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<老舗山専さかいやスポーツ>7月に売れた夏山縦走向けバックパック5選!

2016.08.28 Sun

東京・神田に店を構えて60年。
多様なブランド展開と取り扱い数に定評のある
「さかいやスポーツ」の高橋典孝さんに
夏山ハイシーズンの7月に売れた
「縦走向けバックパック」を教えていただきました!

 夏山商戦も一段落、ようやく暑さも和らいできて思うのは、今年はテント泊デビューを考えているお客様が本当に多かった! ということ。

 雑誌などのメディアでは、2、3年前から「ソロ」、「縦走」をキーワードにして特集が組まれてきましたが、売り場では、いよいよ今シーズンこのブームのピークにかかってきたな、という印象があります。
 
 ギア、ウエアともに売れていますが、なかでも印象的なのは縦走向けバックパックの売れゆき。65L前後のモデルが大きく動いています。

 20年前は「3〜4泊の縦走」となると、80L前後のバックパックを使う感じでしたが、ギアの軽量化が進んだ現代では65L前後が現実的なサイズ。

 ストーブやテントなどの縦走に必要なアイテムを、ほどほど軽量で、ほどほど汎用性も高いもので選んでいくと、ちょうどこのクラスのバックパックに収まるようになります。

 小容量パックと比べて、荷重が大きくなる縦走向けバックパックは、パックメーカーの腕の見せ所。各社自慢のアイデアや技術をこれでもかと満載しています。

 そして、お客様がたも搭載される技術をよく勉強されています。やはり、売れるモデルには理由がある、と日々感じております。

 それでは、みんなが気になる縦走用ザックの売れ筋をご紹介します!

(文中の+10とはザックメインの荷室部分に10Lほどの伸びしろがあり上方に拡張するので、実質75Lくらい入りますよ! を表しています)

■ドイター/エアコンタクト65+10 (W’sモデルは「60+10 SL」)
¥32,500+税 2,900g 


ドイターはブランド誕生からおよそ100年の信頼のザックブランド。縦走登山に求められる高い強度の素材を使い、なめらかに肩や腰にフィットする厚めのハーネス、レインカバーまで付属して¥32,500と価格はお手頃。これから縦走登山やテント泊をめざす人にはもってこいのザックです。なんといってもこのザックの売りは「エアコンタクトシステム」。メーカーのホームページには、「通気性の高い中空フォームを使用しています。圧縮されると空気が押し出され、その反対に圧力が開放されると新鮮な空気を吸い込みます」とやや難しくかいてありますが、要は背中のパットがポンプになっている感じ。荷物を入れて歩きだせば、確かにプシュプシュ空気が流れる感じがする。これがいい! 重い荷物を背負った時の背中の暑苦しさが緩和されます。そして、しっかり荷物を入れれば入れるほど、この快適さが際立ってきます。使ったお客様がたからは、良い話しか聞かないこのザック、その感想、わかるわ~。おススメです!

■オスプレー/アトモスAG65 (W’sはオーラ「AG65」)
¥29,000+税 1,980g 


AGとは「アンチグラビティサスペンション」のこと。「反重力サスペンション」とはすごいネーミングですが、それよりもこの背面の見た目にやられてしまいます。なんとこのザック、背面が全部メッシュ! 首元からウエストまですべてメッシュで空間が開いている!! これは涼しいことまちがいない!!! 以前から小型のデイパックなどでは使われてきたメッシュ構造ですが、荷重が大きくなる65Lクラスでこの構造は大丈夫でしょうか? おそるおそる背負ってみると……すごい!! シームレスメッシュで凹凸がないから、まるで曲面のメッシュに包まれているよう。少し背負っただけでも荷重がうまく分散されているのがよくわかります。なんだか不思議な背負い心地です。そしてあたりまえだけれど、ものすごく涼しい(笑)。ザックの本体重量も1,980gと軽量で、おまけに安い! これは初めて大型ザックを買う人でなくても手をだしてしまうのはわかる気がします。このモデルもオススメ!!

■ミステリーランチ/スフィンクス65L (W’sは「ミスティック65L」)
¥40,000+税 2,400g 


バックパック界のカリスマ〝デイナ・グリーソン″が手掛けるミステリーランチ。巷のオシャレさんたちが指名買いする、ヘビーデューティーなアイテムの感がありますが、いやいや、それだけのブランドではありません。フロントジッパーは驚きの全開システム。メインの気室へのアクセスが簡単で、すべての道具を直感的にとり出しやすい! 目を引く大型のバーチカルツインポケットは大容量で、なんでもガシガシつめ込める! これだけでずぼらな私などは購買意欲を掻き立てられます。おまけに背面長の調整システムは、無段階調整のフューチュラヨークシステム。そのくせ重量は2,400gとそのイメージからすると十分に軽い。いや、相当軽い!! 内蔵するグラスファイバーロッドフレームがその軽量化を担ってくれているようですが、荷物を入れたときの安定感や背負い心地はさすが。いやー、ちょっとお値段は高めですがこれも欲しい!(笑)。

■グレゴリー/バルトロ65L (W’sは「ディバ60」)
¥39,000+税 2,300g 


もはや説明する必要もないでしょう。バックパック界のロールスロイス〝グレゴリー″の定番モデル。圧巻は腰で背負えるいかにも重厚なヒップベルト。このヒップベルトが腰の動きにあわせて左右非対称にくいくい動く! 背中に吸い付くような背面システム「レスポンスA3サスペンション」によって、動けば動くほどショルダーハーネスもヒップベルトもジャストフィットする!! いやーもうすごい、本当に着ているみたいというか体へのフィット感がすごい。これは疲れないだろうな~、なんてちょっと背負っただけで思わせてしまいます。おまけにザックカバーが付属していたり、ザック内側のハイドレーションスリーブを取り外せばアタックザックに早変わりしたり、収納可能な立体サイドボトルポケットがあったり、細かいギミックがてんこ盛り! これ購入したら、その所有感だけでも満足してしまいそうです。私は決してグレゴリーの回し者ではないけれど、惚れてしまいました。初心者のかたもベテランもみんな注目のバルトロ65。納得の性能です。

■スーリー/ガイドポスト65L (W’sモデルあり)
¥46,200+税 2,700g 


カーキャリアで培った金属加工技術をふんだんに取り入れた、異彩を放つスーリーの縦走用バックパック。「やわなザックはいらねえぜ!」的な武骨なあなたも大満足。背面を覗けば、姿を見せるのはヒップベルト直結の骨太な金属フレーム! なんという安心感。そして、がっちり分厚いヒップベルトにも金属フレームが入る! そしてこのフレームたちが重い荷物をがちっと受け止め、背中や腰に荷重を分散する。こういったわくわくするアイテムをサクッとアウトドア市場に投入してくるなんて、さすが世界的カーキャリアメーカーだと唸ってしまいます。おまけに雨蓋部分はアタックザックに早変わり。まあよくあるギミックですが、その容量たるやたっぷり24L! おまけにけっこうちゃんとしたザック! いやいや一本取られました。正直なところ、価格はちょっと高めだけれど、しっかりと登山者を満足させてくれる作りに脱帽です!

■ 総評
 この夏の売り場は目も回るような忙しさ。山のテン場もそれに比例してたいへん賑わっているようです。

 以前の縦走登山のメインの層は、大学山岳部か一部の登山愛好者でした。合宿的な意味合いが強く、純粋に山の旅を楽しむ、という人は少なかったのではないでしょうか。

 それがこの数年で、冬山や高峰をめざすための足がかりではなく、山のひとつの楽しみ方として夏山縦走が定着してきたように思います。

 道具の選び方、求められる技術についての情報を一般登山者も手に入れやすくなったこと、また、必要な道具一式を担いでも、十分行動できる程度にアイテムが軽くなったことも後押ししているように思います。

 今シーズンの売り場には、若い入門者のかたにも大勢お越しいただきました。以前の登山はちょっと門戸の狭い世界でしたが、現在はその魅力に触れた人が気負わずとも入れる世界になったのだな、と日々感じております。

 次回は、こんな売り場でよく動いた「夏山向け小物」から、印象的だったアイテムをピックアップしたいと思います!


「やっぱりいいですよね、夏山!」

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