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日用ナイフは「コンパニオン」と「スクォートPs4」のコンビがいい感じですよ

(2016.11.09)

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 高山から海の中まで、いろんな場所でいろんな刃物を使ってきました。

「だいたいは都市と里山・里海。ときおり大自然」というライフスタイルのなかでナイフを試した結果、現在の私が普段使いしているのはモーラナイフのコンパニオンとレザーマンのスクォートPs4。

 ご近所での野遊びから数日に渡る自給自足キャンプまで、この2本があればたいていのシチュエーションをカバーすることができます。

「最初に買うナイフはどれを選ぶべきか」という問題は、野外活動を始めた人がひっかかる問題でもあるので、ナイフを始めて選ぶ人へのアドバイスも兼ねて、ナイフ選びの考え方について持論をまとめます。いくらかでもみなさんの参考になるとよいのですが……。

汎用ナイフは「気軽に使える」ことがいちばん大切だ!

「研ぎやすく、長く刃がもつ」という、よいナイフの大前提を満たしているうえで、汎用ナイフにおいて私が重要だと思うのは次の6項目です。

① いろんなものがよく切れる
1本で全ての作業をこなせる刃物はありません。薪を割るなら斧が適当ですが、斧では小さな細工はできません。また、切れ味鋭く小回りが利くナイフであっても、太い薪を割るのは難儀です。鋼の包丁は美しい刺身を引けますが、欠けやすく錆つきやすい。薪作り、料理、細工……。野外での作業に合わせて、それぞれ専用品を持ち歩くわけにはいかないので「どんなものでもほどほど切れる」汎用性の高いナイフを1本選び出すことになります。数泊の野外生活では、生活道具や料理を作ったり、獲物をさばいたりしなくてはいけないので、多くの人が刃渡りにして9〜12cm、刃の厚みが2〜3mmのナイフに落ち着つくのではないでしょうか。

② 軽い
サバイバルナイフのような大きく重たいナイフもありますが、よほど深い藪をこいだり、大型の獣を獲らない限り必要ありません。ナイフは使わない間の性能も重要です。つまり、旅の途中のただの一度の薪作りで活躍することより、使わない間に行動の邪魔にならないことのほうがよほど重要です。持ち歩きが負担にならない重さは(人にもよるでしょうが)70〜150g程度になると思います。

③ 目立つ
出番が多く、いろんな場所で使い、小さいものほど無くしやすいものですが、ナイフはこの条件にぴったり当てはまります。ナイフを無くすとその後の行動がかなり制限されるので、少々格好はつかなくても鮮やかな色のほうがおすすめです。

④ 安い、気軽に使える
どんなに切れ味のすばらしいものでも、名工の作でも、必要な場面で使うことを躊躇してしまっては本末転倒。必要な場面で出し惜しまずに使える価格で、強い思い入れのないものが本来の仕事を果たします。

⑤ 必要な時に必ず手元にある
登山やカヤックツーリングなどでは、肌身離さずナイフを持ち歩けますが、現在の都市生活や近郊のハイキングでは、ナイフを持ち歩くことが躊躇われる空気感があります。しかし、ナイフが必要な状況はナイフがない時にやってくるもの。周囲を威嚇せずに持ち歩けることもナイフに求められます。

⑥素手ではできない作業を行なえる
「ものを断つ」という能力は素手ではできない作業の最たるものですが、そのほかにも、1点に大きな力をかける、金属が使われた道具の修理など、素手だけではできない作業が求められることがあります。「切る」という機能に加え、これらのことをある程度こなせると単機能のナイフよりも格段に役立ちます。


 ①〜④の条件を総合した時に、ナイフはもっとも条件にあっているのがモーラナイフのコンパニオンでした。刃渡りは10cmで刃の厚みは2.5mm。刃にはストレートの部分、カーブ、ツンと尖った切っ先があり、調理や木工などが無理なく行なえます。刃はステンレスなので錆びづらく、やや柔らかくて鈍りやすいものの、研げば簡単に刃がつきます。重量は実測で116g。

 この刃の厚みが2.5mmというのが絶妙で、これ以上厚いと丈夫だけど刃が鈍角になり、これ以上薄いと切れ味はよいものの刃が欠けやすくなってしまいます。

 値段も2000円と低価格なので遠慮なく使うことができ、私は峯側をグラインダーで落として魚の鱗を引けるようにしています。こうすると海の旅で鱗取りを持ち歩かずに済み、また、鱗を引く際にエッジを鈍らせないので、気持ちよく魚をさばけます。

 キャンプに行く時にはメタルマッチと一緒にしておき、海に潜る時は100均のショックコードでケースとハンドルをつないでいます(ナイフのハンドルはプラスチックなので、熱した鉄棒を当てれば簡単に穴があきます)。

 1本で山、川、海をカバーし、ほとんどのことをストレスなくこなせる正真正銘の汎用ナイフといえるでしょう。

1人で6役な小型プライヤー

 そして、コンパニオンではクリアできない⑤と⑥の条件を補完しているのが小型マルチプライヤーのスクォートSp4。プライヤーに小さなナイフとヤスリ、ハサミ、栓抜きとマイナスドライバーを装備しています。

 車の鍵ほどの大きさで、郊外での釣りなどコンパニオンを持ち出すほどではない野外活動では、これをキーホルダーにして持ち歩いています。

 ナイフにないプライヤーの特徴が「小さな1点を強くつかめること」。この機能は野外でたいへん重宝します。魚の口にかかった鉤をはずす、バックパックやブーツの金属部分の修理といった場面で活躍します。

 以前、仲間と南の島の奥地に釣りに出かけた時、砂を噛んで回らなくなったリールをプライヤーについたドライバーで分解・修理したことがありました。こういった作業はナイフだけでは行なえません。

 また、魚の腹をあける程度であれば、プライヤーについた刃でも十分こなせます。

 重量はわずか56g。しかし「小さいけれど、重量以上の仕事をこなす」のが小型マルチプライヤーの魅力です。

 大型のマルチプライヤーなら、しっかりしたナイフとドライバーも付属するので、より使いやすく思えますが、ネックとなるのはその重量。持ち歩くごとにその重さが気になりだし、ついには私は仕舞い込んでしまいました。大型のマルチプライヤーだと、「使わない間」の負担が大きすぎるのです。その点小型のマルチプライヤーは、軽いから気軽に持ち歩けて、不意の場面で活躍します。

 こんな理由から、私は小さなマルチプライヤーを「基本のナイフ」にして、それに汎用ナイフを組み合わせています。多くの場合はコンパニオンですが、登山で荷物を軽くしたい時、料理などにしか使わない時はオピネルのNo.8(実測46g)を携えることもあります。また、大型の魚を食料にするような旅では、コンパニオンより5cm刃が長いモーラナイフの748MG(目印のテープを巻いた状態で実測174g)を愛用しています。

 大変便利なマルチプライヤーですが、一点だけ気をつけたいのが携行と所持の問題。銃刀法では問題のないはずの短い刃がついたプライヤーであっても、職務質問などに遭った場合、事情聴取および没収の憂き目にあうことも(担当者の気分次第ではさらに面倒なことになるかも……)。

 現代の日本では刃物を気軽に使いづらい雰囲気がありますが、ナイフは野外活動の基本。上手に使っていきましょう。

■モーラナイフ/コンパニオン
¥1,900+税
http://www.uneplage.net/?pid=66758075

■レザーマン/スクォートPs4
¥7,400+税
http://www.leatherman-japan.com/prod.php?prod_id=40

 
 
ライター
藤原祥弘

採集系野外活動を中心に執筆とワークショップを展開。著書に『海遊び入門』(小学館・共著)ほか。好きな獲物はカンパチとノコギリガザミ。twitterアカウントは@_fomalhaut

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