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五輪・世界選手権のスキーハーフパイプメダリスト、小野塚彩那と滑ってきた!

2017.03.20 Mon

アクタガワ タカトシ クリエイティブディレクター

世界選手権へと旅立つ寸前、束の間の休息を取りに帰国していた小野塚彩那さんにスキーテスト会場で遭遇。直撃取材を敢行してきました!

 2014年、ソチオリンピックのフリースタイルスキー女子ハーフパイプ競技で、銅メダルを獲得した小野塚彩那さん。欧州・北米勢の高い壁に阻まれて、なかなかメダルを取るのが難しいスキー競技で、日本人がメダルを獲得したということで、大きなニュースとなったのは記憶に新しいと思います。そして今年行われたスノーボード&フリースタイルスキー世界選手権では、ついに世界の頂点に立つ金メダルを獲得! シーズン中はほとんど休む暇もなく、国内でその滑りを見ることはなかなか難しいのですが、今回は世界選手権の直前、たまたまオフで帰国したタイミングで彼女をサポートするスキーメーカー“アトミック”のスキーテストが行われたため、その会場に姿を現してくれました。そこで今までのスキーへの取り組み方や、来年オリンピックイヤーを迎える現在の心境について、色々と話を伺ってみました。

ゲレンデを軽く流していても、とにかく抜群にスキーが上手い!そして本当に楽しそうに滑っていたのが印象的です

「私の実家は石打丸山スキー場の近くなのですが、父は元スキージャンプの選手で、地元のジャンプ少年団の監督もつとめていました。ですから必然的に物心ついた時にはスキーをしていて、小学校に入ってからはアルペン競技(レース)に熱中していました。今もそうなんですけど、子供の頃からとにかくスキーをするのが楽しくて、学校から帰るとすぐゲレンデに出て、ナイターまでひたすら滑り続けていましたね。休みの日なんて朝8時から夜9時まで滑り続ることもありました(笑)」

 そう、小野塚さんのスキーキャリアの原点はレースだったんです。またお父様の指導のもと、ジャンプも飛んでいたのだとか。お陰でスピードや飛ぶことには恐怖を感じることがまったくないそうで、こういった子供の頃の体験が素養になっているようです。

普段は履かないレース用のスキーを試乗して「楽しいー!」と叫んでいました。高い滑走技術を持つことが、何よりも彼女の最大の武器と言えるでしょう

「そのうち全国で戦えるようになって、インターハイやインカレにも出ましたが、残念ながら日本代表になることは出来ませんでした。でもスキーはレースだけじゃないし、私はスキーの上手さでは誰にも負けない自信があった。だから大学1年生の時、はじめて技術戦(全日本スキー技術選手権大会)に出てみたんです。結果3位に入賞することができて、その後もレースを続けながら技術戦には5回出場しました。そのうち4回は表彰台に登ったかな」

 なんと、初出場でいきなり3位! その世界を知らない人にはピンと来ないかもしれませんが、プロのスキー教師を含め日本中のスキーの達人が競い頂点を争う技術戦の本戦で決勝に残るのは、並大抵のことではありません。これこそ小野塚さんのスキーの上手さを裏付けるエピソードと言えるでしょう。

今回は大回転と回転のセットもテスト用に用意されていたので、久しぶりだというポールにもアタック。これはかなりのレアショットです!

「はじめてハーフパイプの大会に出たのは2009年ですね。上越国際スキー場で日本オープンというフリースタイルの国際大会が開かれたんです。技術戦の本戦の直前だったんですけれど、ちょっとハーフパイプに挑戦してみようかなと思って。それが最初の試合でした。その時は一応6位でしたけど、ただ飛ぶだけで何も技なんて出来なかったし、その後はハーフパイプの試合に出ることもなかったんです。本気で取り組もうと思ったのは、2011年の4月にソチオリンピックでハーフパイプが正式種目になると聞いてからですね。ハーフパイプをやってる友達から世界のレベルも聞いていたし、これならオリンピックに出れる!って思ったんです。今考えると何の根拠も無いんですけど(笑)」

斜度25°の急斜面で180!そのまま後ろ向きの直滑降で降りていく小野塚さん。ハーフパイプの選手としては当たり前のスキルなのですが、実際に間近で見ると圧巻です

 レースをやっていた頃は、特にオリンピックに出たいという感情はなかったそうです。それはもしかすると、遠すぎる道のりに対する諦めの気持ちだったのかもしれません。しかしハーフパイプという新しい世界が開けたことで、一気にオリンピックが現実味を帯びてきた。そしてそれは、高度なスキー技術を持ち、どんなに高く飛んでも恐怖を感じないという小野塚さんにとって、天職とも言える種目だったと言えるでしょう。

「でも初めて出場したワールドカップではブービーだったんです(笑)。それなりに自信があったので、凹みましたね。でもそれから猛練習して、シーズンの終わりにはエックスゲームに招待されて、5位に入れたんです」

スキーを脱いだ素顔はとてもチャーミングで気さくな小野塚さんですが、今までハーフパイプで怖いと思ったことは一度もないのだとか。凄すぎます……

 Winter X GAMES(ウインター・エックスゲーム)は、フリースタイルのスキー・スノーボードの世界で、ある意味頂点と言える大会。日本ではオリンピックなどに比べ知名度が低いですが、世界中から選りすぐられた、一握りのトップ選手だけが出場できるエックスゲームは、出場するだけでも大変なのです。

「エックスゲームはとても大きな存在ですね。とにかく出場資格を得るのが大変だし、オリンピックと違って毎年あるので、毎シーズン全力で勝負をしないとダメなんです。だから私の場合、オリンピックに向けて云々というのはないですね。とにかく常に全力勝負。それしかない」

 とはいえ日本人共通の興味としては、やはりオリンピックが気になるところ。ソチでのメダル獲得、そして2018年開催のピョンチャンオリンピックは、小野塚さんにとってどんな意味を持つのでしょうか?

「ソチでメダルを獲れた時は、本当に嬉しかったです。オリンピックが終わったあとは取材や撮影もすごく増えたし、個人スポンサーも増えました。スキー連盟の体制も変わったし、周囲の環境は大きく変わりましたね。ただ私自身は何も変わってないと思う。オリンピックが終わってもほかの大会はあるし、とにかく前に進むだけです。でもひとつ言えるのは、来月の世界選手権や次のピョンチャン五輪で銅メダルだったら、きっとそんなに嬉しくないだろうなってこと。今の私の実力なら優勝を狙えるし、絶対金が欲しいです。最低でも銅メダルは獲る。そういうつもりでいます」

個人スポンサーでもあるジープのグランドチェロキーが移動時の相棒。海外を転戦するためには資金獲得も重要な仕事。そうした交渉もすべて自分でやってきたそう

 ソチオリンピックの翌年以降、小野塚さんはエックスゲームで3年連続して銀メダルを獲得しています。途中採点基準が変わるなど、採点競技ならではの難しさに阻まれている面もあるようですが、実力的にはいつ優勝してもおかしくない状況。2大会連続のメダル、それも出来れば金色に輝くゴールドメダルを、小野塚さんが表彰台の中央で受け取れるように、応援したいと思います。

毎日欠かさないコンディショントレーニング。日が暮れるまで黙々と走り続けていました

 取材の数日後、日本を飛び立った小野塚さんは、スペイン・シェラネバダで開催されたスノーボード&フリースタイルスキー世界選手権に出場。そして既報の通り、見事優勝し金メダルを獲得しました! また男子モーグルでも初出場の堀島行真さんが2冠に輝くなど、今世界選手権では日本人選手が大活躍。ピョンチャンオリンピックが非常に楽しみな状況になってきました。来シーズンの小野塚彩那さんにも期待しちゃいましょう!

(インタビュー/文/写真=アクタガワタカトシ)

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