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【TOSHI-LOWインタビュー】現状を嘆くより行動を。小さな一歩が大きな流れにつながる。

(2018.07.21)

フェスのTOP

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スポークスマンとして、あるいはフジロックを象徴する存在のひとりとして、毎年のようにフジロックに出没しているTOSHI-LOW。BRAHMANとしては5年ぶりのフジロック登場となる。どんなメッセージをステージから発してくれるのだろうか。

ー BRAHMANとして初参加したのが99年。フジロックの変化をどう感じていますか。

 もちろん感じていますよ。20年前は装備も含めてみんなが初心者だった。みんなが手探りのところからはじまって。数年して快適にフジロックを過ごしたり、フジロック通になっていったりして、フジロックを楽しみだしたりしたが故に、今度はフジロックという存在を自分のものだというふうに思い過ぎる人たちが出てきたことによって、その人たちが「フジロックはこうあるべきだ」という勝手な妄想を膨らませていった。そしてフジロック以外の世代であったり、例えばフジロックと毛色の違ったバンドが出た際に文句を言うみたいな流れが生まれたときに、ああやっぱり変わっていくんだなって思って。いわゆる老害みたいな (笑)、こだわりとか信念とはまた別の、自分たちのものだっていう所有感と排除感。俺はそれがまったく好きじゃないんですよ。

ー その感覚って好きが強くなり過ぎるとどうしても出てきますよね。

 出てくるし俺たちにも向けられる。「お前らを見に来たんじゃねえよ」というような感情をわざと出してくる人たちはやっぱりいる。俺的にはフジロックは自分の心の拠り所のフェスだと思っているけれど、他の人から見たら「お前らはいなくていいよ」って思われていることもわかっているし。でもその厳しさも俺はフェスではありだと思っているから燃えるけど(笑)。

ー 20年という時間には社会全体の変化もあります。この20年で右傾化しているというか、戦争が身近なものになっている。パワハラやセクハラという言葉も社会のなかで当然のように使われているし。

 どこも小っちゃい社会ですからね。苗場に1日4万人とか5万人とかが集って、小さな社会を作るわけでしょ。そのことがどこかしら社会の縮図であって。もちろんロック好きの開放的な心の持ち主ばかりが4万人集まることが理想だとは思うけど、やっぱり100人にひとりはバカだし、もっと増えていけばずるいことをする奴がいるし、犯罪する奴もいる。社会的な考え方が右傾か左傾にかかわらず、偏っていくことの割合がそのまま反映してくるものだと思う。

ー 社会という視点で考えれば、いろんな人がいなければおもしろくないですから。多様性があることによって個性も引き立つわけですし。

 そうなんですよね。いろんな人がいて、いろんな人が自分の意見を言ってもいいっていうことが、実は本当はおもしろい。だけどそれを言う最低限のルールは、他の人たちを排除しない、差別しないっていうことだと思うんです。共存するスペースをお互い明け渡す。

ー 具体的に20年で変わったところってどこに感じていますか?去年はゴミがすごく多くなっていました。

 若い世代の方が、ちゃんとしていますよね。なぜなら、自分が能動的に行こうと思ったときにはすでにフェスがあったし、俺たちが子どもの頃より若い世代が子どもだった頃の方が街はきれいだったと思う。俺たちの時代ってもっと猥雑さもあって、すごかったじゃないですか。生活排水も汚かったし、川には泡みたいなものがポンポン浮かんでいて泳ぐなんてことはできなかったし、臭いし。子どもの頃の街の裏側って汚いイメージがあって。今の時代の方がキチンとしている子の割合的には多いんじゃないかな。じゃあ誰が捨てているかっていうことですよね。

ー 去年は雨がずっと降っていたということも汚かったひとつだろうし、海外から来た人が多かったこともひとつの要因としてあるのかもしれません。

 ゴミが落ちているときに、じゃあどうすればいいのかって思うんですね。フジロックが汚くなったと嘆くのは簡単ですけど、じゃあ誰かのゴミをあなたはひとつでも拾いましたかっていう意識が足りないんだと思います。フジロックが汚くなったっていうことで終わるんじゃなくて、目の前にゴミが落ちていて、ゴミステーションがそこにあるんだったら、誰のゴミかわからないけど、持っていっちゃえっていう気持ちの余裕が、去年のフジロックに関しては少なかったんじゃないですかって思う。その原因が降り続いた雨だったのかもしれないし、もちろんやり散らかした人が多かったのかもしれないけど。俺は個人が大事だし、ロックでひとつになろうなんて思ってもいないし、みんなで手をつなごうなんてヘドが出る。だけどああいう場に自分がいたとしたら、しゃあねえけど誰かがこうしてしまったら持ってちゃおうと。例えば誰かが倒れていたとしたら見て見ぬふりはできない。フジロックを共有するというイメージの低下があるんじゃないですかね。俺たちがフジロッカーなんだよって威張っていたおじさん、おばさんがいたとしたら、それをやるべきだと思うんですね。私たちのフジロックをきれいにしようって。率先してそれをやる。そしたらそれを見ている人たちは「あ、そうか」と思うはず。意識の低下を嘆くより、ひとつでいいから自分で行動してみる。その背中は誰かがちゃんと見ている。それは若い子かもしれないしマナーの違う外国人かもしれないけど、何人かは真似をすると思うんです。少なくとも、それをやっている人の前ではゴミをポイと捨てられない。

ー ひとりずつが好きにつなげる行動をそこで表現することが必要。

 それが低下してしまっているんじゃないですか。

ー 他者の視線を意識し過ぎているのかもしれませんね。その総体として社会のコミュニケーションとして健全じゃないような気がします。

 それが今の社会だとしたらそれも認めつつ、そうじゃない社会を楽しむために、こういうフェスのような非日常の中で自分たちが楽しむために、じゃあどうすればいいのかっていうことを考えれば逆の方向が見えてくる。そっちじゃないんだよ、こっちなんだよって見えてくる。人がぶつかってきそうになったら、ちょっと横にずれるっていう感覚でいいわけじゃん。

ー 知らない人だと許せなくなってしまうとか攻撃してしまう人間の性ってどこから生まれてくるんでしょうね。

 それも人間。だけど今年のフジロックでは、ほんのちょっとだけ人にも優しくしてみるとか。そして、文句を言う前に自分で行動する。大きなことを変えるには、小さな一歩からだと思う。その小さな一歩の流れに自分がなってみる。それをやってからの文句なら聞きますよ。

TOSHI-LOW (BRAHMAN
1995年にBRAHMANを結成。1999年にメジャーデビューを果たし、苗場1年目のホワイトステージでフジロック初出演を果たす。東日本大震災以降、継続的に復興支援活動を行うために非営利活動団体として幡ヶ谷再生大学復興再生部を発足させた。6人編成のアコースティックユニットOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDとしても何度もフジロックに登場している。BRAHMANとしては2013年以来6年ぶりの苗場降臨。

CD『梵唄 -bonbai-』
5年ぶりとなるフルアルバム。平易な言葉で深い心情や豊かな情景を描き出す楽曲が生まれる一方、怒りを綴ったハードコアナンバーも吐き出した。4人が創る音楽はより豊かに、より深くなった。そしてより多くの心に届くようになった。

(Text=Takashi Kikuchi/Photo=横山マサト)
 ※この記事はFestival Echo '18を再編集し掲載しています。
 ※インタビューの全文は「富士祭電子瓦版」にて掲載中!

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ライター
菊地崇 a.k.a.フェスおじさん

フェス、オーガニック、アウトドアといったカウンターカルチャーを起因とする文化をこよなく愛する。フェスおじさんの愛称でも親しまれている。

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