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今年はご利益3倍以上ってホント? 真実のお遍路はこうだ!

(2016.08.18)

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 今年、四国遍路はかなりの賑わい。というのも、〈うるう年〉+〈88番札所から1番へと逆に巡礼する「逆打ち(さかうち)」を行う〉=ご利益が3倍なのだ(マジ?)。また、「逆打ちをして、実際に弘法大師(空海)に会えた」いう伝説が四国遍路にはあるのだが、それが「丙申」、つまり今年。しかも丙申は60年に一度ということで、「さらにすごい御利益が!」と欲深き(笑)人々が四国に集結しているらしい!?

 そんな盛り上がりに水を差すわけではないけど、これはけっこうな思い込み。その裏には、お遍路増加で潤う観光業界のマーケティング臭がプンプンするのであります。札所の近くで暮らす四国人として、そして歩き遍路の経験者として、この機会にお遍路の真実をいくつか紹介しておきましょう。
     

1.お遍路は1番札所から、または88番札所から始めなくてはいけないのか?

 実は、どの札所(お寺)からお遍路を始めてもオッケー。四国八十八ヶ所の寺院で構成する四国八十八ヶ所霊場会の会長さんはこんなふうに言っている。

「九州や広島から船で松山市(愛媛県)に渡ってくるお遍路さんの場合、かつては52番太山寺から遍路を始めていた。つまり自分の家からアクセスしやすい札所を1番札所にすればいいのです」

 徳島県の霊山寺が1番札所になったのは、大阪方面からの巡礼者が多かったから!?

   

2.歩き遍路のほうが功徳はある?
 これについても、四国八十八ヶ所霊場会の会長さん曰く、「人との交わりがあるとか、お接待されやすいとか、自然を体で感じるという点では歩き遍路のほうがいい。しかし、心についての功徳に関しては、きちんとお参りすれば車利用でも変わりないです。何事も心の持ちよう、悟りに至る方法は人それぞれ。厳しい修行が必要というわけでもない」とのこと。

 

3.「信仰や宗派を問わず」は、本当か?
 四国八十八ヶ所を開基した弘法大師(空海)といえば真言宗の開祖で、ゆえにお遍路といえば仏教の世界。しかし、近頃では明らかに異教徒であろう外国人の歩き遍路が増加中。これは、日本の宗教の「神も仏もいろんなのがいるしね、何でもウエルカム!」なゆるさのせいかと思いきや、どうやらお遍路の原点が関わっているらしい。

 というのも、お遍路とはそもそも信仰ではなく、修行だったから。四国霊場は弘法大師が開いたことになっているが、それ以前にも四国には修験の道があり、そこを弘法大師が利用して修行した。その後、弘法大師を慕う弟子や一般の人がその足跡をたどるように四国を旅し始め、今のように88の札所を巡るスタイルになったと言われている。

  

4.お遍路することでのご利益とは何か?
 お遍路という文化が長く続いてきた理由は、やはりご利益があったから。しかし、昔のご利益は、現代のような「彼女ができた」とか「出世した」などとはちょっと違うようだ。
 
 江戸時代に遡れば、お遍路の目的として多かったのは病気平癒。その頃、不治の病の人は、最後の命の預け場所として四国遍路を選んだという。流行り病の人も、家には置けないので四国遍路に出されることがあった。

 ではなぜ病人がお遍路をしたのかというと、治癒することが結構あったから。これは現代にもあてはまることだが…… 

・お遍路で毎日体を動かすことで体調が良くなり、頑張れば出来るという自信も生まれる
・遍路ではいろんな人と交流するから精神も健康になる
・お接待(お遍路さんを持て成すこと)の文化があり、初めて会う人々に親切にされていれば、心が癒されていく

……などなどが、お遍路のご利益として広まったらしい。


 というわけで、お遍路って巡礼の旅だけど、まさにバックパッキング。ザックひとつで、自由に、手ごたえのある放浪旅をする。そして心も体も癒され、人としての成長していく……弘法大師って、日本のバックパッカーの大先輩だったんだなあ。

 
 
ライター
大村嘉正

四国の瀬戸内海暮らし。仕事は自然・旅系ライター&フォトグラファーで、生きかたはバックパッカーでリバーランナー。著書はラフティングガイドたちの1年を追った『彼らの激流』(築地書館)。

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