line_box_head

アウトドアライター村石太郎が 友人たちを訪ね歩く「旅する地球」 ニュージーランド編 その2

(2017.09.01)

アウトドアのTOP

icon

アウトドアライター、
村石太郎が友人たちを訪ね歩く、旅する地球。
第2回目となる今回は、ニュージーランド南島にあるヘリコプター会社で働く
元同僚であり、友人のシャノン・ウォーカーさんを尋ねます!

シャノン・ウォーカーさん
出身地/ニュージーランド・オークランド近郊
クイーンズタウン在住歴/1年5ヵ月
職業/マーケティング・マネージャー
休日の過ごし方/テレマークスキー、マウンテンバイクなど
好きな音楽/ニルバーナ『ネバーマインド』
好きな映画/リュック・ベッソン『グラン・ブルー』

 ニュージーランド南島の、南部に位置するクイーンズタウン。ここは自然豊かな同国のなかでも、ひときわ印象的な自然が残されていて、季節を問わず多くの観光客で賑わう国際的な観光都市だ。とくにアウトドア好きの人たちにとっては、周囲に広がる雄大な国立公園やスキーフィールドが揃い、ルートバーン・トラックやミルフォード・トラックなど誰もがいつかは訪れたいと願う憧れの訪問地となっている。

 昨年、そんな街に元同僚で友人のシャノンとミアさん夫妻が家を建てて住みはじめたと聞いた。僕は、ニュージーランへと経つ1ヵ月ほど前に彼にFacebook Messengerで「久しぶりに会おうよ」とメッセージを送った。
 その1時間後、シャノンから返事が届いた。

「タロー! ゲンキ? 部屋もあるから、大丈夫だよ。何日ぐらい泊まっていく?」

そうしたら来月の11日と12日の2日間泊めさせてもらってもいいかな? それとオークランドに戻る前の16日も

OK! スキーは持ってくるの? 良い雪降り始めているよ!

もちろん! 滑りにもいこうよ

 テレマーカーのシャノンと僕の出会いは、いまから11年ほど前のことなる。当時、僕はフリーランスのライターとして登山専門誌やアウトドア雑誌などに原稿の執筆をおこなう傍ら、『OUTDOOR JAPAN』というフリーペーパーの副編集長を務めていた。この雑誌は、日本のアウトドアシーンを外国人に紹介するWEBメディア(www.outdoorjapan.com)から発展して、2005年11月から毎月バイリンガル・メディアとして発行されていた。シャノンは、フリーペーパーとしての『OUTDOOR JAPAN』が1周年を向かえたとき、営業とマーケティング部隊を率いるセールス&マーケティング・ディレクターとしてチームに参加してくれたのだった。ちなみに、現在のアウトドア・ジャパンは年4回『OUTDOOR JAPAN TRAVELER』として発行されている。

クイーンズタウンへのフライト
久しぶりの再会

 羽田空港からニュージーランド最大都市のオークランドを経由して、快適な空の旅を楽しんだあと、クイーンズタウンに到着後レンタカーを借りてシャノンの自宅へと向かった。空港からダウンタウンのある方角へと車を走らせ、小高かな丘を登っていく。すると道の行き止まりに彼の家があった。そこからの景色には視界を遮るものがなく、先住民マオリの言い伝えで巨人が住むという伝説が残るワカティプ湖を一望していた。
 引き戸を引いて敷地内に入っていくと、まず出迎えてくれたのは彼らの愛犬、パグ犬のミカ、ボストンテリアのラスティだった。2匹のあとを追うように大きな窓から飛び出してきたのは、3歳になるJJだ。

 「久しぶり」

 流暢な日本語で話すシャノンとは、8〜9年ぶりの再会だった。ふたりともアウトドア・ジャパンから離れ、彼は政府観光局のマーケティング担当として働くため生まれ故郷ニュージーランドの最大都市オークランドへと移り住み、昨年の5月にクーンズタウンへと引っ越してきていた。いまはヘリコプターでの遊覧飛行を企画運営する会社でマーケティング・マネージャーを務めている。日本で出会った奥さん、ミアさんも一緒だ。

「観光局という大きな政府機関から、社員数10人にも満たない小さな民間企業に転職して、すごい新鮮な気持ち。まったく仕事への考え方が違ってて、楽しいよ。大きな企業で働くときに感じるストレスもないしね。いまはマーケティングをやっているんだけれど、忙しい日はヘリコプターを格納庫から出したり、機体を洗ったり、自分の仕事以外もやっててね。これもいい刺激だね。お互いに助け合いながら仕事をしているよ」

「政府観光局で働いていた頃は、仕事は安定していたし、収入も良かった」というが、出張が多かったことが問題だったと付け加える。

「子供ができたらこのまま続けられないなと思ったんだよね。ほとんどは国内出張だったけれど、月に2〜3回は出張に出掛けていたから。そんなことを考えていたときに、ちょうどいまの会社で人を募集していたんだ。デスクワークに飽きたときは、席が空いていたらお客さんと一緒にどこかへ行くこともできるんだよね。フライトアテンダントとしてね(笑)」

12年間過ごした
東京での生活

 シャノンがはじめて日本を訪れたのは、高校生のときだった。彼は当時、17歳。交換留学生の募集があったときに、仲の良かった友人がたまたま日本人だったことから決断したと思い出す。

「子供の頃、僕たち家族はいろんなところに住んでいたんだけど、当時はオーストラリアのゴールドコーストにいたんだ。そこでいつもサーフィンをしていた仲間のひとりが日本人でね。彼は家の近所に住んでいたんだけど、すごい日本行きを進めてくれたんだ。ほかにも北欧とか、アジアでも韓国とか行き先があったんだけど、『それじゃぁ。日本に行ってみようかな』って思ったんだよね」

 そうして17歳のシャノン少年は、東京の荻窪に住むホストファミリーのもとで10ヵ月間を過ごし、交換留学生として日本での生活を始めた。南半球に位置するニュージーランドやオーストラリアでは、ほとんどの人が大学を卒業するとともに数年間ほかの国へと自由旅行をしたり、就職したりして自国以外のことを知る機会を得る。それは、世界の経済活動の中心ニューヨークやロンドン、東京、北京といった都市から地理的にも、精神的にも遠く離れた場所で育ってきた人たちがほかの国の情勢を知り、世界で通用するために必要なスキルを身につけるための伝統なのだという。そんな、お国柄をシャノンは「南軟球の端っこに住んでいる人たちが、いつも外を見ている。ほかの国の流行も気にしているみたいにね」と笑う。

 交換留学を終えたシャノンは、一度はニュージーランドへと帰国して現地の大学へ通い始めることになった。大学では経済学部を専攻しながら、日本語のコースも取っていた。

「高校生のとき日本に始めて来たときは、短期間の日本語コースで最低限の日本語は勉強したんだよね。でも、始めはほとんど話せなかったな。最初に日本語を勉強するときって、すごい丁寧な話し方を勉強するでしょ? ですます調の日本語。日本に来てみたら、誰もそんな風に話さないから全然分からなかったんだよね(笑)」

「そのときに面倒を見てくれたホストファミリーが本当に優しくってね。いまでも、2番目の家族みたいに思っているんだ。東京での生活もすごく楽しかったし、世界が広がったよね。ニュージーランドと日本での暮らし方の違いも知ることができたし、まったく異なる文化も興味深かった。そんな思いもあって名古屋の大学に留学することにしたんだ。でも、卒業してからはなにをしたら良いか分からなかったね」

 悩んだあげくに、シャノンが選択したのが、当時まだほとんど外国人がいなかった北海道のスキーリゾート・ニセコでのアルバイトだった。その後、さまざまな職に就きながら12年間を東京で過ごした。そうしたなかで奥さんのミアさんとも出会った。

「日本での12年間は、本当にあっという間だった。おもに東京に住んでいたから時間が流れるのが早かったし、毎日に驚きがあった。刺激があって、まったく飽きなかったね(笑) のんびりとしたニュージーランドとか、オーストアリアの生活には戻れないなと感じていたんだ。でもね、子供が出来たときに、その価値観が変わったんだよね。落ち着いたところに住みたいなと思いはじめたんだ」
 
シャノンとミアさんは、そうした思いから「うまくいかなかったら、また戻ってくればいい」と一念発起。ニュージーランド・オークランドでの生活を始めることにした。

オークランドから越してきた
クイーンズタウンの魅力

「ここに住んで一番によかったことは、手軽に自然と触れることができることですね」

 そう話すのは、2年間過ごしたオークランドから越してきたクイーンズタウンは、「景色がとにかくきれい」と話すミアさんだ。

「車で20分も走ればスキー場があって、日曜日などは午前中にスキーをして、午後は自宅周辺に帰ってきて犬と散歩にでかけることもできるんです。それに、どこに行ってもすごくきれい。1年住んでも、毎日のようにすごいと思うような景色と出会える。朝起きると、窓からの景色にもいつも驚かさられてます」

「それに、世界中からいろいろな人が来て働いているところもいいですね。ここに住んでいる人は、この街が大好きで住んでいる。仕方がなくて住んでいる人はいないんです。小さな街だけど不便なところもほとんどないし、国際的な観光地だから美味しいレストランもある。文化的な施設も多いですね。はっきりとした四季もあるし、子供の教育にもいいなと思っているんです。息子が通っている幼稚園には、30カ国ぐらいから来た子供たちが通っている。国際結婚をした人とかもいっぱいいるし、日本人も多い。だから、日本人としてここに住んでいても疎外感がなくって、街の一員だと感じられるところがいいですね」

 シャノンとミアさん夫妻は、「日本での生活も考えている」とうち明ける。理想は、クイーンズタウンをベースにしながら日本で3ヵ月、ないしは半年ほど生活するというライフスタイルだ。いまは自宅の一室を民泊用スペースとして貸し出していて、8月からは裏庭に小さなトレーラハウスを置いて2部屋目をオープンする予定だ。
 この9月には、久しぶりに日本にも帰ってくるという。シャノンと、また一緒にスキーに出かけるのはまだ早い時期だけれど、どこか山登りでも行こうかと話し合っているところだ。

☆☆☆
Stunning views
 ニュージーランド南島の南部の町クイーンズタウン中心街と空港のちょうど中間ほどの位置にあるシャノンとミアさん夫妻経営の部屋。トイレとシャワーのほか、冷蔵庫と電子レンジなどがあり、部屋のなかからワカティプ湖と周囲の山並みを望む景観がなんと言っても魅力だ。もちろん、日本語での応対も可能で、ミアさんは「是非、日本人のお客さんに来てほしい」と言っていた。

 
 
ライター
Taro Muraishi

アウトドアや登山専門誌を賑わすアウトドアライター。精力的に世界各地のアウトドア・ブランドへの取材へと出掛け、そこで得た登山装備と登山道具史についての知識は国内随一。過去20年にわたって、アラスカ北部に広がる原生自然帯での遠征活動を続ける冒険旅行家としての顔も持つ。

line_box_foot