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警察庁がこの夏の山岳遭難の報告書を発表。数字に現われる遭難の実情とは?

2014.09.18 Thu

藤原祥弘

藤原祥弘 アウトドアライター、編集者

 9月11日、警察庁は今年の7、8月に水辺、山岳地帯で起きた事故をまとめた「平成26年夏期における水難・山岳遭難発生状況について」を発表した。

 この発表によれば、2ヶ月間で起きた山岳遭難の件数は583件で、それによる遭難者の合計は699人。そのうち死亡・行方不明者数は52人となっている。

 遭難者数は、統計をとりはじめた1968年以降、過去最多。しかも、この3年間は年々遭難件数が伸びているという。

 これらの遭難者のうち、60歳以上の高齢者は345人。全体に占める割合が49.4%と高かったことから、報道各社は「今年も中高年登山者の遭難が相次いだ」と報じた。

 しかし、中高年の登山者が多い現代の山では、中高年による事故がそれに比例して多いのは当然のこと。ベテランも多い中高年世代が、経験の浅い人の多い若年層よりも多く事故を出すものだろうか?

 中高年の関わる事故の件数だけをみて「中高年は事故をだしやすい」と断じる前に、「年齢層ごとの入山者○千人あたりの遭難者数」といった形で事故発生率を割り出し、比べることが重要だろう。

 ということで、どこかで年代別の事故率を発表していないだろうか、と調べてみたものの、そのものずばりの資料は見つけることができなかった。しかし、検索中に考察の基になりえる資料には行き当たった。

 その資料とは長野県山岳総合センターが2013年度に実施した調査のなかの「登山者の年齢構成」。これによれば長野県における登山者の年齢構成は30代以下が36.7%、40〜50代が35%、60代以上が28.4%となる。

 北・南・中央アルプスと八ヶ岳を擁する長野県の調査だから、この数字は日本の登山の人口比の実情にほぼ添っていると考えられるだろう。

 中高年の登山ブームが言われるようになって久しいが、意外なことにこの数年は人口比では若年層の登山者が伸びていることがわかる。

 また、「この調査は山小屋周辺でとられたため、テント泊山行者の反映にバイアスがかかっているかもしれない」とは山岳総合センターの担当者の方のコメント。

 中高年のほうが山小屋の利用率が高いことを考え合わせると、実際の登山人口の年齢構成はこの調査よりも若年よりに下がるかもしれない。

 そして、総合センターの調査の数字と今年度の7、8月の遭難件数を見比べると、総登山者数との人口比で30%以下となる60代以上が遭難事故の約半数を占めていることがわかる。

 ということは……、遭難の発生件数、発生率ともに中高年は値が高かった!

 ベテラン勢を擁護するつもりで調べたものの、数字が示したのは中高年の事故発生率の高さ。中高年登山者は「自分は経験値も判断力も体力も高い」と安心せず、いま一度、自身の能力と登山計画がかけ離れたものになっていないか振り返ることが必要そうだ。

 警察庁発表の資料、長野県山岳総合センターの資料は、情緒を差し挟まさずに数字だけで登山の実情を示している点で有用だ。事故の種類(転落、落石、道迷いなど)ごとの発生件数も示されており、登山者の注意を喚起する。中高年、若年層を問わず、遭難は他人事と思わずにご一読することをおすすめしたい。

(文=藤原祥弘)

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