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Akimama× さかいや トークセッションレポート “巨人たちの旅・トルデジアン”の楽しみ方
2019.07.12 Fri
去る5月29日(水)、Aimama・さかいやスポーツ共催のトークセッションの第一回目「“巨人たちの旅・トルデジアン”の楽しみ方」を開催しました。
トルデジアン(Tor des Geants)とは、ヨーロッパアルプスで行われる世界有数の山岳レース。リミット150時間のあいだに総距離330kmを走りぬくというもの。
今回のスピーカーは、そんな過酷なレースを完走された、Akimamaでもお馴染みのライター中島英摩さん、数々のトレイルランニングレースで実績を残された鈴木潤子さんと福井奈穂さん、3名の女性にご登壇いただきました。
中島英摩(なかじま えま)
トレイルランニング歴7年
旅好きアウトドアライター。テント泊縦走から雪山登山まで1年を通じて山に通う。趣味が高じてライターとなり、登山やトレイルランニングの取材・執筆をメインに、国内外の山岳縦走大会やトレイルランニングの長距離レースにも出場している。ロングトレイルを好み、とにかくたっぷり時間をかけてたくさんの距離を旅する派。
【主なロングレース戦歴】
<国内>
信越五岳110km/STY/上州武尊山田昇杯120km/IZU TRAIL JORNEY/信越五岳,Fun Trails100/ UTMF/ASO ROUND TRAIL/分水嶺トレイルA,/分水嶺トレイルB
<海外>
TDS/UTMB/Tor des Geants2017/GARMIN100
鈴木潤子(すずき じゅんこ)
トレイルランニング歴 10 年
日用品メーカー勤務。夫が見つけてきたOSJのフリーペーパーで鏑木さんがUTMBを走っている姿に感動。ここを走ってみたい!と夫婦でモンブランをめざす。(夫はblog「めざせツール・ド・モンブラン」をスタート。)その後、Tor des Geants、HURT 100 mile、Tahoe Rim Trail 100mileなども夫婦で参加。夫はレースの感動を共有できるよき理解者であると同時に、頼れるサポーターでもある(日々感謝・・・のつもり)。旅のようなロングトレイルが好き。
【主なロングレース戦歴】
<国内> 信越五岳 110km (2009,2010,2011) / 信越五岳 100mile (2017) / UTMF (2018) / OSJ Ontake 100km (2009) / OSJ Ontake 100mile (2011, 2015, 2016) / OSJ Koumi 100mile (2016, 2017) / トレニックワールド 100mile in 彩の国 (2017)
<海外> CCC (2009) /UTMB (2010) / PTL (2017) / Tor des Geants (2015, 2016) / HURT 100mile (2016, 2017) / Tahoe Rim Trail 100mile (2018)
福井 奈穂(ふくい なほ)
トレイルランニング歴 9年
2010年にトレランを始めてすっかり山に魅了される。白山ジオトレイルがきっかけとなり、超ウルトラの山の世界へ。ナビゲーションにも興味を持ち、最近は主に、地図読みを伴う300km前後の山岳レースや、山岳ロゲイニング・オリエンテーリングなどに出場。景色を楽しみながらゆっくり長く山を旅することが好きで、SEをしながら、休みを見つけては日本アルプスを縦走したり、海外のロングレースに挑んでいる。
【主なロングレース戦歴】
<国内>
STY / UTMF / 白山ジオトレイル / 上州武尊スカイビュー / 信越五岳 / 阿蘇ラウンドトレイル / 滋賀一周ラウンドトレイル/OMM Japan / 日本ロゲイニング選手権 / 富士山麓ロゲ / ロゲイニングチャレンジ菅平高原
<海外>
CCC / UTMB / Tor des Geants / PTL / Euforia / Swiss Peaks Trail 360
まずは、走り始めたきっかけからトレイルランにはまっていった経緯、そしてトルデジアンのレースでの楽しかったことや、辛かったことなどをレース中に撮影した写真のスライドなどを交えてお話しいただきました。
具体的には、デポバッグの容量のこと、6箇所あるライフベースのこと、レース計画の実例など、実践的な話題も色々。
お三方が共通して楽しかったと言っていたのは、食事が美味しかったこと。各ライフベースに用意されている食事はもちろん、休憩可能な山小屋、コース途中の私設エイドで振る舞われたバーベキューなど、かなり充実しているそうです。
中島:レース中はライフベース以外にもたくさんの山小屋を通るんですね。オフィシャルのエイドもあれば、そうでないものもある。エイドの食べ物は無料なんですが、オフィシャルではない山小屋でご飯を注文できます。どういうシステムかわからないんですが、たまに無料だったりします。
鈴木:でもユーロも持っておいた方が、有料でも美味しいご飯を頼めたりします。
中島:カードはほとんど使えないですね。
また、3,000m級の山を3つも越える第二セクション、積雪の可能性もあるマラトラ峠など、絶景ポイントや気温の変化などについても興味深い内容でした。
セッション中、いくつかの質問に答えていただいたのでこちらでも抜粋して紹介します。
Q.英語が苦手なんですが、海外レースのエントリーって難しくないですか?
福井:最近はローカルなレースでなければ多言語化してるので、Google翻訳とかを活用すればなんとかなりますね。
中島:Googleも英語から日本語の翻訳って精度が高くなってますよね? 英語対応しているところはいいんですが、イタリア語やフランス語しかないのを、そのままGoogle翻訳しようとするとおかしな日本語になるので、一旦英語に翻訳したものを日本語にするというテクニックは使えます。
Q.お金って、エントリー費とそれ以外にどれくらいかかりますか?
中島:私の時がエントリー費が8万円で。
福井:私たちが参加した2016年は、6万5千円ぐらい。徐々に値上がりしてますね。
鈴木;その当時の往復航空券がエミレーツとかカタールとかの中東系で10万円ぐらいでした。
中島:私の時も、エミレーツで10万円ぐらい。あとは、レースの前泊・後泊分のホテル代とバス代とか。
鈴木:ホテルに関しては、私たち同じホテルを使ってまして、チェックインして、レース終了まで荷物を置いたままお部屋をキープできるんですが、宿泊した分だけ料金をお支払いすればいいというシステムなんです。
中島:トルデジアンのスタート/ゴールの街クールマイヨールの人たちはトルデジアンを一大イベントとして捉えていて、非常に協力的なんだと思います。一泊1万円ぐらいと高いんですが、レースの前後で使った分だけでいい。でもリタイアして戻ってきてしまうとそれからの分は払わなきゃいけないんで、必死でリタイアしないように頑張りました。8万円でヨーロッパの山に一週間、飲み放題、食べ放題、山小屋泊まり放題は安いですよね。普通だったら山小屋も高いし、食事も高いし。日本の100マイル超のレースでエントリー費4万円ぐらいと考えたらめっちゃ安くないですか?
Q.どれくらい眠れますか?
福井:私は、トータルで14時間ぐらいですね。平均すると1日2時間ぐらい。でも1日目とかは興奮しちゃって眠れないんですよね。なんとか目を瞑って身体を休めようとしたんですが……。で、そんな時は寝ずに進もうと。でも後半は眠くて仕方ないぐらいになります。トルデジアンはライフベース以外に山小屋でも寝ることができるんですよ。ライフベースは簡易ベッドで寝心地が悪いし、人が多くて騒がしいので寝にくい印象でした。山小屋は、マットレスとお布団があって寝やすい。なので私は後半は山小屋で寝るようにしてました。
中島:でも最大2時間までという制限があります。
鈴木:ちゃんと起こしてくれるんですよ。時間を決めて起こしてくれるように頼めて。
中島:「どれくらい寝る?」って聞かれるんですよ。
鈴木:ライフベースでもちゃんと起こしてくれるよね。
中島:ベッドの場所と寝始めた時間が管理されてて、ちゃんと起こしにきてくれるんですよ。二度寝したりしたら「二度寝してるよ。さっき起こしたけど、大丈夫?」ってかんじで起こしてくれます。ありがたいですね。
この他にも色々と興味深いお話が聞けました。この日の参加者には、今年トルデジアンにチャレンジされる方や、海外レースにチャレンジしたいという方々もいらっしゃいましたので、かなり参考になったのではないでしょうか。
彼女たちは決して特別なトレーニングを積み重ねたアスリートでありません。ふとしたきっかけで走ることが好きになり、山が好きになり、その延長線上に海外のレースがあったというだけです。レース中は辛いこともあったと思いますが、みなさんそれぞれに素晴らしい経験をされたのが、お話から、その表情からもヒシヒシと伝わってきました。それは、装備やテクニカルな知識を得る以上に、参加された方々にとって刺激になったのではないでしょうか?
Akimamaではこれからも、さまざまなテーマでトークセッションを開催したいと思っています。
気になるテーマがありましたら、ぜひ参加してみてください。
(イベント協力=さかいやスポーツ)