間にあわせに使うちゃちなものか、釣り好きが目を三角にして獲物を狙うような高級モデルしか作られなくなってしまった。

「パックロッド」とは、釣りの道具ではなく旅の道具だったのだ。旅人がパックロッドを旅の道具として使わなくなったことで、「そこそこ使える中級モデル」のニーズがごっそりなくなってしまい、先に述べた通りパックロッドは二極化してしまった。

 1本で5万円以上する竿であれば、現在のパックロッドにもおかずサイズ以上が狙えるモデルはある。しかし、バックパックの脇にくくりつけ、ときにラフに扱われる竿に旅人が数万円を出すのは難しい。かといって、おもちゃのような安竿は使っていてストレスがあり、大きな魚は釣ることができない。

 現在、日本国内でパックロッドの層が薄くなるなか、「旅と釣り」の世界を両立しているのが「アングラーズ リパブリック」の「ショアガン」というロッド。

 一般の釣り人には、ショアガンは安価で使い易いコストパフォーマンスにすぐれるシリーズと認識されているが、人気の2ピース(2本継ぎ)モデルに加えて、ショアガンには5ピースが用意されている。

 この5ピースという長さに価値がある。釣り竿は継ぎ数が少ないほど、しなやかな調子と強度が出る。繋いだときに同じ長さなら、継ぎ数が少ないほうが竿としての性能は高い。そのため、釣りが好きな開発者は、パックロッドを設計する際もついつい継ぎ数を減らしてしまいがちだ。

 しかし、継ぎ数が減れば仕舞い寸法は長くなる。3ピース、4ピースという半端な継ぎ数になってしまうと、携行するには長すぎる。持ち歩けないならパックロッドとして意味がない。

 そこをショアガンは5ピースで作ってきた。私が使っている長さが8フィート(約2.4m)のモデルなら、5ピースで仕舞い寸法は55cmを切る。バックパックのサイドにもするりと収まるし、ジャストサイズのケースに収納すれば、飛行機にも持ち込める。

 使用感はちょっと硬めのシーバスロッド。ルアーをキャストすれば、少ない力でも気持ち良く負荷をのせることができ、取り回しも軽快。コンパクトな仕舞い寸法でありながら、おかずサイズからスズキの大型も狙うことができる。事実、昨年仲間と楽しんできた南西諸島の徒歩行では、毎日の食料の調達に大活躍した。

 この南西諸島への旅では、食料計画に最初から「現地調達」のぶんが組み込まれていた。毎日の食事の3割程度を占めるタンパク質のあては、釣り上げた魚。もちろん、釣れなければその日のおかずはなし。食料調達係はなかなか責任重大である。

 小さめから大きめのルアーまで投げられるショアガンは小場所から大場所までその性能を発揮して、夕食には必ず魚が並んだ。

 こんなふうに、出かけた先の自然から食物を分けてもらいながら行動するのと、都会から持ち込んだフリーズドライを食べながら行動するのとでは、旅の深さがまったく異なってくる。

 なにせ、現地調達の旅ではその土地の自然を我が身に取り込んでしまうのだから。

 この旅のハイライトは、サンゴ礁のリーフエッジから投げたルアーに50cm程度のカスミアジが飛びついた瞬間。カスミアジはルアーのフックを伸ばして辛くも逃げおおせたが、竿のポテンシャルとしては、平アジの中型まで釣り上げられると感じた。

 そして魚は、獲れたときよりも獲れなかった魚のほうが心に残る。1年の間、私はルアーに飛びついたカスミアジのことを思い出しではニヤけ続け、この春にもう一度同じポイントへ1週間かけて徒歩で向かうことになっている。もちろん、用意したバックパックのポケットにはショアガンがささっているのである。

※私が使っているのはコルクグリップの8フィートの前期モデル。現在は8.6フィートの長さで硬軟2モデルが展開されている。

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