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本当に温泉に行けばやせるのか!? 紅葉のトレイルを3時間。北アの秘湯・湯俣温泉に行ってきました!

(2017.10.12)

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アウトドアライター芳地直美の「アウトドアこぶとり★おばさんシリーズ」第3弾。はたして本当にやる気があるのか、やせる気があるのか、まったく説得力のない、だらしない連載? ではありますが、毎週のように、ポチさんこと、芳地さんは、かわいい年下の旦那を家に残し、西に東にとアウトドアに出かけています。今回はなんと、歩いてしか行けない北アルプスの秘湯へ紅葉と温泉を楽しみに行きました! 後半、河原にのたうちまわるトドのような熟女の入浴シーンには閲覧注意してください。
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 馬肥ゆる秋……、馬でさえ太るんだから、パソコンの前でお菓子食べながら原稿書いている私はもちろん、158センチ59キロと(´;ω;`) 体重増加が止まりません……。
 そんな風が心地よい秋の日に、北アルプスの奥地にある秘湯中の秘湯・信州「湯俣温泉」への取材の話がありました。そこは山道を3時間かけて、歩いてしか行けない山奥の一軒宿。しかーも、私が入浴モデルにもならなければいけない、ということで、プレッシャーがかかるうえ、山道を歩いて汗を流して、そして、温泉でまた汗ダラダラ~だなんて……。これは行く前からやせる予感が! (本当は取材前にやせたかったのですが……。それだと主旨に合わないので、ブヨブヨのまま、当日を迎えることに)エメラルドグリーンの高瀬川に鮮やかな紅葉が映える静かな高瀬渓谷は、県内有数の名勝地。ダム堰堤から見下ろした紅葉と、尾入沢大橋から見る渓谷の紅葉がお勧めポイント。       

 中部山岳国立公園・高瀬渓谷の標高1534m地点に、秘湯・湯俣温泉「晴嵐荘」はあります。 湯俣川と水俣川の合流点に位置する晴嵐荘の、登山口からの高低差は約200m。なだらかな道を3時間かけて、歩いていけば山小屋の内湯だけではなく、近くの河原を掘り、川の水を源泉に混ぜて、自分たちだけの天然の露天風呂が楽しめるといいます。
晴嵐荘へ向かう道には、ところどころトンネルがある。秋は高瀬ダムの緑色の水と紅葉のコントラストが美しい。トレイルは川沿いに続いている。
 JR松本駅から登山客でにぎわう大糸線で信濃大町駅へ。ここからはマイカーで行ける最終地点の七倉温泉を経由し、高瀬ダムまでタクシーで向かいます。登山届を提出し、林道に入ると、まずは大きな岩を積み上げた九十九折りの斜面や、高瀬ダムの大きさがすごい~。
 石積みのダムの周りが真っ赤なナナカマトやモミジで染まり、湖の深いエメラルドグリーンの色合いと混ざり美しい。秋がもっと深まると山頂には雪、そして紅葉、湖と木々の緑色との三段紅葉も観ることができるといいます。
登山口から約3時間、赤い吊り橋を渡れば晴嵐荘がある。登山だけでなく「秋を愛で、温泉に行く」だけの人も楽しめる場所だ。                  
 このルートは裏銀座の野口五郎岳へつながる竹村新道や槍ヶ岳に向かうコースでもあり、登山者たちと何度もすれ違います。なだらかとはいえ3時間ほど歩けば、ザックは肩にくいこみ、足はもうガクガク……疲れ切ったところで、右手に小さな赤い吊り橋が見えてきました。あの橋を渡ると、そこが晴嵐荘です。

 宿に着くと、若い管理人の山根雅之さん(44歳)が、笑顔で迎えてくれました。
「お風呂、いつでもどうぞ」
 宿は雰囲気良く間接照明が灯り、若い世代もベテラン登山者も安らげる空間になっています。三畳、六畳の個室タイプと二段ベッドの客室があり、清潔な食堂や内風呂を備え、ダイニングでは縦走後の登山者が靴を脱いで、くつろいでいます。登山史上、この湯俣温泉は日本のバリエーションルート開拓の一時代を担う拠点となったようです。宿は閉鎖されていますが、槍ヶ岳北鎌尾根や硫黄尾根などの末端部分に位置しているため、冬期でも山のツワモノたちがここを行き交います。左から優しい笑顔の癒し系スタッフ・日下知子さん。宿を取り仕切る支配人の山根雅之さん。おいしいコーヒーをドリップしてくれたスタッフの森本克寛さん。

 岩つくりの内湯に入れば、白濁した湯が肌に染み込んでいくよう。硫黄の匂いのわりに滑らかな湯ざわりである。泉質は単純硫化水素泉、泉温は42度ほどで心臓弁膜症や関節、筋肉の慢性リューマチに効能があるという。山奥でこれほど雰囲気のある温泉に入れるとは思いませんでした。山道で心地よく汗をかいたし! これは、きっと、やせるぞ~。単純硫黄化水素泉の男女ひとつずつある内湯には24時間入浴可能。山奥の源泉かけ流し温泉でこんなに雰囲気があり、眺めのいい内湯があるとは驚き。
 しかも夕食前に、宿から15分ほど歩いた場所にある河原に、宿が無料で貸し出してくれるスコップを持って歩いていきました。湯俣川を少し溯った“地獄谷”と呼ばれるあたりには、そこかしこに湯脈があります。渓谷の川沿いに自分だけの温泉を掘り、紅葉を眺めながら入浴する贅沢!
宿から湯俣川を少し遡った地獄谷と呼ばれるあたりは、炭酸石灰などの沈殿物が長い年月をかけて堆積した白い墳湯丘が見られる。源泉が河原のあちこちに湧いているので、スコップを宿から借りて、自分だけの露天風呂をつくろう。
 ヒーヒー言いながら、スコップで自分だけの温泉を掘ります。汗だか、川の水しぶきだか、温泉だか、わからないほどびちゃびちゃになったあと、自分で掘った湯船に入浴……。おお~、極楽だ~。

 夜も更け、宿に戻って夕食の時間です。わっ、すごい量だし、山小屋とは思えないほどのお料理。豚バラ肉のお鍋・西京味噌と胡麻仕立て、讃岐うどん、ベルギーのレモンシャーベット、ふきみそ・山イモ梅酢・塩丸イカ・山ゴボウ味噌漬け、行者ニンニクの醤油漬けなどと豊富。手作りの唐辛子味噌が鍋に添えられてあって、おつまみのように少しずつ目にも楽しい料理の数々。ここが信州の山奥ということを忘れてしまいそう。
 山根さんお勧めの地酒・大信州を升で呑む。
「もうなにもいらないね」
向かいの席のお客さんがつぶやいています。部屋は清潔な山小屋仕様の蚕(かいこ)棚。個室も六つほどあるのでプライバシーも確保できる。3畳+3000円/6畳+6000円。収容人数は60名と多く、宿の外にテントも張れる。テントのお客も朝夕共、食事のリクエスト可能だ。

 歩いてしかいけない、信州の秘湯に、こんなすばらしい宿があるなんて……。スタッフがボッカしてきたという長野の地酒もたくさん。信州ワインもおいしいし、温泉後の地ビールも最高!
 てなわけで、秋の温泉トレイル行、これじゃ、まったく、やせるわけはありません。ていうか、主旨もすっかり忘れてるし……。でも、ま、いっか。温泉も料理もすばらしく、紅葉もとてもきれいだったし! 
(『男の隠れ家別冊 秋の山と温泉2017』絶賛発売中! *取材した、ほかにもたくさんの素敵な秋山と温泉の記事が載っています)

湯俣温泉/晴嵐荘

住所:〒398-0002 長野県大町市平 大町九日町2450
アクセス:
信濃大町駅より車30分ほどで七倉ダム
自家用車の方は七倉ゲート付近に駐車(無料)
山荘近くのポストに登山届けを提出(義務)
専用タクシーにて高瀬ダムへ(2000円ほど)
ダムから湯俣温泉・晴嵐荘までは徒歩で2時間半

 
 
ライター
Hochi Naomi

年間150日は野外で過ごす元祖・肉食系自然派ライター。シーカヤック歴は23年、世界一周ヨットに3年連続便乗取材中。狩猟免許と看護師免許を持ち、最近はトレイルランニングにもはまっている。著書に「タムタムアフリカ」(山と溪谷社)ほか。

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