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【今年の夏いっとく?】北アルプスデビューで登ってみたい2,670mの山「爺ヶ岳」

2018.06.26 Tue

 山登りを始めていくつもの日帰りの山をこなし、いよいよこの夏は北アルプスへ! そうもくろむ方もAkimama読者のみなさんの中にいるのではないでしょうか。
 
 といいつつ、初心者でいきなりアルプスは心配です。だからといって立山室堂のようにアプローチの大半を文明の利器に頼るのではなく、山麓からそれなりに汗を流して「登ったぞ!」という達成感も欲しい……。

 そういう場面でよく引き合いに出されるのが、燕岳です。北アルプス初心者は「つばめだけ」と読みがちですが、正しくは「つばくろだけ」。会話では「先週、つばくろ行ってきました」という感じで使うとツウっぽいです。燕岳(標高2,763m)は常念山脈の北部にある花崗岩と花崗岩砂礫の山。長野県の中房温泉を登山口に、アルプス指折りの急登「合戦尾根」を気合いで登る。燕岳から槍ヶ岳をめざす絶景の縦走コース「表銀座コース」の出発点として有名。この山はぜひヤクルトスワローズファンに登ってほしい

 ですが、より安全度が高く、もっと標高差が少ない山としては1泊2日で訪れる爺ヶ岳(じいがだけ)という山も魅力的でしょう。

 爺ヶ岳は、白馬岳などを含める後立山(うしろたてやま)連峰の南端に位置する標高2,670mの山。

 山容はそれほど印象的というわけではありませんが、山頂からの大パノラマは超一級。アルプス登頂を充分堪能できる、いわば眺めるより登って楽しい山といえます。後立山連峰の南部に位置する爺ヶ岳。北・中・南の三峰から成り、中峰が最高峰。爺ヶ岳とは毎年5月ごろに山頂付近に残る“種まき爺さん”の雪形に由来するもの。笠をかぶってザルを抱え、ご丁寧に腰にミノまでまとっているように見えることから、その名が付いた

 登山口は立山黒部アルペンルートの入口、扇沢です。

 宿泊する山小屋・種池小屋までのコースタイムは柏原新道を登って3時間半。爺ヶ岳南稜をたどるこの柏原新道は、登り始めこそなかなかの急登ですが、後立山連峰の主稜線へ登るものとしてはもっとも容易なコース。また通常の北アルプスでは標高を上げて森林限界を抜けると吹きさらしになることが多いですが、ここでは大半が樹林帯なので、天候が崩れても風雨に叩かれる区間はわずか。それでいて小屋は樹林帯を抜けているので、滞在しながらにして見晴らしがいいのはとても贅沢です。柏原新道後半は視界が利き、とにかく歩いていて気持ちがいい。小屋は主稜線上にあり、眺望が約束された立地条件

 翌朝はちょっと頑張って、ぜひとも爺ヶ岳山頂でご来光を拝みたいところ。

 山頂までは小屋から1時間足らず。背後には剱・立山の連なりがみごとで、すぐ北側には鹿島槍ヶ岳の雄姿が間近に迫ります。また北アルプスの東端に位置しているため東面は展望が抜けていて、南アルプスや八ヶ岳、富士山などが重なって見えます。まさに「登って楽しい山」ですね。
爺ヶ岳への登りでは、振り返るとこのように剱岳や立山が一望できる。これを気持ちのいい稜線歩きと言わずなんと表現すればいいのだろうか! 赤い屋根が種池山荘だ

 扇沢へは信濃大町駅から路線バスがひんぱんに走っているため、この行程なら夜行バスを使わずとも、昼前くらいに扇沢から登り始めれば余裕をもって種池山荘へ到着できます。翌朝爺ヶ岳でご来光を拝んだのち、すみやかに下山すれば、下界で温泉に入ってバスに乗っても余裕があります。

 なお、2泊3日取れるなら、2日目に爺ヶ岳を経由して、標高2,889mの後立山連峰の盟主・鹿島槍ヶ岳を踏むことも可能です。その夜に宿泊する道中の冷池(つべたいけ)山荘に余分な荷物を置いて行けるので、行動は身軽。最終日は扇沢まで来た道を戻るという安心感もあり、足取り軽めに下山できるのではないでしょうか。爺ヶ岳からみる鹿島槍ヶ岳方面。稜線なかほどに見えるのが冷池山荘。この稜線を北へたどると、五竜岳や唐松岳、白馬岳を踏むロングトレイルとなる

 うれしいのは、種池山荘、冷池山荘ともに生ビールが冷えていること。「山の上へおいしいビール飲みに行く」というのも、立派な登山の目的になる! ぜひAkimama自慢の連載陣が提案する「山ごはん」「山つまみ」の食材を背負って、この夏北アルプスへデビューしてみてください。

 なお、入山の際はかならず「登山届」の提出を! 柏原新道の入口に用紙とポストが備え付けられています。

■参考コースタイム
1日目:歩行時間計3時間30分
 扇沢(3時間50分)種池山荘
2日目:歩行時間計4時間10分
 種池山荘(1時間)爺ヶ岳南峰(40分)種池山荘(2時間30分)扇沢

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