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50年前、イヴォン・シュイナードが提唱した「クリーンクライミング」。そして現代、「繋ぐ壁」として体現された

2022.03.31 Thu

河津慶祐 アウトドアライター、編集者

 1972年。いまから50年前、ピトン(ハーケン)を主力商品として創業、ベストセラーでもあったシュイナード・イクイップメントは、そのカタログ上で岩への負担を少なくする「クリーンクライミング」を提唱した。ピトンをカムやストッパー(ナッツ)、ヘキセントリックといったプロテクションへ置き換えることによって、リスやクラックに痛々しいピンスカー(ピトンの打ち跡)ができてしまうことを防ぎ、岩での体験や、自然を未来の世代へつなげるというムーブメントである。

 シュイナード・イクイップメントといえばパタゴニアの前身であり、名前からわかる通り、パタゴニアの会長であるイヴォン・シュイナード氏が創業者だ。

 クライミングを通した最初の環境保護思想でもある「クリーンクライミング」について語ると長くなるので、ここでの説明は省くが、イヴォンがどのようなことを感じ、考えていたのかを「パタゴニア東京・神田ストア」で感じることができる。

 2021年10月より、登山やクライミングに特化したテクニカルな製品のみを扱う店舗として生まれ変わった当店では、2022年3月17日から、「クリーンクライミング」のコレクション全ラインナップに加え、その歴史や文化を感じることができる展示を期間限定で開始した。

パタゴニア Patagonia 神田 クリーンクライミング 繋ぐ壁 倉上慶大 横山勝丘 ジャンボ 屋久島 Shouta Kikuchi © 2022 Patagonia, Inc.

パタゴニア Patagonia 神田 クリーンクライミング 繋ぐ壁 倉上慶大 横山勝丘 ジャンボ 屋久島 Shouta Kikuchi © 2022 Patagonia, Inc.

パタゴニア Patagonia 神田 クリーンクライミング 繋ぐ壁 倉上慶大 横山勝丘 ジャンボ 屋久島 Shouta Kikuchi © 2022 Patagonia, Inc.

「クリーンクライミング」の展示では一貫してイヴォンの思いが綴られているのだが、一点、一風変わったパネルが展示されている。

「繋ぐ壁」

 それは日本のクライマー、横山 “ジャンボ” 勝丘さんと倉上慶大さんが屋久島の岩場を訪れた様子を撮影したものである。

パタゴニア Patagonia 神田 クリーンクライミング 繋ぐ壁 倉上慶大 横山勝丘 ジャンボ 屋久島

「この島に相応しいクライミングのスタイルは何か? 僕と倉上君には明確な考えがあった。クリーンクライミングだ。すなわち、残置支点を使わずにギアを駆使して登るということ。壁の形状がそれにうってつけだったし、そうすることによって、50年後も輝くオンリーワンの岩場になるとの確信があったからだ」(「繋ぐ壁」のパネルより抜粋)

 50年前に「クリーンクライミング」のムーブメントが起こり、それが現代ではどのようになっているか、という問いの答えのひとつが、このフィルムに込められている。

「クリーンクライミング」にはさまざまな意味が込められているが、そのなかでもっとも注目されるのは “持続性” についてだろう。

 「繋ぐ壁」では、リムーバブルプロテクション(ナチュラルプロテクション)を使用することによって、岩場を傷つけることなく、長期にわたって登攀を続けられるようにすること。

 そして、「クリーンクライミング」という概念を子どもたちにも体験させ、未来に繋ぐこと。

 これらに主眼が置かれているように感じた。

 この「繋ぐ壁」というのは、屋久島での開拓を行なっている際に見つけた岩場の名称だという。デシマルグレードで5.3や5.5ほどのグレードの岩場だが、ふたりとも、この岩場があるからこそ、屋久島はワールドクラスのクライミングエリアになる可能性を秘めているのだという。

 詳しくは「繋ぐ壁」を見ていただけたらと思う。

「繋ぐ壁」はパタゴニアのYouTubeにて、今日、3月31日の21:00よりプレミア公開する。上映中にはLiveチャットにて横山さんと倉上さん両名にリアルタイムで質問ができるという。

 イヴォンが提唱した「クリーンクライミング」がどのように受け継がれているのか。50年たって、ふたりがどのように体現したのか。ぜひ、その目で確認して欲しい。


パタゴニア Patagonia 神田 クリーンクライミング 繋ぐ壁 倉上慶大 横山勝丘 ジャンボ 屋久島 Masazumi Sato ©2022 Patagonia, Inc.
「繋ぐ壁」プレミア公開へはこちらへアクセス
https://www.youtube.com/watch?v=VRQEqPVAKSY
2022年3月31日(木)21:00より

──2020年春、コロナ禍で海外への挑戦が閉ざされた横山勝丘は新たなクライミングエリアの開拓を求めて、初めて屋久島を訪れた。想像以上の岩場の豊かさにワールドクラスのエリアになる可能性を確信したが、ローカルクライマーとの間に小さなしこりを残してしまった。翌年、改めてローカルクライマーとともにエリア開拓することを決意し、倉上慶大とともに再び屋久島へと向かった。人、スタイル、時間がつながり、クライミングコミュニティはより深みを増す。開拓というプロセスをローカルクライマーと共有し、ともにエリアをつくり上げることで、2人はクライミングの奥深さを再発見した。──
(YouTube PatagoniaJPの「繋ぐ壁」の説明より抜粋)

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