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夏のビーチでボタニカルライフ! 海浜植物の生きざまから知る、砂浜の本質とは

2022.07.30 Sat

大村嘉正 アウトドアライター、フォトグラファー

 夏の海水浴で、野の花に気づく人はどれだけいるだろう。砂浜を花畑にするそれは海浜植物。おそらく、ほとんどの人が素通りしていく草花だ。
灼熱の砂浜に伸びていくハマゴウの茎。
 それは読んで字のごとく「海辺の浜の植物」。西日本の在来種としてはハマボウフウ、ハマゴウ、ハマヒルガオなどが代表格だ。塩分の多い砂浜で、夏には地表温度が50~60℃になる環境で花を咲かせ、砂に埋もれても数日で地表に現れる。生命力の強い植物である。
コウボウムギ。漢字では「弘法麦」。かつては、茎の元のほうの繊維を筆の材料にしたとか。筆といえば書の達人・弘法大師(空海)ということでこの名称に。
 それなのに、各都道府県発行のレッドデータブックでは、海浜植物群落の絶滅や危機的状況がいくつも報告されている。その理由としてまず挙げられるのは、埋め立てや海砂利採取による砂浜の消滅・減少。しかし、自然そのものに見える海岸でも海浜植物群落は危ういようだ。そこでは護岸の造成、ゴミ、帰化植物などが海浜植物を脅かしている。
キク科の海浜植物、ハマニガナ。砂からひょっこりと咲く黄色の花がかわいい。
 私が以前取材した海浜植物の保護活動家は、こんなふうに説明してくれた。

「砂浜にゴミが溜まると、砂の動きがわるくなります。すると海浜植物以外の草がはびこり始める。また、飛砂を止めるための帰化植物を植えたりすると、そこに生えている海浜植物は3年ぐらいで消えていきます」
ハマゴウに寄生するアメリカネナシカズラ(黄色の糸みたいなヤツ)。国の外来生物法で要注意外来生物に指定されている。
 つまり、動く砂が他の植物を排除し、海浜植物を繁栄させてきた。波や砂の内陸への侵入を防ぐ護岸も、場合によっては砂の動きを妨げ、海浜植物に悪影響を与えるらしい。
ハマゴウの花。小指の先ほどもない小さな花弁だが、じっくり見るとビビットで美しい造形。
 海浜植物に学べば、砂浜の本質が見えてくる。それは、休みなく変化し続けるもの。波に育てられ、侵食され、風に運ばれ飛ばされながらも存在するのが砂浜であり、海浜植物はそのシンボルなのだ。あなたが夏を満喫しているのは本来の砂浜? 劣化した砂浜? それとも砂があるだけの浜だろうか。
今回の撮影地、有明浜(香川県観音寺市)。南北約2㎞の砂浜には、瀬戸内海有数の海浜植物群落がある。よりよい自然にするため、地元有志によるゴミ拾いが続けられている。

大村嘉正 アウトドアライター、フォトグラファー

四国の瀬戸内海暮らし。仕事は自然・旅系ライター&フォトグラファーで、生きかたはバックパッカーでリバーランナー。著書はラフティングガイドたちの1年を追った『彼らの激流』(築地書館)。

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