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【連載】日本のロングトレイルを歩く vol.02〜ロングトレイル好きの4人に、その魅力を語っていただきました!

(2018.06.01)

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 Akimamaの連載企画「日本のロングトレイルを歩く」の第二弾は、自他共に認めるロングトレイル好きの4名の方々に「なぜロングトレイルを歩く」「印象に残っている日本のロングトレイル」についてお話を伺いました。

 まずはじめは、Akimamaでもおなじみ、アウトドアライターとして各誌で活躍中の森山伸也さん。

森山伸也(もりやま しんや)
里山暮らしに惚れ込み、北信の山村へ移り住んだアウトドアライター。現在は新潟県在住。北欧のロングトレイルを日本にはじめて紹介したひとりで、著書に『北緯66.6° 北欧ラップランド歩き旅』(本の雑誌社)がある。

(写真=大森千歳)

なぜロングトレイルを歩く?

「山登りと違うのは、ロングトレイルには旅の要素が詰まっていることですね。地元のひとと会話したり、地物を食べたり、歴史・風習に触れたり、ローカル線にのったり。山・森・沢などの自然要素に加えて、旅行の要素を内在したハイブリットな旅のカタチといえるでしょう。それが、ロングトレイルの魅力なのかもしれません。
 1日、2日トレイルを歩くことは、非日常の行為です。しかし、4、5日とトレイルを歩くうちに、非日常の行為が、日常の生活へと変化していきます。時間がゆっくりと流れ、食事や休憩にリズムがでてきて、テントの狭い空間が心地よくなって、山々の風景が見慣れた景色になって、自分の体に馴染んでくる。トレイルを歩くというよりも暮らすという感覚に近づいていく。その感覚がすごく楽しいというか、生きている充実感があるというか、なんだか小気味いいのです」

印象に残っている日本のロングトレイルは?

「やっぱり信越トレイルでしょう。11年の秋に、5日間かけてはじめてスルーハイクしました。信越トレイルのブナ林に惚れ込んで、その翌年、麓の村に移住しました。
 信越トレイルは、麓に暮らす人々に山の恵みをもたらす里山です。春には山菜をとったり、夏にはイワナをとったり、秋にはなめこをとったり。また、新潟と長野を結ぶ峠道(古道)が12箇所もあったり。人々は信越トレイルとつながって生きてきました。人とつながった自然があり、原生林の美しい森もある。テントを背負って、そんな稜線を80キロメートルも歩けるのです。四季のメリハリもすばらしい。豪雪地で稜線には8メートルもの雪が積もります。四季をかえて、何度も歩ける楽しみがあります。テント場が計5ヶ所用意され、麓には民宿やコテージも。宿泊のスタイルを選べるのもいいですね」

信越トレイルといえば、ブナの森。信越トレイルのある関田山脈は、麓に暮らす人々に恵みをもたらしてくれる「里山」でもあります。ブナの森とともにある暮らしの痕跡が、トレイルにはたくさん残されています。ブナの「あがりこ」なんていうのもそのひとつ。また、天然記念物にも指定されているモリアオガエルにも出会えるかも。(写真=Akimama編集部)

 続いて、以前Akimamaに寄稿していただいた、山岳エンデュランスレース「トルデジアン」の挑戦記が好評だったライターの中島英摩さん。彼女も大のロングトレイル愛好家です。

中島英摩(なかじま えま)
テント泊縦走から雪山登山まで1年を通じて山に通う。趣味が高じてライターとなり、トレイルランニングの取材・執筆をメインに、国内外の長距離レースにも出場している。特技は走りながら取材すること。

なぜロングトレイルを歩く?

「ただただとにかく長い時間、できるだけ長い時間山にいたい。道中いろんなことが起きる旅感がほしい。そうするとピークを取るだけの往復ではなく、デイハイクでもなく、山谷を繰り返すロングトレイルがわたしには向いているって思いました。
 山登りを始めたのは、仕事で疲れ切っていた20代で、山はどんな悩みもちっぽけに思えるほど寛容でした。その感覚がたまらなく気持ちいいもんで『まだ下山したくない!このまま隣の山にも、あの山にもあの山にも行きたい』と思ってると、山頂からずっと先までトレイルが光ってみえた気がしたんです。
 それからは縦走を好み、テントを担いで“山”ではなく“山脈”を歩くようになりました。振りかえれば遥か遠くまで自分の歩いて来た道すじが見えて、前を向けばとんでもなく遥か遠くまでこれから自分の足で目指す山が見える、そのどまんなかにいる時がなにより最高ですね。自分の足を頼りにあんなところからあんなところまで、歩けるだなんて!
 冒険のワクワクとひたすらに歩く旅。何も考えずただ自然に身を任せれば、途端に日々の窮屈な生活から解き放たれて自由を取り戻せます。数々のセクションを歩き切った達成感は、世間の荒波に揉まれてすっかり失ってしまった自信をちょっと取り戻すことができるんです。自分を再発見できる旅、それがわたしのロングトレイルです」

印象に残っている日本のロングトレイルは?

「ひとりで歩いた中央分水嶺高島トレイルがいまでも忘れられません。
 京都出身で、現在は両親が滋賀に住んでいることもあり、地元関西の山を歩こうと思ったことがきっかけです。
 高島トレイルは前半こそ眺望があるものの、静かな里山のトレイルで、“必要以上に整備されすぎていない” ところが魅力じゃないでしょうか。茶屋も小屋もない、テン場もなければ水場もほとんどない。それゆえに、道標やトレイルロープが少なくて、地図を読んでいても迷うような場所もあり、コンパス片手に地形を見て、水場を探し当て、その日の行程と幕営場所に脳みそをフル回転させる。動物は小さなものから大きなものまで。まるで巨大な迷路に飛び込んだかのような感覚で、次々に攻略しながら歩く日々は感覚が研ぎ澄まされてとてもエキサイティングでした。歩いている間、出会った人はたった3人でした。
 最大5日間のつもりで入山しましたが、天気に恵まれすぎて毎日Tシャツが絞れるほど暑くて、しまいにはビールが飲みたすぎてやや駆け足になり、2泊3日で踏破しました」

高島トレイルのテープはほんのわずか(ほぼ最初だけ!)。迷いやすいので常に地図を持ってサムリーディングしながら歩く。(写真=中島英摩)

 続いて、料理研究家でありAkimamaではご夫妻で山ごはんの記事を書いていただいている山戸ユカさん。

山戸ユカ(やまと ゆか)
玄米菜食とアウトドア料理を得意とする料理研究家。2013年に生まれ育った東京を離れ、八ヶ岳南麓に移住。季節の野菜を中心としたレストラン「DILL eat,life.」をオープン。自然を楽しむことを提案する編集ユニットnoyamaとしても活動。著書に『DILL EAT,LIFE. COOKING CLASS』(グラフィック社)他多数。HP「Dill eat,life

なぜロングトレイルを歩く?

「旅をする感覚と同じですね。
 もともと旅好きで、若い頃は夫と二人で7ヶ月ほどバックパッカーで放浪したことがあります。今でも休みを作っては2週間ほど東北へ車中泊をしながらスキー旅にでかけたり。
 衣食住をすべて背負って歩く山行はそんな旅と同じで、旅行ではなく旅と言うのはやはりある程度長い時間や距離があってこそなのだと思うのです。
 なんで歩きたいのかと言えば、仕事や日常とは全く違う環境に身を置くことで、心を解放したいからかな。あと長く歩いていると自分の事がよくわかるような気もします。
 何が楽しいかといえば、どんどん変わる景色や季節の匂いなどを感じられる事と、ある時からふっと身体が軽くなるような感覚を味わえること。これは3日くらいの山行では感じられないですね。山を森を歩くように順応していく感覚です」

印象に残っている日本のロングトレイルは?

「ジョン・ミューア・トレイルの食料シュミレーションとして歩いた、立山から上高地の1週間ですね。
 遠くに見えていた槍ヶ岳がどんどん近づいてくるのは感動的でした。そして歩いた道のりを振り返ることができるのもうれしい。
 長く歩いていると、同じテント場で毎日一緒になる人たちがいて友達になれること。この時はオランダ人カップルと日本人の男の子と仲良くなり、夕食をシェアして食べたことなどが印象的でした」

立山~上高地の間に通った雲ノ平。この数年前に私だけ友達と行っていたけれど、あまりの素晴らしさにいつか浩介と再訪したいと思っていました。その思いが叶ったことと、この時も天気が最高によくてしかも雲ノ平山荘のテント場は貸切!! 最高の1日を過ごしました。天国とはこんな場所かも、と思える場所です。(写真=山戸浩介)

 最後に、『HIKE / LIFE / COMMUNITY』のイベントで知り合ったULハイカーの玉沖一成さん。ご夫婦でジョンミューアトレイルをセクションハイクした経験もあるそうです。

玉沖一成(たまおき いっせい)
神奈川在住のハイカー。20代から親しんだ登山を起点とし、近年はハイキングカルチャーを探求。MYOG(メイク・ユア・オウン・ギア)で自ら考案したテントや道具で山旅に勤しむ日々。ハイクはもとより、気ままなロングトレイルは大好物。冬はクラシックなテレマークスキー、春はテンカラフィッシングなどを取り入れ、季節を問わず自然の中に入り浸っている。

なぜロングトレイルを歩く?

「普段、自然の中をバックパッキングで歩く行為=ハイク、というのは自分たちにとって特別な時間であり日常と切り離されたものかもしれません。ロングトレイルという行為で長い時間を歩き寝泊まりし自然の中に身を置いていると、それ自体が日常となって色々な気づきが生まれます。例えば『足るを知る』という言葉があるけど現代ではそれをなかな体現できないと思う。ロングトレイルではなるべくシンプルに1gでも荷物は少なく軽くしたいわけだけど10日以上自然の中にいても必要なかったものを持ってたりするし、その反対に足りないものもあったり。『なぜ、ロングトレイルを歩く?』っていうとそんな気づきを普段の生活に還元することでしょうか。
 日常というか長い人生の中で『気づき』を還元するっていう思考のサイクルが生まれると、またロングトレイルに行きたいと思い始めるんです。外に出て様々な知恵と五体を使って体を動かしシンプルに生活していると気づくことがたくさんある。
 ロングトレイルの良さのひとつに人々との繋がりもありますね。ハイカー同士で知り合った時に『あのロングトレイルではこんな気づきがあった』なんて話をします。同じトレイルを歩いて過ごしても人それぞれ感じる事には個性があって気づく事も違うし。それを共有できるのが楽しいですね。 ハイカー同士でロングトレイルの話をしている時ふと同級生のような親近感を抱くことがあるんですよね。
 気づくこと、それを共有したり違いを感じたりすることは自分の生活の一部になっていて、ハイク無しではこれからも考えられないかもしれません」

印象に残っている日本のロングトレイルは?

「オフシーズンの『岩手山・八幡平+秋田駒ヶ岳の温泉トレイル』。僕らが旅したのはハイカーもまばらな11月で時折雪がチラつく初冬の季節でした。裏岩手奥羽山脈の主要なルートに自分たちでアレンジした温泉とトレイルを繋ぐ道をハイクしたんです。無人の山小屋とテント泊を併用しながら八幡平から南を目指し乳頭温泉に抜ける4日間の行程で、歩くモチベーションが『毎日の温泉』という面白いトレイルになりました。
 日中、野生動物以外は誰とも会わない日もあり奥深い東北の道を満喫できました。山小屋は無人といっても薪ストーブがあり雰囲気も抜群で初冬の気候には暖炉がありがたく、地元ハイカーのボランティアで担ぎ上げた薪に表敬しながら体も心も温まる良い時間を過ごせました。主要ルートから少し下ると各秘湯へ道を繋ぐことができるため『今日はどの温泉まで行く?』といった会話から始まる気ままな雰囲気が良くて、僕らをさらに愉しくさせてくれました。
 最終日の乳頭山から夕日に照らされた田沢湖に感動しました。そこから少し進んだところに名も無き秘湯があって、乳白色の源泉をたたえた手掘りの野天風呂で旅を締めくくることができました」

裏岩手温泉トレイル 乳頭山へ続く道は山頂へ向かうにつれ季節の変わり目が凝縮された風景が印象的。霧氷のトレイルを抜けた先には夕日に照らされた秋駒ヶ岳の稜線と遠くに田沢湖がキラキラと輝いていました。

 四者四様の想いをお聞きできた今回のインタビュー。読んでいると“なんだか一歩踏み出したくなる”そんなワクワク感が伝わってきますね。

 今回、ロングトレイル好きの読者のみなさまからも、ご意見をお聞きしたいと思います。以下のフォームからご投稿ください。
 お寄せいただいた投稿は、後日、本連載内で紹介したいと考えています。また、ご投稿いただいた中から抽選で5名さまにサロモンのソフトフラスクをプレゼントいたします。みなさまからの投稿お待ちしております。
※当選された方には、メールにてご連絡の上、お届け先を確認させていただきます。
※応募の締め切りは、7月10日を予定しています。

SOFT FLASK 500ml/17oz SPEED
大きなキャップ式で、飲むと圧縮され小さくなるソフトフラスク。1/4 回転で閉められるキャップも特徴のひとつ。底の部分に強度を持たせているので、行動中でもポケットへの出し入れもしやすい。ロングトレイルや登山など長い行動が続くアクティビティには、いつでも水を含める状態をつくっておくことがポイントに。サロモンの17OZ SPEEDはハイカーにぴったりのアイテムです。
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ライター
A kimama編集部
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