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【冬の絶景】歩いてしか行けない氷の世界~雲竜渓谷~

2019.01.30 Wed

岩田京子 登山ガイド

 栃木県の日光にある氷の神殿とも言われる「雲竜渓谷」。その渓谷は女峰山の麓にひっそりと存在している冬の一定期間しかみることのできない“大絶景”をご紹介!

 車でアクセスよく訪れる観光地とはちがい、雲竜渓谷は奥地にあるため、自分の足で歩いていくしかその場所に行く方法はない。舗装されていない道を往復で10㎞ほど歩く。道のりは長く、積雪もあるため、それなりの冬山装備が必要となるので気軽にはいけない場所だ。しかしながら、がんばって歩きたどり着いた先にある絶景を目にしたときの感動は格別。ぜひ一度は見ていただきたい!

 歩きはじめは、少し車道を進む。その後は稲荷川にかかる橋を渡り対岸へ。正面に見える女峰山を見ながら、写真のような河原のような場所をしばらく歩く。

 例年は、雪が多くなる洞門と言われるポイントからアイゼンを装着するのだが、この日は雪が少なく、いつものポイントでの装着はせずにその先の行けるところまで冬靴のみで進んだ。
アイゼンを装着する場所はその日の雪や氷の状況により変わる。

 川沿いを何度か渡渉を繰り返しながら進むと、いよいよ雲竜渓谷の入口だ。やがて、「友知らず」といわれる場所にたどり着く。そこはゴルジュのように両岸が岩壁となっていて数十メートルにわたり狭くなっている。歩きにくい場所なので慎重に進む。
渡渉の際も雪や岩が滑るので、慎重に進む。バランスを崩さないよう、ストックが活躍!

 歩きながら見られる景色は、両壁から染み出た水が寒さにより凍りつきでき上がった巨大な氷のカーテンのよう。一面に広がるその氷のカーテンは、太陽の光を受け青く反射していた。人の手では決してつくり出せない色と形の自然美。立ち止まり、言葉も発さずにその景色をしばらく見上げていた。
友だちをかまうことができないほど狭く危険な場所という意味で「友知らず」という名前が付けられている。

「友知らず」を抜けその先に進むと、燕岩から染み出た大きな氷柱が目に飛び込んできた。目を疑う程の大きさだ。その脇にも数十メートルほどの氷柱がいくつも半円状に並び、圧巻の景色が広がっていた。
2011年に『山と溪谷』にこの場所(燕岩)が紹介され、人気が出た。

 半円状の氷柱群からさらに先に進むと右手に雲竜爆が見えてくる。この滝は3段になっていて、高さは約160メートルもある。大きすぎて滝の上部はほとんど見えない。周りの氷柱とはくらべものにならないほどの大迫力だ。この場所に近づくにはアイゼン歩行に慣れている人でないと歩けないような難易度の高い場所を歩くことになるので注意が必要だ。滝の近くに行かなくても、遠くから見るほうが全体眺めることができるのでご安心を!
雲竜瀑の下の人と比べると滝の大きさがよくわかる。背部にある滝はほんの一段。

 今回は、滝の下まで行ってみた。その場所から見上げる氷瀑は圧巻だった。しばらくは落ちてくる氷に注意しながら、写真撮影をしつつ見上げる景色を楽しんでいた。するとなにやら滝の中間あたりで動く物体が! 「なんだ、アレ……」。その直後「ロープダウン!!」という声とともに、投げられた長いロープが上部から落ちてきた。「あぁ、なるほど……クライミングの人か……」。人がいるとは思っていない場所だったのでびっくりしたが、やっと状況がつかめてきた。その後、クライミングを終えた人が懸垂下降で下りてきた。「すごいなぁ、かっこいいな~」と重いながらその様子を見つめていた。

 このエリアは、トレッキングを楽しむ人の他にもアイスクライミングを楽しむ面々にも人気の場所となっている、という情報を聞く。渓谷になっているため日照時間が短いので、氷も発達しやすいのだろう。

 さまざまな目的を持った人たちが楽しめるこの場所は、まるで自然がつくり出したアウトドアのテーマパークのようだ。そんなことを考え、圧巻の氷瀑を眺めながらのランチを楽しみ、来た道を引き返し下山した。

 渓谷という場所なので、歩く道幅は広くない。週末ともなると多くの人が往来するので混雑することもある。ゆっくりと楽しみたいならば平日がオススメ! 写真で見るよりも実物はやはり迫力がちがうので、体力に自信のある人にはこの圧巻の景色を実際に見て欲しい!

 2019年のシーズンのツアーは、2月の11日(月)まで。個人で行くのが不安な場合は、ツアーがオススメ!
(じつは私も、2月1、3、8、10、11日には、ツアーカンパニーのネイチャープラネットでガイドしています!)
 
※期間以外の日程は、氷の状況が悪くなり危険が伴うので個人で行く際には十分注意が必要です!

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