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冬の手前の晩秋のひととき。いま、登りたい山。

(2013.10.31)

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晩秋と言えども、まだ麓の森は秋まっ盛り。目を頭上へと転じれば、ほら、木の枝にもかわいい秋の松ぼっくりが待っていてくれました

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登り始めの森は、薄らと黄色く化粧を施したカラマツの森。この森も、いっせいに黄色くなったら、相当な迫力かと思います

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こちらが眼下を埋め尽くした雲海と、そこに浮かぶ南アルプスの山並み。右から鋸岳、仙丈、甲斐駒、北岳に鳳凰三山。みごと、くっきりと見えました。この日の夜に雪雲がやって来て、翌朝は真っ白な山並みが見えたそうです

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編笠山は2.524m。標高もしっかりありますよね。日帰りの山としては、健脚向きですが、その分、いろいろな景色が楽しめるので、得した気分になれますよ。道標の後ろに見えているのは、権現岳。そして、いちばん左にあるピークが八ヶ岳の主峰、赤岳です

 北アルプスや富士山など高い山々のてっぺんは、もう真っ白な綿帽子をかぶっています。先々週の週末に初冠雪となった山々が多かったのですが、ちょうどそんな時期に登っていた山を紹介したいと思います。

 大丈夫、麓からでも日帰りでピストンできる山です。

 この時期は、標高を上げるにしたがって、まっ盛りの秋、晩秋、初冬、冬枯れ、うっすらとした雪の世界と、季節の移ろいの微妙な変化が目の当たりにできる特別なとき。

 そして今回、お勧めの山は標高2,524mの南八ヶ岳・編笠山です。

 編笠山は、八ヶ岳連峰の最南端にあります。名前の通りに編笠をカポッと被せたように長い裾野を引く山で、目の前には南アルプスの連なりやら、富士山に中央アルプス、そして北アルプスまでが見渡せる、とても展望のいい山です。

 登山の起点となるのは、山梨県の小淵沢。中央自動車道の小淵沢ICから車で30分弱の山腹に、観音平というところがあります。ここには大きな駐車場があり、その脇から編笠山へと続く登山道が森のなかへと続いています。

 観音平を起点にすれば、登り始めの足慣らしで小1時間ほど歩いていけば、休憩ポイントの雲海展望台へと到達します。ここまでは、薄らと黄色くなったカラマツの林が目を楽しませてくれました。

 また、甲高く鳴くシカの声が遠く近くに響き渡ります。森がスッキリとしているからか、なぜだか動物の声が身近に聞こえてくるようでした。

 雲海展望台は残念ながら、雲の中。雲海の名があるだけに、さぞかし長めもよいはずなのですが。ちなみにここの標高は1,880m弱といったところです。

 周辺の森は、カラマツ林から落葉広葉樹へと変わっています。登ったのは、もう2週間も前なので、おそらく今では葉も枯れ落ちていることでしょうが、このときはハウチワカエデやらナナカマドの樹々が赤に朱に、きれいに色づいていました。

 森のなかの小径をつづら折に登っていくと、やがて押手川という広場に到着できました。ここは、編笠山の東側を巻いて山向こうにある青年小屋までの迂回ルートと、編笠山の山頂へと一直線に続く直登ルートの分岐点でもあります。

 登山地図を見れば、山頂までは1時間20分となっています。距離はさほどないのに、けっこう時間がかかるなぁと思っていたら、なんと、等高線がギュギュッ、ギューッと密に詰まっていました。

 つまり、急なんですよね。

 距離がさほど長くないからまだ耐えられるとしても、これは、そこそこの健脚向きルートでした。押手川から上は、常に目の上に道が繋がっています。ところどころにはハシゴやロープも設置され、もう息はゼイゼイといったところです。

 ただ、ふと登って来た道を振り返ってみると、なんとまぁ、ステキな風景が広がっていました。目の下には一面の雲。その雲海の上には、南アルプスと富士山だけがポッコリと頭をもたげているじゃありませんか。

 こんなとき、いつも思うのが「人間の足ってすごいなぁ」ということ。自分の足でしか、この場所へは登って来れませんからね。しかも、歩いたからこそ、見られる風景があるんですよね。

 がんばった自分へのご褒美ではないのですが、ここはしばしの休息をとるときでしょう。雲海の白が強調されるからか、または逆光の位置にあるからなのか、その広い景観は水墨画のようでした。

 疲れを忘れるときって、こういうときなんですよね。うっすらとかいていた汗もスウッと引いていくのがわかります。風も心地いいことでして。

 この展望ポイントは、なんと頂上直下の位置にありました。ほんのひと息ほど登ったら、もうてっぺんの道標が目に入ってきました。

 お、編笠山に到着だ。

 そして、道標の向こう側に現われたのは、権現、赤岳、阿弥陀岳などの南八ヶ岳の主峰たち。山頂一帯はすでに森林限界を越えており、ゴロゴロとした大岩が幾重にも重なり合って、かなり広く拓けています。

 そして、目を西側に転じてみれば、遠くに槍ヶ岳の小さなピークも見えました。北アルプスの稜線は、槍の穂先から南側へと行くにしたがって大きく切れ落ち、そして穂高の山並みへと続いています。

 北に南に中央に、そして富士山も。日本の屋根がグルリと一望できるなんて、なんだか得した気分です。

 山頂でしっかりと腹ごしらえをして展望を満喫したら、あまり長居せずに下山したほうがいいですよ。この季節は、あっという間に身体も冷えていってしまうので。ともすると、今ごろはもう雪がかぶっているかもしれません。

 もし日帰りといわず、日程に余裕があるなら、山頂を越えてその向こう側にある権現岳とへと続く縦走をお勧めしたいところですが……。残念ながら、11月も上旬になるこの季節では、青年小屋も権現小屋もそろそろ小屋閉めの時期になってしまっています。
 
 なので、この展望を楽しむのはいまがギリギリのときです。ちなみに編笠山の山頂からは、登って来た道をそのまま下山します。観音平までは、2時間半ほどの距離となります。当然ながら、下りもかなり急ですので、ご注意を。

 この晩秋のひとときを楽しむには、編笠山は最高の山です。でも、天気予報をしっかりとチェックして、早出早帰りを心掛けましょう。

                                                                                   
■編笠山/登山情報


日帰り:歩行時間計 約5時間35分


参考コースタイム:観音平(1時間)雲海展望台(50分)押手川(1時間20分)編笠山(1時間)押手川(40分)雲海展望台(45分)観音平
アクセス:中央自動車道の小淵沢ICから県道11号線、618号線を経て約30分。観音平に30台分くらいの無料駐車場がある。マイカーかタクシーの利用が便利。
地図:『山と高原地図32 八ヶ岳 蓼科・美ヶ原・霧ヶ峰』/2万5000分の1地形図「小淵沢」「八ヶ岳西部」

 
 
ライター
tetsu

山岳•アウトドア関連の出版社勤務を経て、フリーランスの編集者に。著書に『テントで山に登ってみよう』『ヤマケイ入門&ガイド テント山行』(ともに山と溪谷社)がある。

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