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アウトドアスポーツを愛する人、必読の一冊『極限力 Beyond Self』。限界とはいったい何なのか!?
2018.11.27 Tue
河津慶祐 アウトドアライター、編集者
11月21日、原宿のイベントスペースで、ドキュメントレポート『極限力 Beyond Self』に登場するアスリートのトークイベントが開催された。
イベントを告知した過去記事はこちら
今回のイベントのゲストの丹羽 薫さん(左)と井原知一さん(右)。
『極限力 Beyond Self』には16名の、誰もが一度は目にしたことがあるであろうトップアウトドアランナーが名を連ね、自ら体験した限界を突破する力を “極限力” として紹介している。本書内では、トレイルランニングやスカイランニングなど、アウトドアフィールドを舞台とするランニングスポーツを総じて「アウトドアランニング」と呼ぶ。
本書でまず最初に登場するのは、日本人で初めて海外の100マイルレースで優勝し、テレビ番組「情熱大陸」でも紹介された「山本健一」だ。他に、“日本山岳耐久レース(ハセツネCUP)” でコースレコードをもつ「上田瑠偉」、日本海から北アルプス・中央アルプス・南アルプスとつなぎ太平洋まで距離約415km、累積標高差約27,000mを走る “トランスジャパンアルプスレース(TJAR)” を4連覇し、さらに4日23時間52分という記録をもつ「望月将悟」が登場し、日本初のプロトレイルランナーにして日本トレイルランニングのパイオニア「石川弘樹」が最後を飾る。他に横山峰弘、松本 大……などトップ選手が勢揃いする。
今回のゲストは丹羽 薫さんと井原知一さんだ。このイベントでは『極限力 Beyond Self』で紹介しているランナーが登壇し、思い出に残っているレースを振り返りながら、自らの “極限力” を語る。トークでは必ず本書内で語られていないことを話すと決まっているらしく、井原さんは世界一過酷と言われる「バークレイ マラソンズ(Barkley Marathons)」での想像を絶するレース内容を、丹羽さんは「ハードロック100(Hardrock Hundred Mile Endurance Run)」での体験や、レース前に作っているというタイムチャートについて語ってくれた。
自作のタイムチャートの説明をする丹羽さん。次のエイドまでの距離や予測通過タイム以外に、エイドで補充するものや食べるものまで事細かに書かれている
《限界とは自分が作り出す空想の壁》
これは今回のイベントのゲスト、井原さんの言葉である。
限界に挑む彼らの言葉から圧倒的に前向きなパワーを感じられることが本書のすばらしいところだ。それぞれ極限の向き合い方は違えど、常人では挑戦することすらためらう領域に果敢に踏み込んだ彼らの体験の一端を感じることで、自分も何か新しいことに挑戦したくなるほどワクワクさせてくれる。
アウトドアランニングだけではなく、登山やクライミング、さらに他のスポーツにも共通する、限界の壁を突破し極限の世界へ導く何か、が秘められている『極限力 Beyond Self』。ぜひ読んで、この世界に触れてみてほしい。
『極限力 Beyond Self』は各ランナーの顔写真の横にサインを書き込めるスペースを設けている。今回のイベントでは、井原さんと丹羽さん、さらにお忍びで来場していた上田瑠偉さんのサインをもらうことができた。主催者は全16名分のサインを集めて欲しいと語る。実は今回のイベントは “vol.1” なのだ。主催者にたずねると、2回目、3回目とまだまだ続くそう。2回目のイベントにはどのランナーが出演するのだろうか。
■『極限力 Beyond Self』
本体1,700円+税
エイ出版社刊 320ページ
文=山本晃市 写真=藤巻 翔