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きょう12月8日は、長谷川恒男の誕生日。『岩壁よ おはよう』を読む

2016.12.08 Thu

 12月8日。75年前のきょう未明(日本時間)、日本軍がハワイ・オアフ島真珠湾にあるアメリカ軍の基地にたいし攻撃をおこなった。日本人にとってはあまりピンとこない日かもしれないが、アメリカにとっては領地(本土)を攻められた決して忘れられない日でもある。

 その真珠湾攻撃から6年後、終戦まもないこの日に生まれたのが、登山家の長谷川恒男だ。谷川岳一ノ倉沢滝沢第2スラブ初登攀を単独で行い、その後もヨーロッパアルプス三大北壁の冬季単独初登攀、南米アコンカグア南壁の冬季単独初登攀という数々の記録を打ち立てた日本を代表するクライマーである。存命であれば、69歳だった。

 昨今のトレイルランニング人気もあり、長谷川恒男の名前を「ハセツネ」として知った人も多いだろう。山岳レースの草分けとして1993年にはじまった日本山岳耐久レースは、彼の業績を讃え「長谷川恒男CUP」というタイトルがつけられている。

 長谷川恒男が生まれた、きょう。あらためて『岩壁よ おはよう』(中央公論社)を読んでみる。この本は、30代前半に20代の自らを回想し書かれたもので、偉業を達成する前のストーリーだ。はじめて山に登った日のこと、はじめて岩に触った日のことなどが清涼感溢れる文章で綴られている。そして、転機となったエベレスト遠征についても。ソロクライマーとして知られている彼も、もともとは単独で登ることに懐疑的だった。それが、さまざまな経験を経て単独というスタイルへ変わっていく。

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弱い人間が大きな岩壁に立ち向かった時、それは「山との闘い」というより、「自分との闘い」であり、自分の弱さとの闘いというべきではないだろうか。
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15歳から26歳までの自分を振り返って書かれた文章。短編集のように、できごとごとにまとめられていて、とても読みやすい。長谷川恒男という人は「こんな人だったんだろうな」と行間に人柄を感じることができ、勇気がもらえる一冊だ。

 

 

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