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【特別ガイドルポ】秋の紅葉、白馬エリアの絶景を求めて!vol.2———ガラガラの稜線の先に剱岳。絶景、紅葉に染まる遠見尾根を歩く。

2018.09.21 Fri

北村 哲

北村 哲 アウトドアライター、プランナー

夜明け前。すばらしい星空と夜明けの空をながめがら、ヘッドライトを灯し唐松岳の山頂をめざす。

 北アルプス・白馬八方尾根と遠見尾根。どちらもゴンドラやリフトを使って、比較的簡単に山にアプローチでき、すばらしい紅葉が見られるらしい。そんなオイシイとこどりの紅葉登山計画は、はたして成功するのでしょうか?!


【特別ガイドルポ】秋の紅葉、北アルプス白馬エリアの絶景を求めて!———長野・白馬八方尾根〜遠見尾根を歩く。vol.1


 

 朝3時30分、起床。外に出ると満月が落ち始めたおかげで、満天の星が輝いていました。毎日コロコロと変わっていた天気予報は、午前中の快晴とは裏腹に夕方からは下り坂になっていました。

 快晴ゆえに放射冷却で寒い朝、防寒着を着込み、ヘッドライトを装着、空身でご来光を見るために唐松岳の山頂をめざします。同行のふたりは慣れたもので、こんな朝でもサクサクと登山道を駆け上がっていきます。まだ暗い山頂に到着してほどなく、空の色が濃紺から濃いピンク色に変わっていきました。眼下には、不帰キレットが朝焼けに照らされて稜線が浮かび上がり、背後では剱岳モルゲンロートが見える絶景ポイントです。残念ながら厚い雲でご来光は拝めませんでしたが、雲の隙間からキラリと神々しい光が差し、なんともいえない朝の雲海や周りの山々の景色を見渡すと、先ほどまで寒さで震えていたことを忘れ、あたたかい太陽の光を浴びて清々しい朝を唐松岳の山頂で迎えられた喜びに浸りました。

まだ明けきらぬ夜を唐松岳の山頂で。すぐそこにわれらが宿、唐松岳頂上山荘のあかりがあたたかく灯っています。左下)モルゲンロートに染まる劒岳。右上)不帰キレットを朝日が照らし出してゆく。右下)寒さに震えながら、変化していく空の色とご来光にうっとりするふたり。

 陽が昇ると、山荘からの登山道の両脇が、昨日見た凍ったハイマツでキラキラと光っていました。ご来光は見られませんでしたが、こんなにうつくしい景色に出会えたのは、寒さに耐えた明け方のご褒美のような気がしました。

唐松岳山頂から山小屋までの帰り道、凍ったハイマツが朝日に反射してキラキラと光って、とてもうつくしい眺めでした。

 山荘に戻ると、すでに出発していく登山者がたくさんいました。稜線沿いに進んでいくみなさんは、今日はどこまでいくのでしょう? 朝食をお弁当にしてもらっていたので、われらもすぐに出発する予定でしたが、今日は天気もいいし、山荘のスタッフに食堂でお弁当を食べてもいいと言っていただいたので、こちらで食べてから出発することにしました。

左上)お弁当にしていただいた朝食。ボリューム満点!左下)グッズや飲み物など、充実した売店。右)山荘オリジナルのマグカップで飲むコーヒーが、とてもおいしいんです。

 食事を終え、身支度を整えて外に出ると、すばらしい快晴です。昨日の山小屋の鐘にできていたツララや、道標のエビの尻尾に成長しかかっていた氷はは、すでに溶けてなくなっていました。今日は、最初から稜線歩き。いきなりクサリ場で気合が入ります。その名も「牛首」。全員ヘルメットを装着して、いざ出発!

こちらがこの日に歩いた唐松岳から五竜岳への稜線。牛首の難所を越えて、五竜山荘をめざします。左下)快晴! 昨日の夕方とは、まるでちがう景色にビックリ。中)ヘルメットを装着。稜線に挑む前に余裕のふたり。右下)稜線沿いでも、長い霜柱がたびたび見られた。快晴だが、やはり風が出てくると寒い。

 クライミングにハマっている小室千可さんは楽しくてしょうがないようで、満面の笑みでクサリ場をドンドン攻めて行きます。斎藤千春さんも、慣れた様子でサクサクと岩場もクサリ場も越えて行きます。相変わらず風は冷たいのですが、今日はなんといっても視界良好! 昨日歩いてきた八方尾根とこれから歩く遠見尾根がよく見えます。どちらも紅葉に染まった尾根がとてもうつくしい。まさに、この景色に会いにきたのだと噛み締めながら、目の前のガラガラとした稜線を五竜山荘に向かって歩きます。

深い沢筋には春の雪が残っていました。あっという間に次の雪に覆われてしまうんだろうな。左下)長〜い坂道の途中、昨日とはまったくちがう視界良好の景色を楽しむ。右)ついに分岐の道標に到着。ここまでくれば五竜山荘まで、あとひと息!

 朝から目の前に、凛とそびえる五竜岳ですが、なかなか近づいて来てくれません。ふと、さらに対岸を眺めると、ドッシリとした剱岳がクッキリみえるではありませんか。快晴の稜線歩きは、最高だなと思える瞬間でした。緊張感のあるガレ場も乗り越えて、最後に長~い坂道を登りきり五竜山荘に到着したのは、ちょうどお昼前でした。

 ここでお昼ゴハンを食べながら、今日はこのまま山荘に宿泊して五竜岳の山頂をめざすか、そのまま遠見尾根を下山するか、迷っていました。山荘の入り口に出ている天気予報も、明日は雪マークになっています。昨日から悩み続けていた五竜山荘に宿泊するか、このまま下山するかは、山小屋の人にも相談して、同行者の意見も聞いた結果「下山」することに決定しました。目前の五竜岳の山頂に行けないのは、本当に残念でしたが、天気予報どおり、明日の朝、雪が降って遠見尾根を下山するのもリスクが伴います。ここは全員気持ちを切り替えて、紅葉を求めて遠見尾根に向かうことにしました。

五竜岳の山頂に目をやると稜線の上には秋色のいわし雲。この季節ならでは景色を楽しむ。右下)天気予報は、午後から下り坂。前日からかなり悩み、みんなで何度も話し合った結果、下山することに。左下)遠見尾根を歩きながら振り返ると五竜岳が。また来ますと心の中でつぶやくのでした。

 尾根の入口から岩場を下り、それが終わったあたりから、早くもまた紅葉が出迎えてくれました。やはり、紅葉は駆け足で進んでいるようです。そして、さらに進むと、なんと地図には載っていない池があらわれました。しかも、その周りには、朱、橙、黄色に紅葉した木々や、真っ赤に染まったチングルマの葉が盛大に色づいています。「こんな景色みたことない!」。全員、大興奮です! 後立山の山の神様から、すばらしいご褒美をいただいた瞬間でした。

遠見尾根に突然現れた池。ここは秘密の紅葉ポイント。湖面に映し出された岩稜と色づいた木々のコントラストや構図が、とってもステキ場所でした。

 遠見尾根は、だいぶ紅葉が進んでいきました。山の上部にあたる、大遠見から中遠見に抜ける途中、ダケカンバの森があり、白い幹と黄色の葉が混じる不思議な空間に出会いました。尾根づたいのアップダウンは地味に体力を奪われますが、上りは小高い場所に出た瞬間の見晴らしい景色、下りは紅葉のトンネルをくぐっていくという体験に魅了され続けます。下山途中、小遠見(標高2,007m)を過ぎたあたりから始まった木道沿いは、真っ赤に紅葉した木々で赤いトンネルのようになっていました。「スゴイ! 赤いですね~」と、同行の女性ふたりのテンションもあがり無心にカメラのシャッターを切るのでした。

遠見尾根は、すっかり紅葉を迎えていました。左)大遠見の看板。リフトの営業時間チェックを忘れずに。右)真っ赤に紅葉した木々に囲まれ、うつくしさに心奪われ無心にシャッターを切る。

 じつは、下山するか迷いながら朝ごはんをゆっくり食べたり、途中で紅葉の写真を撮ったりしていた時間が積み重なった結果、帰りに乗るゴンドラの最終時間がじょじょに迫っていました。そして、時計を気にしつつ途中からコースタイムよりペースアップした下山となりました。とはいえ、ふたりとも登山の前に聞いていた噂どおりの健脚で、急ぎながらもちゃんと写真を撮ったり行動食を食べる余裕が、まだまだあったのには感心してしまいました。地蔵ノ頭をすぎ、森を抜けると白馬五竜スキー場の上部に出ました。ススキがあちらこちらにみえ夕暮れの風になびいています。仲よしふたり組みは、肩をならべながら昨日とは打って変わった快晴の秋空を眺めがら、最後の余韻を楽しんでいました。

 今回の登山の前に紅葉のことを調べていて「三段紅葉」というものがありました。これは、「山の頂上が冠雪で白、中腹が紅葉の赤や黄、麓の樹木の緑」を意味します。今回の変化に富んだ紅葉登山は、まさに「山の頂上が冠雪で白」にかかるところの時期だったようです。とても濃い内容のに2日間となった唐松五竜の紅葉登山。残念ながら、五竜岳の山頂にいけなかったのは「来年、また来いよ」と山の神様に言われているような気がしたのでした。

小遠見山から小高い尾根を歩く。見晴らしがよく、紅葉と麓の景色がみえる。左)小遠見山と五竜岳に向かう登山道に分岐する場所の看板。ここまでくれば、下山も近い。右)尾根沿いのベンチで一休み。紅葉に囲まれ、快晴の秋空の下での一服は、最高なのです。

【写真=田渕睦深 文=北村哲 モデル=斎藤千春、小室千可/好日山荘】
 
 

地図制作:オゾングラフィックス


■参考コースタイム
1日目 歩行計/3時間55分 
八方池山荘(1時間)第2ケルン(15分)八方ケルン(10分)八方池(1時間)丸山ケルン(1時間30分)唐松岳頂上山荘
2日目 歩行計/6時間55分 
唐松岳頂上山荘(20分)唐松岳山頂(15分)唐松岳頂上山荘(30分)牛首(2時間)五竜山荘(1時間)西遠見山(1時間)大遠見山(50分)小遠見(1時間)地蔵ノ頭

■アクセス
【起点までのアクセス】
公共交通機関の場合は、北陸新幹線長野駅下車~特急バス「長野-白馬線」~白馬八方尾根スキー場/特急あずさ松本駅下車~JR大糸線白馬駅~路線バス「猿倉線」~白馬八方尾根スキー場

マイカーの場合は、長野自動車道安曇野IC~北アルプスパノラマロード~国道148号線~白馬八方尾根スキー場/上信越自動車道長野IC~国道19号線~白馬長野オリンピック道路~白馬八方尾根スキー場

【ゴンドラリフト】
白馬八方(八方アルペンライン)
白馬五竜高山植物園(アルプス展望リフト、テレキャビン)

*本格的な雪が付くまでの秋のシーズン中は、八方尾根へのアプローチと遠見尾根からの下山にはゴンドラとリフトを乗り継いでの山行が可能です。往路は白馬八方尾根スキー場の八方アルペンラインを、帰路は白馬五竜スキー場のアルプス展望リフトとテレキャビンを利用します。ただし、2018年の秋は10/28(日)まで営業予定です。

■山行アドバイス
ゴンドラに乗った麓からの標高差は1,000m程度ですが、気温の変化が非常に激しく、秋と冬の両方を感じた山行となりました。初日は霧のなかの行動で雨氷に出会い、翌日の早朝は大きな霜柱が立ち、天気予報も雪マークが出たほどです。秋の登山であっても防寒対策として冬を意識した装備、手袋、ネックウォーマー、ニットキャップ、フリースやインナーダウン、あたたかいベースレイヤーなどの準備が必須となります。

 


【特別ガイドルポ】秋の紅葉、北アルプス白馬エリアの絶景を求めて!———長野・白馬八方尾根〜遠見尾根を歩く。vol.1


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