• 山と雪

【登ってみた1】台湾の低山事情。台北市の最高峰、七星山主峰は1120m

2015.12.08 Tue

宮川 哲 編集者

 先週、弾丸台湾取材ツアーを実施したAkimama編集部。台北市の第一高峰にも、しっかりと登って来ましたよ〜。台湾の山といえば、最高峰の玉山(3,952m)や雪山(3,886m)が有名ですが、こちらの名高き山々は事前の入山許可証取得と地元ガイドの同行がルール化されている山。なかなか、そう簡単には登らせてもらえません。

 ならば、許可なしでも登れる山はないものか、と現地に着いてから(もっと事前にやっておけ、という話ですが[汗])情報収集をしてみると……ありました! 台北からほど近い七星山(Qixing またはCisingとも)であれば、さらりと日帰り登山ができそうです。しかも、七星山は台北市の最高峰で標高は1,120m。一帯は陽明山国家公園という、日本で言えば、国立公園に指定されている火山エリアです。ルート上には爆裂火口があったり、カルデラがあったりと見どころ満載で、しかも下山後には温泉が待っています。これは行くしかないでしょう!!

 台北の都心から路線バスで40分ほどで登山口にアクセスできることもあり、地元の人気の山という話。山の立地といい、火山地形といい、温泉といい、なにやら日本の箱根のような存在なんだろうかと思っていたら、大当たり。かつての日本統治時代には、まさしく「台湾の箱根」と称されていたこともあったそうですよ。

 そんなこんなで、もう登山口に到着する前から頭のなかは「箱根」と「♨︎」でいっぱいに。よし、登るぞー! 温泉だぞー! と、テンション最高潮で登山口へと向かうバスに乗り込みました。

 ぼくらは、MRTの劍潭駅前からのバスに乗車。いわゆる路線バスで「紅5」か「260」という路線に乗れば、陽明山のバスターミナルまで連れて行ってくれます。このバスが、また大混みでして。日本のラッシュ並みの乗車率で、そのほとんどが学生の様子。すし詰め、ギュウギュウ詰めの状態でバスに揺られること30分ほどで、陽明山の手前にある大きな大学のキャンパスに到着。ここで大混雑からは解放されます。学生たちがドヤドヤと降りて行った後に残されたのは、ぼくらのほかには、地元の登山客ばかりになっていました。

 そうしてほどなく、終点の陽明山に到着。今度はここのバスターミナルで、陽明山エリアの周回路線「108」という小型バスに乗り換えます。これがまたスゴい。なにがスゴいって、運転手さんのドライビングテクニックです。そんなに飛ばさなくても……と思えるほどで、曲がる、止まる、加速の連続でクネクネの山道をみごとに登っていきます。手すりにしっかりと掴まっていないと、投げ飛ばされそうです。そのおかげ、かどうかはわかりませんが、ほんの10分も揺れに耐えれば、いよいよ登山口となる小油坑に到着です。

こちらが小油坑のバス停から徒歩5分圏内にある噴火口。モクモクと噴煙を上げ続ける生きた火山が目の前に。迫力あります

 この小油坑は観光地のひとつにもなっているらしく、平日の水曜日だというのに、地元の人たちで賑わっています。それもそのはず、バス停の近くには、モクモクと噴煙を上げる爆裂火口が大きな口をあけていました。しかも、かなり近くまで遊歩道がつけられており、噴火口を覗き込むこともできるほど。御嶽山のことが頭を過ぎり、少し怖くなってしまうくらいでした。

小油坑の登山口に設置されている道標。左の古い石碑には「国家公園管理」の文字。右の道標は、歩行距離を表示している陽明山エリアに共通したモノ。日本の方式とちがって、距離が短くなっていくのではなく、自分の居る位置を示す方式になっています

 登山道は、この小油坑の噴火口の縁を回っていくかたちで上へ上へと延びています。さすがに国家公園だけに、道はかなり手入れが行き届いています。足元はいい具合に、整備された石畳か石積みの階段となっています。山頂までは1.6kmほどの距離しかないので、のんびりと景色を楽しみながら登っていきます……と、思っていたのですが、標高を上げるにしたがって白いベールが密度を上げていくばかり。ポイントポイントに展望台も設けられているので、本当は眺めも相当なもののはず。案内版には「眺望 大屯山火山群峰」なんて文字とともに、うつくしい山並みの写真が載せられていたりするのですが。残念。

今回歩いた七星山の道は、ほぼすべてのルートが石畳か石段に覆われているため、非常に歩きやすい。山の感覚的には、まるで「高速道路」のような具合

七星山に登ったのは12月2日。残念ながら、曇りベースの1日に。雨は降っていなかったのだけど

 山頂までの前半の道のりでは、蒸気を上げる噴気孔がいくつもあります。たしかに箱根の大涌谷か、那須岳の登山道沿いにでもあるかのようなルートです。それと、季節が冬だけに花は少ないのですが、それでも名残はいくつもあるようです。ちっちゃなスミレがかわいかった。もうちょっと先の、花の季節にも期待できそうですよ。

こんな噴気孔があちらこちらに。温泉、沸騰していました。熱そ〜

 そうそう、季節といえば、台湾は緯度が低いだけに真冬のこの時期でもとってもあったか。この日の気温は18度でした。でも、地元の人たちは寒い寒いと言っていて「お前なんでTシャツなんだ?」と、ツっ込まれてしまうほど。話を聞けば、ときに雪が降ることもあるそうです。

 登山口から1.2kmほど登った先の展望台を過ぎると、一旦、急な石段が現れます。その石段を乗り越えると、いよいよ本峰が眼前に飛び込んできます。ここは今までに比べて平坦な場所。地形から見て、カルデラの底のような具合です。ここから山頂までは、ほんのひと押し。最後の石段を登り切れば、広い七星山主峰の頂に到着です。

七星山の主峰がやっと姿を現してくれました。こちら側から見ると、左右に平たい山なんですね。たしかに、山頂は広かったです

 山頂には「七星山主峰 Mt. Cising Main Peak 1120M 台北市第一高峰」と彫られた立派な道標が立っていました。そのすぐ近くには、台湾式の三角点が設置されています。ちゃんとタッチしておきましたよ。登頂完了! それにしても、山頂は地元の人たちで大にぎわい。台湾の山ガールたちも元気に登っていましたね。

本当は眼下に台北の市街が広がっているはずなんですけれど、見えるのは、白き空間のみ、基隆川らしき川筋がうっすらと光っているようにも思うのですが。またしても、残念
 
〈つづく--山頂から下山口の冷水坑までのルートは次回の【登ってみた2】にて〉

 
■七星山(台北市最高峰)/登山情報〈往路のみ〉
歩行時間計:約45分
小油坑(10分)最初の展望台(20分)ふたつ目の展望台(15分)七星山主峰
アクセス:MRT劍潭駅または士林駅から「紅5」か「260」の路線バス「陽明山」行きに乗車。終点の陽明山バスターミナルにて、陽明山周回バス「108」に乗り換え、小油坑にて下車。バス運賃は、陽明山までが30台湾$、周回バスが15台湾$(2015年12月2日現在)

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