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銘酒八海山を支えたおっかさま、南雲 仁さんのこと

2017.12.13 Wed

A kimama編集部

A kimama編集部

『おっかさまの人生料理』と題した一冊の本がある。表紙に大写しになったこの白髪のおっかさまが何者なのかといえば……銘酒八海山を守り育ててきた縁の下の力持ち、いや、現在の八海醸造グループの産みの親とでもいうべきか。

 今年で、御歳86歳を数える。戦後まもない昭和26年、当時傾きかけていた魚沼の小さな酒蔵に嫁ぎ、以来、67年の月日を八海山とともに歩んできた。今や日本を代表する銘酒であるのは疑いもない八海山であるが、その昔からブランドが確立されていたわけではない。大正11年に創業した越後の小さな地酒屋は、平成の現在には世界にも進出する大企業へと発展を続けている。もちろん、その背景には酒蔵を牽引してきた男たちの努力があったのは間違いない。しかし、現八海山の企業風土をかたちづくったのは、まぎれもなくこのおっかさまだった。

 長岡の大地主の家に生まれた少女時代とは対照的に、戦後の農地改革によるあおりで女学校を辞め、農業に従事することになる娘時代、そして八海醸造に嫁ぐ19の歳……時代の大きな流れとともに酒蔵の一員になった仁さんは、挙式の翌日から酒瓶洗いやラベル貼り、配達の手伝いまで蔵人とともに汗水を流すことに。朝早くから夜遅くまで休むまもない日々を過ごすも、腐ることなく常に前向き。そんな人柄もあって、やがて4人の母親になった仁さんは、酒蔵にもなくてはならない存在となっていた。

 仁さんは、大の料理好き。いつしか魚沼の食卓を守り、酒蔵のおもてなしを一手に引き受けるようになる。その手から生まれた料理は、どれも地元の食材をその旬を大切にしたものばかり。酒蔵にはいつ何時でもたくさんの訪問客がある。その時々の心からのもてなしは、酒蔵の姿勢を示すものでもあったのだ。「木の芽のお浸し」「エゴねり」「巾着ナスの南蛮煮」「飛竜頭」。仁さんの手料理がずらりとならぶ八海山の奥座敷。そこは、銘酒八海山の大いなる営業の場となっていく。

「八海山は、仁さんのもてなしで持っている」とは、当時の酒造関係者が語った言葉だ。また、「これらはみんな母、仁が築いてきたもの」とも、現社長の南雲二郎さんも本書に綴っている。

「地元が誇れる酒をつくりたい。うまいか、まずかという以前に、いいかわるいかがあるじゃございませんか。いいわるいの区別がにごってはなりませぬ。そこは筋を通さねばなりませぬ」。

 これは、仁さんの語る八海山のこと。

 いやはや、どんな手料理なのかが気になって仕方がない。あの八海山を育て上げてきたおっかさまの献立とは……。秋の夜長におっかさまの一皿を想像しつつ、八海山を片手にページをめくる。そんな一夜はいかがでしょうか?

 

■『おっかさまの人生料理』
編著 森田 洋
発行 デナリパブリッシング
発売 ぶんしん出版
1,200円+税
※巻末カラー「おっかさまの手づくり料理60選」にて、おっかさんの魚沼の手料理が目で味わえます。

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