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【がんばれフェスおじさん 2】クライミングという壁へ。自分の身体を使って登れ!

(2019.04.05)

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 もう10年以上も前のことだけど、アメリカ・カリフォルニア州のヨシュアトゥリー国立公園を車で走っていた。「ヨシュアトゥリー」は1987年に発表されたU2の名盤のタイトルで、とにかくこの場所に行ってみたいとずっと思っていた。

 車でも一周するのには1日を要するほどの広大な沙漠地帯。夕暮れが近くなってきて、奇岩が乱立するエリアが車の前方に現れてきた。近づいていくと、その奇岩の上には人が登っている。クライミングをして、自分の好きな岩に登ってサンセットタイムを過ごそうとしているクライマーたちだった。高さ数十メートル、もしかしたら100メートルを超える巨岩もあったかもしれない。そこに命綱もつけずに登っていくスリルジャンキーたち。登ったところからは、どんな景色が見えるのだろう。そこから見える風景をいつかこの眼でも見てみたいと思いながら、その夜の宿を探すためにヨシュアトゥリーを後にした。

 相模原のストーンマジックに行ったのは、実は今回が3回目。どっちが最初だったのかは忘れてしまったけれど、イベント取材とインタビューで訪れたことがある。インタビューのときに「ちょっとやってみますか」と言われて挑戦してみたものの、ホールドを握ったまままったく動くことができずに、とてもじゃないけれど上までなんていくことができないと思ってしまった。シューズもはかずにやろうとしたから、無謀だったのだろうけど。

地域最大級の広さを誇るストーンマジック。4歳のお子様からボルダリングが楽しめるキッズエリアも完備している。

 まったく動けなかったのだから、クライミング初体験と言っていいだろう。まずはシューズとハーネスを借りる。普段履くシューズは、指一本分が余るくらいが最適のサイズと言われているけれど、クライミングシューズはつま先に隙間のないピッタリとしたものがいいという。履いてみると詰まっているような感覚だ。このほうがつま先に力が入り、小さなホールドにも立てるらしい。ハーネスも落ちる自分を守ってくれる重要なアイテムだ。

 準備体操を念入りにして、壁へ。

ケガをしないこと。これを最低限のテーマにしているアウトドアチャレンジ。準備体操は必須。

ちょっときついと感じるくらいがちょうどいいらしい。後半ではつま先が痛くなってきた感もあり。当日は寒かったので厚手のソックスだったけど、薄手のソックスのほうがいいみたい。

 ルートグレードがあるということもはじめて知った。なるほど、やみくもに登っているのではなく、自分のレベルで課題とされたルートを登っていくのか。ストーンマジックのルートグレードは5.7から5.12dまで用意されていた。壁の角度によって、「90度」「100度」「110度」「スラブ」とある。90度が垂直の壁で角度が大きいほどオーバーハンギングしてくる。グレードは数字が低いほうが初心者用で90度が登りやすいという。ボルダリング「90度」のいちばん簡単なピンクテープの8〜9級に挑んだ。

腕は伸ばす。その方が負担がかからない。確かに曲がっていては、常に負荷がかかってしまっている。

 登るためのコツを教わらずに壁へ。スタートから次へ進めず落下。今回の先生はアキママメンバーのKさんとクライミングウェア・ブランドINGAのSさん。ふたりが登って見せてくれた。簡単にスイスイ上がっていく。ルートは違うのだけど、ふたりと同じように登るイメージを持って2回目へ。次のホールドに手を伸ばす。そしてその次のホールドに届かせるために足場を探す。そして一歩一歩上へ。何分経っただろうか。腕がワナワナしてきた。やっとの思いでゴールへ。3メートルくらいの高さだろうか、振り返るとかなり高い。満足感も高い。

INGAのSさん(右)はジムでクライミングをするのは数年ぶりと話していたが、トライしていくうちに感覚が戻ってきたとか。

 腕と指には、相当の負担がかかっていた。筋肉痛まではいかないものの、疲れの兆候が感じられる。登っていた姿を見てくれていたKさんが「常に腕が曲がっている状態ですから、基本腕は伸ばして。次のホールドに手を伸ばすときは、腕の力ではなく足で登るイメージで」とアドバイスしてくれた。腕を曲げたままでは、常に負荷がかかっている状態で、疲れも早くやってくるという。確かに登っている最中に腕と指はずっと緊張したままだった。

自分では思いっきり手を、足を上しているつもりなのだけど。理想と現実のギャップはかなりある。

 腕と指の筋肉の疲れを軽減させるために、しばし休憩。ストーンマジックには、ボルダリング、フリークライミング、アルパインの壁がある。KさんもSさんも、何度も挑戦できないかと思ったのか、次はフリークライミングのトップロープをやってみましょうと促してくれた。トップロープは、ボルダリングよりも高く登るクライミングで二人ひと組で登る。天井から吊り下げられたロープをハーネスに結び、もう一方はビレイヤーと呼ばれる登らずに下でロープを確保する人が持ち、安全を確保してくれる。

ハーネスを付けて結ばれる。下から見ても高いけれど、上から見るとさらに高い。

 トップロープも、もちろん初心者の5.7。足場もホールドも登りやすいのか、ボルダリングよりも、比較的簡単に上まで登ることができた。下から見るのではそれほど高く見えないのだけど、上からは本当に高い。手を離して壁から離れてくださいと言われても、なかなかそれができない。

 もっとも簡単なルートではあるのだけど、達成すると次のルートにチャレンジしたくなってしまう。2度3度と登っていくのだけど、抑えていたホールドから手が離れてしまう。気持ちは続けたいと思っているのだけど、身体は正直に指と腕の疲れを発信しているのだろう。結局トップロープで上まで行けたのは最初の一回のみだった。

手を離す時にはちょっとした勇気も必要。無理にしがみついている方が、ホールドに顔をぶつけることになるのかも。

 月曜の午後にも関わらず、ストーンマジックは多くの人で賑わっていた。ひとりで来ている人も少なくない。僕よりも年上のグループの人たちもいた。そのグループは10人近くいただろうか。僕には到底できないリードクライミングをしている人もいる。壁に設置された金具に登りながら自分でロープを通し、安全を確保しながらのクライミングだ。ジムのように日常的に身体をケアしつつ、次なる山のチャレンジを目指しているのだろう。

月曜の午後にも関わらず、多くの人がクライミングを楽しんでいたストーンマジック。当日は冬の寒さが戻ったような日だったけれど、動いているうちに内面から「燃えてきた」。

 短時間で集中するのではなく、インターバルを取りながら挑戦していく。そうやってストーンマジックで時間を過ごしている人が多い。トップロープの次は岩稜登攀のためのアルパイン。これがボルダリングやトップロープよりも難しい。模範を見せてもらってから登ろうとしても、どこに手を伸ばし、どこに足を置けばいいのかわからない。イメージ通りにいかないのはわかっているのだけど、それにしてもまったく次の一手、次の一歩が動き出せない。どのホールドを掴めばいいのかという指示があるボルダリングやトップロープは、初心者には入りやすいクライミングなのだろう。

登るというイメージを膨らませる。けれど、時間の経過とともに身体に正直に疲れが蓄積されていく。

 ゆっくり、休みつつチャレンジしているものの、指と腕に疲労が蓄積しているのがわかる。登ろうとして力を入れようとしても、するりとグリップから手が離れてしまう。

 ストーンマジックに入って3時間が過ぎた。同じくらいに入った人たちも、今日は十分とクライミングを終わらせている。ビジター料金で平日の1日が一般で2,500円。会員になれば午後6時以降のレイトアワーパスなら1,500円。
 クライミングは自分の身体と精神に向き合う時間のように感じた。まったく繊細さは持ち合わせていないのだけど、クライミングしている間は、指の先にまで意識が集中している。動くために次の一点に集中する。その時間が気持ちいい。

今までに経験したことのない指の疲れ。筋肉がピクピクしているのがわかる。時間とともに筋肉痛は増していく。これも経験

 我が家に帰った。心地よい疲労であればよかったのだけど、指と腕は悲鳴をあげていた。翌日、もしくは翌々日にやってくると思っていた筋肉痛が早くも襲いかかってきている。ビールのプルトップが開けられない。ペットボトルの蓋を回せない。お風呂に入ろうと思ったのだけど蛇口が回せない。髪を洗いたかったのだけど腕を満足に動かせない。おそらく箸やペンを持てなかっただろう。こんな指の強烈な筋肉痛ははじめての経験だった。

 ストイックさもありながら、ゲーム感もあり、達成感もある。筋肉痛は避けたいけれど、締め切りのないときにまたクライミングをしたい。いつかヨシュアトゥリーの岩に登って、そこから大地に沈む夕陽を見てみたい。

クライミングパーク ストーンマジック
神奈川県相模原市中央区共和3−10-20
【営業時間】
(月〜金)13:00〜22:30
(土)10:00〜21:00
(日・祝)10:00〜20:00

取材協力 =アドベンチャーガイズクライミングパーク ストーンマジックinga

 
 
ライター
菊地崇 a.k.a.フェスおじさん

フェス、オーガニック、アウトドアといったカウンターカルチャーを起因とする文化をこよなく愛する。フェスおじさんの愛称でも親しまれている。

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