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<書評>「人間が偉いのか?」 狩るために登れ。丸ごと一冊服部文祥『獲物山』

(2017.01.20)

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 今、いちばん元気のあるアウトドア雑誌といえば『Fielder』。版元があの暴走族向けオートバイ雑誌『チャンプロード』も出していた出版社だけあって、あらゆる面で攻めている。

『Fielder』が雑誌の主軸に据えている(と思われる)のが「狩猟採集」だ。渓流魚や大型哺乳類といったメジャーな獲物からカエルや雑草までを「食材」と捉え、その利用方法を紹介している。

 なかでもメインの書き手として活躍しているのがサバイバル登山家の服部文祥さん。春から秋は沢を、秋から春は銃猟をテーマにして山行記録を寄せている。

 昨年末に刊行された『獲物山』は、この『Fielder』に掲載された服部文祥さんの紀行を加筆・再構成したもの。2016年秋までの2年間の活動を中心に、山行記録がまとめられている。

『獲物山』とは聞きなれない言葉だが、巻頭言によれば、「日帰りの渓流釣りや狩猟から、獲物を食べながら続ける長期間の登山まで獲物を求めて山に入る――それを獲物山という」とのこと。

 服部さんがこれまで提唱してきた「サバイバル登山」が、食料を調達しながら充実した登山を作りあげることなのに対し、「獲物山」はより獲物を得ることに主眼をおいた山行となるのだろう。

 服部さんの既刊のなかでは、技術解説書の『サバイバル登山入門』がもっともビジュアル要素の多い本だったが、『獲物山』はより視覚要素が強い構成になっている。「服部文祥のサバイバルガイド」の副題のとおり、大きな写真と紀行で氏の登山の世界と技術が展開されていく。

 狩猟採集を始めたいと思う人にとっては、その世界を俯瞰するための入門書として楽しむことができ、『サバイバル登山家』から『ツンドラサバイバル』といった文字主体の作品を愛読してきた人は、自分の思い描いてきた想像と実際の風景を重ね合わせる楽しみ方ができる。

 銃猟とテンカラ釣りについての山行記録に加えて、それぞれの猟・漁に必要な道具や技術なども解説されている。教書としては『サバイバル登山入門』のほうが詳しいが、『獲物山』は『サバイバル登山入門』刊行後に身につけた技術や情報についても触れられている。

 これから獲物山的な活動を始めたい人、あるいはすでに狩猟採集を楽しんでいる人には参考になるだろう。

 巻末には読者サービス的な一章「服部家の食卓」も収録。神奈川の自宅近くでの食材採集や飼っているニワトリの話、そして4ページにわたって愛妻自慢(!)が展開される。

 世の狩猟採集愛好家を悩ませるのが、理解ある伴侶の獲得と家庭の維持。もっとも重要なサバイバル技術は、いい嫁さんをもらうこと、という価値のある指南をもって本書は締めくくられる。全130ページ。

カバーを外すと別バージョンの表紙が登場。
・・・あれ?

『獲物山』服部文祥のサバイバルガイド
笠倉出版 ¥1,600

獲物山
トップ川遡行記
出猟日記 山のバカンス編
出猟日記 家族と山旅編
殺生余禄 45頭目の鹿

自給自足の山旅
サバイバル登山2016
サバイバル登山2015
サバイバル登山の基礎知識
ザバイバル登山装備一覧
サバイバル登山食材一覧

手を血に染めるという救済
物質文明からの逃走

命影 写真家石川竜一×登山家服部文祥

狩猟 誠実なる蛮行
出猟日記 半矢追跡編
出猟日記 古道探訪編
出猟日記 ある狩猟の過程
殺生余禄 トロフィー文化を考える
出猟日記 必然なる偶然
ライフル取得前夜、そして現在の使用銃
殺生余禄 狩猟鳥獣は単独狩猟者の夢を見るか?

天空魂 テンカラ騙し
テンカラ釣り入門 渓の翁を訪ねて
テンカラ釣行記

服部家の食卓
サバイバル登山家のアタリ嫁
索引・服部文祥語録

 
 
ライター
藤原祥弘

野生食材の採集と活用、生活技術につながる野外活動などを中心に執筆とワークショップを展開。twitterアカウントは@_fomalhaut

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