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【調べてみた】いまさら聞けない!! 山のおコトバ

(2015.06.25)

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トカゲはトカゲでもちょっと大きすぎ? でもやっぱり、オオトカゲさんは太陽サンサン、日向ぼっこに興じていました@サピ島。これで、ゴロリと腹でも出して眠ってくれれば、トカゲを決めるの言葉のイメージピッタリなんですがね

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歩荷もここまでくると、プロフェッショナル感がハンパありません。一見何を運んでいるのか分かりませんよね? 実際、二度見して、あぁ、ベッドのフレームだと納得。あまりにカッコよくて、写真撮っちゃいました。ちなみに、キナバル山で活躍するポーターさんです。つまり、歩荷のスペシャリスト!! カッチョ、ええ〜

 山登りで使う言葉はむずかしいモノ、意味の分かりにくいモノ、たくさんありますよね。山が人気の昨今、いまさら聞けない言葉もけっこう多いのではないかと思います。
 
 たとえば、代表的な言葉としては「キジ打ち」や「お花摘み」。こちらは、山中で用をたすことを婉曲に表現した言葉。前者は猟師が雉を打つかっこうに似ていることから男性用で、後者はお花畑でお花摘みをしているかのごとく、女性用の言葉です。こちら、よく知られている初心者向きの言葉ですよね。

 では、「一本立てる」と「トカゲを決める」はどんな意味?

 じつは、どちらも山中でひと休みすることを表わす言葉です。でも、微妙に意味がちがっていて、前者は、立ったままで息を整えつつも、ひと息を付くというニュアンスで、後者は、岩場でゴロリと横になって昼寝を決め込むような休息を意味しています。

 いうなれば、一本立てるは小休止で、トカゲを決めるは大休止。そんな具合になるでしょう。

 山になじみのない人には、一本とかトカゲとかなんのこっちゃ?? といったところだと思いますが、むかしの人たちは発想が豊かというのか、感受性が高いというのか、ステキな言葉を選ぶものですね。

 ちなみに、一本立てるの言葉ハジメは、大荷物を担いだボッカがひと休みするときに、荷物の下に杖をあてがって、荷を下ろさずに立って休んでいた姿から。荷物を支えた杖が、ここでいう「一本」になったわけでして。かつてのボッカの杖は、先のほうがY字型になっていたそうですよ。

 あまりに重い荷物は、簡単に背負ったり下ろしたりができないですもんね。これも、山人の知恵なのです。ところで、またまた「ボッカ」という摩訶不思議な言葉が出て来ましたね。ボッカってなんだよと、突っ込みたくなる人もいるかと……。

 でも、ボッカの前にトカゲですね。トカゲとは、まさにあのトカゲです。ハチュー類のトカゲ。トカゲは、よく広い岩場で日向ぼっこをしてますよね。イグアナやオオトカゲなんかを思い浮かべるとよく分かるかと思います。変温動物ですから、太陽の熱を受けて身体をあたためないと活動できないんです。

 つまり、「トカゲを決める」は、トカゲが大岩の上でゆっくりと日向ぼっこをしている姿から連想してあてられた言葉です。ポカポカ日差しのもと、しっかりと休む。これがトカゲを決めるの意味となります。トカゲのごとく、山上の岩場で昼寝なんかできたらとてもステキな時間が過ごせるんでしょうね。

 はてさて、最後に謎の言葉、ボッカです。言葉の響きが気になりますね。どこかボッカ(牧歌)的な雰囲気を漂わせつつも、ボッカ(墨家)の博愛を保ちつつ、そしてボツガ(没我)の境地に入りつつも、重い荷物を背負ってひたすら登る……。なんとなく言葉の意味がつながって行きそうで興味津々ですが、閑話休題。

 ここで言うボッカとは「歩荷」です。「歩く」+「荷物」で、歩荷。つまり、重い荷物を背負って人力で山へ上げること、または下ろす行為をさす言葉です。または、それを生業とする人のことも歩荷と言いますね。

 この人たち、山のスーパーマンです。富士山で活躍する強力やネパールのシェルパたちだって、歩荷の仲間になるでしょう。彼らは山小屋で使う食糧や飲料水はもちろん、ガスのタンクやら、ときには小屋の建材なんかも身ひとつで運んじゃうんです。トイレの汚物を下ろすこともありますしね。

 いま、メジャーな山域ではヘリを使って荷下ろしをすることが主流となっていますが、どの山でもヘリが飛ぶわけではありません。まだまだ多くの山域で、背負子を担いで山に登っている歩荷は多いものです。山小屋のスタッフが、歩荷になることもありますよね。山歩きをしていれば、段ボールを何段にも積んで山道を登って行く人に会ったことがあるかと思いますが、まさしく彼らも歩荷です。

 彼らのおかげで山の上でオイシいごはんが食べられ、ビールが飲めるのかと思うと、一登山者としては、まったくアタマが上がりません。道中ですれちがうと、思わず、ガンバってと声を掛けたくなっちゃいますが、これは控えめにしておいたほうがいいようです。返事なんか期待しちゃうと、彼らのペースを崩しかねませんから。

 歩荷が現われたら、口を結んですばやく道をあけること。これが、彼らへの感謝の印になるかと思います。
  
 いやはや、山の言葉はオモシロいものです。山は文化だと言われる意味は、こんなところにもあるのでしょう。でも、これらの言葉は、最近では使われにくくなっているのも事実。

 あまり廃れないように、積極的に山の言葉を使っていこうかと思う昨今です。もっと知りたい山の言葉があれば、akimamaで調べますよ〜。ではでは。

 
 
ライター
tetsu

山岳•アウトドア関連の出版社勤務を経て、フリーランスの編集者に。著書に『テントで山に登ってみよう』『ヤマケイ入門&ガイド テント山行』(ともに山と溪谷社)がある。

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