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いつまでもフェスやライブをみんなで楽しむために。フェスキッズへのイヤーマフのススメ
2025.06.16 Mon
菊地 崇 a.k.a.フェスおじさん ライター、編集者、DJ
子どもがヘッドホンのようなものを付けてフェスやライブを楽しんでいる光景をよく見かけるようになった。欧米では、フェスやライブ会場での子どものイヤーマフ着用は一般的になっているという。フジロックでも数年前からオフィシャルグッズとしてキッズ用イヤーマフを販売している。ASIAN KUNG-FU GENERATION、サカナクションやYOASOBIのライブでは、イヤーマフの無料貸し出しも行われている。家族みんなでフェスやライブを楽しむための必須アイテムであるイヤーマフのススメ。
スマートフォンの急速な普及〜定着によって、日常的にイヤホンやヘッドフォンで音楽を聞くことが当たり前になった。音楽を聞くということは、一方で耳に負担をかけている状態でもある。大きな音を長く聞くことで耳にダメージを与える。そのダメージによっていつか「聞こえにくく」なっていくし、難聴の原因のひとつにもなっていく。
WHO(世界保健機関)は、イヤホン難聴が増えることによって2050年には4人にひとりが難聴になるという報告書を出している。 WHOが提示した聴覚障害にならない安全な音のレベルの目安は、大人で音量80デシベル、子どもは75デシベルをそれぞれ1週間に最大40時間。75デシベルの音というのは、人によってはうるさく感じられるレベルで、大きな音での会話や洗濯機の音ぐらいだという。115デシベルの「ロックコンサート」の耳のために安全な視聴時間は、1日でわずか28秒しかない。
耳のことだけを考えれば、ライブには行かないほうがいいのかもしれない。だけど、やっぱりライブやフェスには大きな魅力があるし、その時間からもらったもので自分の世界は広がっていくことも少なくない。難聴になるリスクを減らすこととは、大きな音を長時間にわたって聞かないこと。ライブやフェスにおいて、大きな音を小さくさせる方法のひとつがイヤーマフやイヤープラグの使用だ。大きな音から子どもの耳を守ること。それはみんながいつまでも音楽を楽しむことにつながる。
後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)
ライブという空間を開かれた場所にするために
ライブという場所は文化として開かれたものでありたい。子どもだから聞いちゃいけないってことはありません。ただ無防備なままライブに参加する子どもが増えてしまったのでは、入場を規制しなければならなくなってしまうかもしれない。防御策としてはじめたのがイヤーマフの貸し出しでした。
どう聞こえているかはあなたの問題であり、一緒に楽しんでいるあなたの子どもの問題です。みんなが心地いいと感じた音でも、私にはちょっと危険に感じる。その感覚に正直でいてください。人の目を気にすることなく、長く音楽を楽しむために、自由に音楽を楽しむために、自分と自分の子どもを守って欲しいと思っています。
草刈愛美(サカナクション)
誰もが楽しめる場としてのライブ
母親になってから、例えば夜にご飯を食べにいくことすら気にかけるということがあります。保護者が自分の楽しみを断念してしまう。みなさんが、自分の意志じゃないところでライブに行けないっていう状況を減らすことができたらいいなと思います。
子どもがいても安心して楽しめる場所、逃げ場があるとか見やすい場所があるライブやフェスが増えてきていると思います。どんどんお客さんも多様化しているし、ライブは誰もが楽しめる場であってほしい。
耳が気になって検査に行ったことがあります。そのときに、一度悪くなってしまった内耳の細胞は元に戻らないということを教えていただきました。自分の耳だけではなく、お子さんの耳も守っていただけたらと思っています。
小池光子(ビューティフルハミングバード)
それぞれの人に合った音楽の聞き方がある
イヤーマフについて、最初は「あの子は何をつけているんだろう」って思っていました。「大きな音は子どもに良くないから、イヤーマフは耳の保護のためなんだ」。そのことを知ることで「耳は守らなきゃいけないもの」とか「大きな音じゃないほうがいい人もいる」っていうことを想像できるようにもなれると思うんです。
2016年くらいから、なんとなく耳の調子が悪いなって感じるようになりました。そして耳の調子が悪くなったことで、はじめて耳は劣化していくものだと知りました。年齢を重ねていくことで耳の聞こえは悪くなっていく。年齢に限らず、それぞれの人に合った音楽の聞き方があるし楽しみ方がある。ひとりひとりがその思いを受け入れて共有する。そんな場がじわじわ増えていけばいいなって思います。
ポートレート写真(草刈愛美/ビューティフルハミングバード):須古恵
※NPO日本ミュージックフェスティバル協会によって、アラバキや朝霧JAMなど数々のフェスやライブイベントで子ども用イヤーマフの無料貸し出しが行なわれている。
フジロックではキャンプよろず相談所で貸し出し予定。
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