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山口県の森・里・海を遊ぶベースが阿武町に誕生。「ABUキャンプフィールド」が山陰の遊び方を変える!?

2022.04.01 Fri

  20022年3月12日、山口県阿武町に新たにキャンプ場がオープンした。その名も「ABUキャンプフィールド」。サッカーコート約2.7面に相当する芝生の広場に、62サイトを展開する。

 キャンプ場の施設の監修を務めたのはスノーピーク。衛生面に配慮されたサニタリー棟や炊事施設、カフェを備えたビジターセンターなど、現代的な設備が充実したキャンプ場になっている。

 しかし、特筆すべきはその立地。このキャンプ場の目の前は、海。それも少し海が見えるとか、遠景に海が広がるといったレベルではなく、サイトそのものが海に接している。釣竿をつかんでテントを出れば、30秒後には魚釣りを始められる。それほど海が近い。

 キャンプ場は「道の駅阿武町」の隣に広がるため、食材の調達も簡単にできる。道の駅にはキャンプ場隣の奈古港に水揚げされた新鮮な魚介類や地域で作られた農産物が毎日並び、そのどれもが安い。ABUキャンプフィールドの炊事施設は、道の駅で買った食材を存分に調理できるよう、一般のキャンプ場よりも設備や調理器具のレンタル品を充実させている。

 これだけの情報では、買い物がしやすく設備が整ったキャンプ場のようにも思えるが、ABUキャンプフィールドはコンセプトも特徴的だ。開場にあたって掲げられたのは「キャンプを目的としないキャンプ場」というフレーズ。キャンプ場そのものの収益よりも、このキャンプ場をベースに阿武町周辺の自然と文化に触れてもらうことを目的として立ち上げられたという。

 それというのも、阿武町は深刻な人口減が続いており、その解消が急務となっているからだ。現在の町の人口はおよそ3000人。人口減の速度は全国平均の40倍にも達しており、地域の主要な産業である農林水産業への参入や移住促進が求められている。しかし、移住だけを呼びかけてもなかなか阿武町の魅力は伝わらない。ABUキャンプフィールドは、キャンプをきっかけに阿武町周辺の自然や産業を外部に知ってもらうツールとしてデザインされている。

 そんな背景を反映して、ABUキャンプフィールドは地域の第一次産業につながる体験プログラムを多く用意している。チェーンソーを使ったスウェーデントーチ作りや、魚さばき体験、海に潜って貝を拾う海士体験、特産の無角和種の生産現場を見学したのち、肉を焼き上げるツアーなど、阿武町の産業に触れられるコンテンツが多い。プログラムの指導を行なうのは、町内の林業や水産業のプロ。キャンプを楽しみながら、阿武町で営まれる暮らしを感じることができる。

 施設の充実度より「そこで何ができるか」を重要視する外遊び上級者にとっても、阿武町は魅力的なフィールドだ。阿武町はその地質の特異さから全域が萩ジオパークに指定されており、町内の随所で数千万年単位の歴史を秘めた地形・地質を目にできる。

 阿武火山群がつくった地形は見るだけでも圧倒されるが、海中に目を向ければ、起伏に富んだ水中の地形が多くの魚を育んでいる。磯や防波堤、カヤックから釣り糸を垂れれば、大型のハタや青物、スズキなどが釣れ上がる。

 釣り好きにおすすめなのがABUキャンプフィールドのオープンとともにリニューアルされた「遠岳(とおだけ)キャンプ場」(こちらの管理もABUキャンプフィールド)だ。限定5サイト、炊事棟と水シャワーしかない小さなキャンプ場だが、こちらも海までは徒歩0分。サイトの下の磯ではスノーケリングやカヤックの出艇を行なえる。

 遠岳キャンプ場から西側は、無人の断崖が数km続き、キャンプ場の目の前の磯にはこの手付かずのエリアから多くの魚が供給される。キャンプ場の東側は遠浅の清ケ浜が広がるので、釣りやカヤックツーリング、海水浴場の基地としてこれ以上ない条件を備えている。

 全国にキャンプ場は数あれど、地域起こしの核に位置付けられたキャンプ場は珍しい。地域密着を超えた「地域発信型」のキャンプ場は、小さな町と野遊びのフィールドとしての山陰をどう変えていくだろうか。

ABUキャンプフィールド(アブキャンプフィールド)
山口県阿武郡阿武町奈古2248-1(道の駅阿武町隣接)
Tel 08388-2-3000

チェクイン13:00 チェックアウト11:00
(デイキャンプ利用 10:00〜16:00)

利用料金
電源区画サイト 5,500円
フリーサイト  4,400円
デイサイト   2,750円

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