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【クライミングジム カタログ】山梨県北杜・LOKU BOKU

2021.05.19 Wed

渕上健太 林業従事者、ライター

 八ヶ岳はもちろん小川山や瑞牆山へのアクセスにも便利な山梨県北杜市に4月下旬オープンした「LOKU BOKU(ロクボク)」。クライミングウォールの設計・施工のプロが、廃校となった地元小学校の体育館を開放感あふれるクライミングスポットに生まれ変わらせた。地元産の木材を使った森の雰囲気漂う空間デザインが特徴で、今後、カフェ利用やヨガ体験のほか、パソコンを広げて仕事ができるコワーキング向けのスペースなどを併設し、さまざまな世代がボーダレスに集える場所にしていきたい考えだ。


自然壁に近い曲線美

 メインとなるボルダリング壁は体育館の中央部を取り囲むように配置され、高さ約4.5メートル、幅約30メートル。課題ごとの級位や段位はあえて明記していないが、エントリー向けの「黄色」から上級者向けの「黒」まで、4種類のテープの色で難易度を区分している。

 特徴のひとつが可能な限り曲面を出して自然の壁に近い仕上がりとした施工方法。LOKU BOKUの運営会社で、クライミングウォ―ルの設計・施工を手掛ける「ボタニクス」(北杜市)社長の伊藤剛史さん(41)は「フレームには単管パイプを使わず、角材と合板を複雑に組み上げてナチュラルな躍動感を出した」と話す。この施工方法の場合、作業の手間はかかるものの壁自体の硬性も高くなり、自然の岩に近い登攀感覚を再現できるという。

 伊藤さんは、日本山岳・スポーツクライミング協会(JMSCA)の競技ルートセッターA級の資格を持ち、近隣では「クライミングジム ピラニア 南アルプス店」(山梨県南アルプス市)や「エッジアンドソファー ボルダリングパーク 諏訪店」(長野県諏訪市)などでも同様の施工を手掛け、地元クライマーたちの人気を得ている。

LOKU BOKU ロクボク 山梨県北杜市 クライミング ボルダリング ジム自然壁に近い曲面をめざしてつくられたボルダリング壁。ルーフ状の強傾斜から緩傾斜まで、さまざまなグレードが用意されている。

親子連れも安心

 LOKU BOKUが力を入れているのが、子どもたちがボルダリングに親しめる環境づくり。体育館の舞台を利用した「キッズ壁」は高さ3~4メートルで、子どもたちが登っている様子を安心して見守れるように、壁の前にはゆったりとした作りの保護者用の見学席が設けられている。まるで学芸会の舞台がボルダリング壁に置き換わったような不思議なワクワク感を味わえる。

 伊藤さんは「クライミングの敷居を下げたい。自然の岩場への入り口となったり、いろいろなひととの交流が生まれるきっかけとなったりする場にしたい」とコンセプトを話す。

 北杜市在住のアルパインクライマー・横山勝丘さん(42)も「クライミングは地元の子どもたちが地域に広がる自然を知るためのひとつの手段。クライミングを楽しむひとたちの裾野が広がり、おとなもこどもみんなが集える受け皿になる」とLOKU BOKUのオープンを歓迎する。LOKU BOKUには地元の親子連れもさっそく訪れており、親たちに見守られながら子どもたちが友達といっしょに、にぎやかにボルダリングを楽しむ光景が広がっている。

LOKU BOKU ロクボク 山梨県北杜市 クライミング ボルダリング ジム体育館の舞台を利用したキッズ壁。親子連れでも安心して楽しめる。

LOKU BOKU ロクボク 山梨県北杜市 クライミング ボルダリング ジム「クライミングを楽しむひとたちの裾野が広がり、いろいろな世代のひとたちが集える受け皿になる」と語る横山さん。

廃校舎をまるごと活用へ

 LOKU BOKUが開設されたのは2019年度に廃校になった旧北杜市立高根北小学校の体育館。地元で有機農業を営む「株式会社ファーマン」が校庭を含めた学校施設全体を市から借り受け、その中の体育館でボタニクスがクライミングスペースを運営している。

 ファーマン社長の井上能孝さん(40)は「農林業や食育などを体験できる場として、田舎暮らしをめざすひとたちの看板となる場所に学校全体を生まれ変わらせたい。地元の福祉施設の利用者が安心して働ける場にもしていきたい」と目標を話す。LOKU BOKUには、観光誘致や都市住民との交流の場としての役割を期待しているという。

 LOKU BOKUの内装には、林業に携わる地元のクライマーたちの協力で調達したサクラやリョウブ、カシノキといった地元産の天然木がふんだんに使われ、八ヶ岳山麓の施設らしい森の雰囲気を感じられるのも特徴だ。

 屋根が高い体育館の特性を生かして増設した二階部分には今後、カフェスペースを兼ねたコワーキングスペースやヨガ体験をできるスペースも整備する考え。本年度中にはリードクライミング用の壁も増設する計画だ。

LOKU BOKU ロクボク 山梨県北杜市 クライミング ボルダリング ジム地元産の自然木を活用して内装が施された二階部分。カフェスペースやコワーキングスペース、ヨガ体験をできるスペースなどが整備予定だ。

LOKU BOKU ロクボク 山梨県北杜市 クライミング ボルダリング ジム施設の運営に携わる伊藤さん(左)と井上さん(右)。

岩場からの「転進」も可能

 LOKU BOKUは東京方面から中央自動車道経由で小川山や瑞牆山にアプローチするときに通る国道141号からほど近い場所にある。雨などの悪天候で自然の岩場を登れない日でも、クライミングトリップの途中で「転進」することが十分に可能なロケーションだ。八ヶ岳南麓方面の主要登山口からもアクセスしやすいため、荒天で山に登れない場合、クライミングに転じてもおもしろそうだ。

 クライミングのフィールドに恵まれた北杜市はクライマーの移住者が多いため、地元クライマーとの交流や情報交換もおすすめ。伊藤さんは「コアな仲間も来ているがクライミングという垣根を取るとみんなふつうのひと。クライミングは施設全体のひとつの要素。クライミングをしないひとも含めて、いろいろなひとたちが集まる楽しい場にしていきたい」と話している。

LOKU BOKU ロクボク 山梨県北杜市 クライミング ボルダリング ジムウッドチップが敷き詰められた駐車場。小川山や瑞牆山、八ヶ岳方面からのアクセスが便利な立地だ。

《ジム情報》
▶︎店舗名
LOKU BOKU( ロクボク)
▶︎住所
山梨県北杜市高根町長沢2141 旧高根北小学校 体育館
▶︎電話番号
0551-45-8267
▶︎URL
lokuboku.jp
▶︎営業時間
InstagramFacebookから確認
▶︎定休日
InstagramFacebookから確認
▶︎利用料金(税込み)
初回登録料
1,000円
施設利用料(1日)
一般 1,980円
22歳以下 1,320円
18歳以下 1,100円
12歳以下 770円
※年齢がわかる証明書を提示
※1ヶ月・6ヶ月・1年の各パス、5回と10回の回数券もあり
▶︎レンタル(1日)
シューズ 300円
チョーク 100円
※コロナウイルス対策のため、施設内では原則マスク着用


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