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【コラム】残りの冬を数える

(2017.03.04)

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 齢五十を越えたら、残りの冬を数えるようになった。
 あと何回冬を迎え、あと何回雪山を訪れ、あと何回粉雪と戯れられるのだろうと。

 まだまだ身体は動くけれど、筋肉とか、関節とか、目とか、反応速度とか、昔と比べたら明らかに衰えている。逞しくなったのは面の皮だけ。

 仮に65まで達者だったとして、残りの冬は今年を入れて15回。ひと冬20日滑れたとして300回。そのうちパウダーに当たるのが3割として約90回。今シーズンはすでに5回当たったから5/90も使ってしまった。まぁパウダーばっかり滑りたいわけじゃないけどね。

 もし病気や怪我をしたら残りの数はさらに減るし、もし事故に遭遇でもすれば、そこで終わってしまうかもしれない。

 そうならないためには、足腰を鍛え、健康に気を遣い、遭難しないように知識や技術も学ばなければならない。

 引き算ばかりじゃ寂しいので、1シーズンに滑る日数を増やすとか、もっと滑れる土地に移り住むとか、足し算の要素も考えてみたりすると少し気が楽になる。

「五十越えたぐらいで何弱気になってんだ!」と怒られるかもしれない。敬愛する先輩方は、まだまだ現役バリバリだ(いろいろな面でね)。励みになるし、見習わなければとも思う。

 モチベーションはまだある。九州の離島育ちで雪山なんてまるで縁がなかったが、22歳のときに初めて野沢温泉でスキーをしたときの、見晴るかす雪山の神々しさ、きめ細かい粉を踏んだように鳴く雪の音、颯爽と滑るスキーヤーの美しさは、今でも鮮明に蘇る。スノーボードを始めてからはさらに雪山が好きになった。グルーミングバーンを彫刻刀のように走るエッジのトラック、新雪を筋斗雲のように走る浮遊感、地形やパイプのトランジションで味わうGの変化……。今でも、上達したい、いい雪に会いたいという気持ちは衰えていない。だからこそ残りの冬を大切にしたいとも思う。

 こんなこと、今までちっとも考えなかった。
 こんなこと、皆さんに伝えることでもない。

 でもちょっとだけ伝えたい。
 滑れる健康な身体と、滑るための資金を稼げる仕事と、滑りに行かせてくれる家族と、一緒に滑れる仲間と、そして雪が降る日本の環境などなど、諸々恵まれていることに感謝して、よろこびを噛みしめながら、一冬、一日、一本、一パウを大切にしたほうがいいんじゃないかなとだけ伝えたい。

 などと語るは、すでに老いの述懐か。
 ボヤいちゃってスミマセン。

 
 
ライター
渡辺信吾

アウトドア系野良ライター。デザイナー、Webディレクター、コーディネーターとしても活動中。波乗り、雪乗りで一年中真っ黒。 ホームページ「NORA」

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