line_box_head

夏の終わりと秋の始まり。端境期の尾瀬に行ってみた。

(2014.09.20)

登山のTOP

icon

oze1

尾瀬ヶ原の池塘に浮かぶヒツジグサの葉っぱも、思い思いに秋色をまとう。この一瞬にしか見られない秋独特の色づかいは、まぎれもなく自然そのものがつくり出した色味。真似をしたくとも、なかなかこの色は出せないんじゃないかなぁ。ヒツジグサは、スイレン科スイレン属の水生多年草。花の季節には、真っ白な花弁が湖面のあちこちを彩り、見応えもある

oze2

こちらは、尾瀬沼の北岸から南側を写したところ。湖面一帯に広がる薄い白絹のベールは、湖面からわき上がる水蒸気だ。ほんのりとした冷たさを感じさせる朝の風の心地よさと言ったら。まさに端境期の尾瀬の魅力でもある

oze3

7月に咲き誇るニッコウキスゲの大群落で有名な大江湿原にも、秋の始まりがやって来ていた。花の季節には考えられないことだが、歩く人は誰もいなかった。平日の朝、人っ子ひとりいない湿原の朝靄にしばし見とれる

oze4

草モミジが始まりかけた尾瀬ヶ原。奥にそびえる山は、標高2228mの至仏山。尾瀬ヶ原の西にある東北の最高峰、標高2356mの燧ヶ岳とともに、尾瀬を代表する山だ。ちなみに、ともに深田久弥の百名山に選出されている

 大雪山に初冠雪の便りが届いたのが、9月16日のこと。平年より9日も早い雪の季節の到来です。ついこの間までは、35度を越すような猛暑の日々だったのに、いつの間にやら秋を飛び越えてしまったかのようですね。

 ま、旭岳以南の秋は、まだこれからですが。とはいえ、秋は短い季節です。とくに山上の秋は短いものです。とびきりの秋山を楽しもうと思うなら、山々の色づき具合を日々チェックしておかないと、気づいたときにはもう冬景色、なんてこともありますからね。

 この季節は天気が安定しないことも多々ありますし、なかなかどうして、ドンピシャリのタイミングで山に入るのはむずかしいものなんです。それゆえ、思い立ったらいざ山へ!といつでも行動できるように、秋山の準備万端怠らずです。

 写真は9月11日の尾瀬のもの。さすがにまだ秋というには早いものの、夏の装いというわけでもありません。古米と新米が入れ替わるこの9月10月の季節を「端境期」といいますが、いまの尾瀬を表現するにはぴったりの言葉です。

 こういう季節と季節の変わり目の山は、なんとも深く独特な表情を見せてくれるものです。夏でもなく秋でもない。山全体の色味といいますか、そこにただよっている空気の色も匂いも違って感じられるんですよね。夏の匂いがしたかと思えば、その隣には秋色が横たわっていたりして。

 知っているはずの山なのに、初めて訪れたようなちょっと落ち着かない感覚を身体で感じ取ることもあります。この微妙な具合をいかにして味わうか、それこそが端境期の山の遊び方のコツなのかもしれません。

 先週の半ばでこの雰囲気なのだから、今月の終わりか10月の頭くらいにはもうきっちりと秋色が尾瀬を覆っていることでしょう。日に日に秋は深まって行くばかり。気を抜くと、すぐに冬になっちゃいますよ。

 少しがんばれば、尾瀬は都内から日帰りでも訪れることが可能です。ただ、できれば山小屋で一泊しつつ、身体いっぱい尾瀬の秋色に染まって欲しいものです。だって、尾瀬にはお風呂付きの山小屋もたくさんありますし、朝夕の湿原が見せてくれる神秘的な景色は泊まらなければ出会えない景色ですから。

 尾瀬の木道はポクポクと歩きやすいですので、山慣れしていなくとも、装備さえしっかり揃っていれば問題なしです。できることなら、人の少ない平日がお勧めですよ。

           

                                       
■尾瀬ヶ原/登山情報


参考コースタイム(日帰りバージョン):
鳩待峠(1時間)山ノ鼻(45分)牛首分岐(45分)山ノ鼻(尾瀬植物研究見本園/一周約30分)山ノ鼻(1時間20分)鳩待峠 歩行時間計 約4時間20分

参考コースタイム(山中一泊バージョン):
[初日]大清水小屋(1時間10分)一ノ瀬(1時間15分)三平峠(15分)三平下/尾瀬沼界隈の山小屋泊 歩行時間計 約2時間40分
[二日目]三平下/尾瀬沼界隈の山小屋(25分)南岸分岐(40分)沼尻(1時間40分)見晴(30分)竜宮十字路(30分)牛首分岐(45分)山ノ鼻(1時間20分)鳩待峠 歩行時間計 約5時間50分

アクセス:関越自動車道の沼田ICから国道120号線、401号線を経て戸倉へ。大清水までは直接、マイカーでの入山可能。鳩待峠までは、マイカー規制が実施されている場合は戸倉からのシャトルバスを利用する。下山時も同様。なお、鳩待峠までの秋のマイカー規制は、10月13日の正午まで。平日も実施されている。
地図:『山と高原地図14 尾瀬・燧ヶ岳・至仏山』

 
 
ライター
宮川 哲

山岳•アウトドア関連の出版社勤務を経て、フリーランスの編集者に。著書に『テントで山に登ってみよう』『ヤマケイ入門&ガイド テント山行』(ともに山と溪谷社)がある。

line_box_foot